誓いの日(オムニバス)
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仲間たちがすっかり出払ってしまい、大分静かになった船の上、ある一室で。
街で調達してきたレースのハンカチを手に、俺たちは言い争っていた。
「だから、女役はレイシがやれよ!」
「ええ、何でだよ!」
「俺はそういうの似合わないし」
「いや俺だって男だから!」
「でもレイシいつも俺の下にモガッ」
「何てこと言うんだよ馬鹿!」
ヴェール代わりのそれを手に入れたはいいものの、どちらがそのヴェールを被る役になるか、ということで揉めているのだ。
エースが下品なことを言いそうになったので俺は手でエースの口を塞いでやった。
「おいレイシ、早く決めねェと皆戻ってきちまうって」
「じゃあエースが折れればいいだろ!」
この広い海、狭い船の上で、俺たちは互いが愛すべき人だと気づいてしまった。気づいてからは皆にバレないようにしながらこうして一緒に居るのだが、なら結婚しよう、と昨日エースが言い出した。
何を言っているのだろうとも思ったが、俺も深く深く考えてみて、この人以外に結婚したいと思える人は居ないと思った。
だから良いよといった、なのだが。
「でも、俺がレイシを守りたいんだよ!」
「!」
エースの大きな声。俺は驚いて口をつぐむ。
彼自身もその声量に驚いていたようだが、俺は少し間を置いた後、ゆっくりと言った。
「……俺だって、エースのこと、大切に思ってるよ。守りたいと思ってる。それはどっちも一緒だろ?」
「……まあ」
「なら別に、こんなハンカチ、どうだっていいか」
俺たちがこれからやろうとしていることの本質はそんなところにはない。
漸くそう納得して、俺はハンカチを頭の上に載せた。
レースだからすぐに滑って落ちそうだ。
「レイシ、」
「エース」
親父の所に行けば、皆に言えば、何だかんだ言って祝福してくれそうな気もしていた。でも俺達にそんなものは要らなかった。
俺達は黙って見つめ合う。こんな急な話で、こんな安っぽいハンカチしかなくて、それでもどうだってよかった。
「……俺、結婚式のやり方知らないや」
「確かに」
すると突然エースが大真面目にそんなことを言ったので、俺は思わず笑ってしまった。
「まあ、いいんじゃない? お互いに、永遠の愛を誓えばいいんじゃないかな」
この愛は他の誰にも捧げられることはなく、永久に互いのものだと。
互いがどんな時だって、死んでからだって、この想いはずっと結びつけていたい。
「じゃあこれ、指輪」
「じゃあ、俺からも」
俺達は、互いにしか見えない指輪を交換する。うん、そうだ。これでいい。
俺達を縛るものはこれくらいでいい。だってこの気持ちはずっと変わらないから。
「おめでとう、」
俺は俺達自身に向かって呟く。
これで、俺達はもうずっと一緒だ。
街で調達してきたレースのハンカチを手に、俺たちは言い争っていた。
「だから、女役はレイシがやれよ!」
「ええ、何でだよ!」
「俺はそういうの似合わないし」
「いや俺だって男だから!」
「でもレイシいつも俺の下にモガッ」
「何てこと言うんだよ馬鹿!」
ヴェール代わりのそれを手に入れたはいいものの、どちらがそのヴェールを被る役になるか、ということで揉めているのだ。
エースが下品なことを言いそうになったので俺は手でエースの口を塞いでやった。
「おいレイシ、早く決めねェと皆戻ってきちまうって」
「じゃあエースが折れればいいだろ!」
この広い海、狭い船の上で、俺たちは互いが愛すべき人だと気づいてしまった。気づいてからは皆にバレないようにしながらこうして一緒に居るのだが、なら結婚しよう、と昨日エースが言い出した。
何を言っているのだろうとも思ったが、俺も深く深く考えてみて、この人以外に結婚したいと思える人は居ないと思った。
だから良いよといった、なのだが。
「でも、俺がレイシを守りたいんだよ!」
「!」
エースの大きな声。俺は驚いて口をつぐむ。
彼自身もその声量に驚いていたようだが、俺は少し間を置いた後、ゆっくりと言った。
「……俺だって、エースのこと、大切に思ってるよ。守りたいと思ってる。それはどっちも一緒だろ?」
「……まあ」
「なら別に、こんなハンカチ、どうだっていいか」
俺たちがこれからやろうとしていることの本質はそんなところにはない。
漸くそう納得して、俺はハンカチを頭の上に載せた。
レースだからすぐに滑って落ちそうだ。
「レイシ、」
「エース」
親父の所に行けば、皆に言えば、何だかんだ言って祝福してくれそうな気もしていた。でも俺達にそんなものは要らなかった。
俺達は黙って見つめ合う。こんな急な話で、こんな安っぽいハンカチしかなくて、それでもどうだってよかった。
「……俺、結婚式のやり方知らないや」
「確かに」
すると突然エースが大真面目にそんなことを言ったので、俺は思わず笑ってしまった。
「まあ、いいんじゃない? お互いに、永遠の愛を誓えばいいんじゃないかな」
この愛は他の誰にも捧げられることはなく、永久に互いのものだと。
互いがどんな時だって、死んでからだって、この想いはずっと結びつけていたい。
「じゃあこれ、指輪」
「じゃあ、俺からも」
俺達は、互いにしか見えない指輪を交換する。うん、そうだ。これでいい。
俺達を縛るものはこれくらいでいい。だってこの気持ちはずっと変わらないから。
「おめでとう、」
俺は俺達自身に向かって呟く。
これで、俺達はもうずっと一緒だ。