ナマエに告白された次の日、なんて顔をしたら良いのか分からないまま、迎えてしまった朝。

「ビリーさん。昨日のことは、その、気にしないでくださいね。ビリーさんと気まずくなるのは嫌ですから…」
「…アンタ、それで良いのかよ」

気持ちに答えられなかった俺が言うのもおかしな話だったが、自分で自分の気持ちを蔑ろにするような言い方をするナマエになんとも言い難い感情を抱いた。
そのまま気まずい雰囲気で別れてしまって、後で反省した。ナマエなりに、気遣ってくれていたと言うのに。
明日の朝、また会ったら謝ろうかと思っていたのに、道場の前をナマエが通る事はなかった。

それからも道場の前を変わらず掃除していたがナマエが通る事はなく、もしかしたらと買い出しの時に少し探して見たりもしたが、一向に会える気配はなかった。

俺が道場前の掃除を始まる前に戻った、ただナマエと顔を合わせる事のない前の日常に。
それだけなのに、胸にぽっかりと穴が空いているような気がした。何か物足りないのだ。

ふとよぎる、俺じゃない誰かが道場前の掃除をしていたら。今までだってそうだっただろうけど、俺に変わる事のなく、他の奴らが続けていたら。
ナマエと言葉を交わすのが俺ではなく、他の奴らで。仲を深めていきナマエの隣に立っているのが、他の奴らだったとしたら。

（あぁ、それは……）

嫌だ。ガキみてぇな嫉妬かもしれないが、そう思った。ずっと抱えていたモヤモヤとした気持ちが晴れていくようだった。俺はきっとなまえのことが。

そう思ったら、今すぐ会いたくてたまらなくなった。
会って、今度は俺が伝える番だ。