誓いの日(オムニバス)
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見飽きた空。廻る時。俺はまだここに居る。
誰も迎えに来なくて、でもそれも当然か。
俺は何も遺してこなかったのだから。
「レイシ、何してる?」
「……あ、」
ルーク、という名前が出かかって、口を噤んだ。
「ほら、行くぞ」
「え、でも、」
「大丈夫だ」
彼が優しく笑った。その笑顔に俺の胸が高鳴るのを抑えることはできない。
出された手を握る。瞬間的に高まったこの熱は伝わってしまうだろうか。
「皆、俺とお前のことを祝福している」
そうだ。今日は、俺と彼の結婚式なのだ。
男同士だけれどそれを阻む者もおらず――実際は居たかもしれないが全て彼が排除したらしい――全ての人に祝ってもらえる日。
それは素晴らしいことだった。
そう、それだけなら。
「でも、アッシュ……や、ルーク」
「ん?」
「俺、本当は……」
言おうか言うまいか悩んでいる間に白い壁の教会に着いてしまう。この扉を開ければもう親族や友人は待っている筈だった。
「いいか? レイシ。心の準備は」
「……うん」
大丈夫。もう何度も繰り返してきたことだから。
俺はそう答える。
「行くぞ」
彼は頷く。スタッフが教会の木の大きな扉を開ける。
中で先に座っていた友人らが一斉に立ち上がってこちらを向いた。
俺は彼の腕をぎゅっと掴む。
(大丈夫)
俺たちに向けられる温かな拍手。一歩ずつ進む先には永遠の愛を誓う場所。
大丈夫。上手くやれる。何度繰り返しても、何故か緊張はしてしまうけれど。
「汝らは永遠の愛を誓いますか」
「誓います」
ほっ。上手く彼の言葉に被せることができた。
あとは誓いのキスをするだけだ。するだけ、なのだけれど。
「レイシ」
彼が俺の名を呼ぶ。俺の心臓が縮む。
ぎゅっと瞬きすると、もう、そこは。
(……やっぱり無機質な場所だな)
暗い、陽の光の入らない場所で俺は目を覚ます。
ここは一生開くことのない棺の牢獄。何故まだこうして息をしていることができるのか――本当はしていないのかもしれないが――分からない。
(どうして俺は、死ねない?)
今でも思い出せる。
俺が何故こんな所に居なければいけないか。
アッシュが最後に俺に掛けた言葉。
手を伸ばしたルークの表情。
(もうアッシュに出会えないこの世に未練なんてないのに)
そう思って再び目を閉じれば、またすぐにあの夢が俺の目の前で踊りだす。
あれは現実には有り得ない一場面を切り取ったものだから、俺とアッシュが同じ空間で息をしていた。
けれど、何をどう頑張ったって、あの先は見られない。幸せなのは一瞬だけで、生活を共にする夢すら見させてもらえない。
(アッシュ、俺、死ねたら会えるのかな?)
次、会えるのなら、今度は確かにあの夢の通りになればいい。ああでも、もう世界は終わってしまったんだっけ?
また目を閉じた。始まりを告げる幸せな鐘の音が聞こえてくる。
誰も迎えに来なくて、でもそれも当然か。
俺は何も遺してこなかったのだから。
「レイシ、何してる?」
「……あ、」
ルーク、という名前が出かかって、口を噤んだ。
「ほら、行くぞ」
「え、でも、」
「大丈夫だ」
彼が優しく笑った。その笑顔に俺の胸が高鳴るのを抑えることはできない。
出された手を握る。瞬間的に高まったこの熱は伝わってしまうだろうか。
「皆、俺とお前のことを祝福している」
そうだ。今日は、俺と彼の結婚式なのだ。
男同士だけれどそれを阻む者もおらず――実際は居たかもしれないが全て彼が排除したらしい――全ての人に祝ってもらえる日。
それは素晴らしいことだった。
そう、それだけなら。
「でも、アッシュ……や、ルーク」
「ん?」
「俺、本当は……」
言おうか言うまいか悩んでいる間に白い壁の教会に着いてしまう。この扉を開ければもう親族や友人は待っている筈だった。
「いいか? レイシ。心の準備は」
「……うん」
大丈夫。もう何度も繰り返してきたことだから。
俺はそう答える。
「行くぞ」
彼は頷く。スタッフが教会の木の大きな扉を開ける。
中で先に座っていた友人らが一斉に立ち上がってこちらを向いた。
俺は彼の腕をぎゅっと掴む。
(大丈夫)
俺たちに向けられる温かな拍手。一歩ずつ進む先には永遠の愛を誓う場所。
大丈夫。上手くやれる。何度繰り返しても、何故か緊張はしてしまうけれど。
「汝らは永遠の愛を誓いますか」
「誓います」
ほっ。上手く彼の言葉に被せることができた。
あとは誓いのキスをするだけだ。するだけ、なのだけれど。
「レイシ」
彼が俺の名を呼ぶ。俺の心臓が縮む。
ぎゅっと瞬きすると、もう、そこは。
(……やっぱり無機質な場所だな)
暗い、陽の光の入らない場所で俺は目を覚ます。
ここは一生開くことのない棺の牢獄。何故まだこうして息をしていることができるのか――本当はしていないのかもしれないが――分からない。
(どうして俺は、死ねない?)
今でも思い出せる。
俺が何故こんな所に居なければいけないか。
アッシュが最後に俺に掛けた言葉。
手を伸ばしたルークの表情。
(もうアッシュに出会えないこの世に未練なんてないのに)
そう思って再び目を閉じれば、またすぐにあの夢が俺の目の前で踊りだす。
あれは現実には有り得ない一場面を切り取ったものだから、俺とアッシュが同じ空間で息をしていた。
けれど、何をどう頑張ったって、あの先は見られない。幸せなのは一瞬だけで、生活を共にする夢すら見させてもらえない。
(アッシュ、俺、死ねたら会えるのかな?)
次、会えるのなら、今度は確かにあの夢の通りになればいい。ああでも、もう世界は終わってしまったんだっけ?
また目を閉じた。始まりを告げる幸せな鐘の音が聞こえてくる。