終末の日(オムニバス)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
いつものように、例えば、鳥籠から外を眺める小鳥のように。
決して許されない空を見ながら、ルークは溜息をついた。
「なあ、レイシ」
「何ですか、ルーク様」
「世界が終わるって聞いた」
そして同じくいつものように、仕えるべき彼の側に居た俺は、問いにぱっと顔を上げた。
「それをどこから?」
「皆噂してる」
「……黙っておけと言ったのに」
憎々しげに呟くと、怒ったような顔で彼は振り返る。
「また? また俺に、何も教えないつもりだったのか?」
「ええ、勿論です」
俺はしれっと答えると、彼は歩いてきて俺の胸ぐらを掴んだ。
「つまり、世界が終わるってのは本当のことなんだな?」
「ええそうです」
「それはいつだ? 具体的には?」
「あすです」
「はあ?」
正直に答えたが、どうやら信用されていないようだった。
それは勿論そうだろう。俺だってつい最近その話を聞いたばかりだったが、最初は信じていなかった。
けれどそれに対して政府は沈黙していたから、ああそういうことなのか、と理解した訳だ。
もう誰もこの未曾有の危機について対策などしておらず、混乱を混乱のままとしておく、と決めたのだろうから。
「おい、それは本当か?」
「本当です。ルーク様に事実を申し上げないことはありますが、間違った情報をお伝えしたことはございません。誓って」
でも、それももう終わりだ。
「なのに何でここの奴らは、いつもどおりなんだ? 普通はもっと狼狽えて、家に帰って家族に会ったりするもんじゃないのか?」
「いえ、そのようなことは禁じております。我々の務めは、ルーク様に快適にお過ごしいただくこと。そしてこの屋敷から出ないよう見張ることです」
「……ってことは、この期におよんでもまだ、俺を外に出す気はねえってことか?」
「ご名答です。さすがルーク様」
「馬鹿にすんじゃねえ!」
未だ胸ぐらを掴まれているのだが、その手にはより力が入った。
そろそろ苦しい。
「俺は、外の景色を見ないで死ぬわけにはいかないんだよ!」
「はあ? 馬鹿も休み休み言ってください。私だって好きであなたのことを見張っているわけではありません」
「何だと?」
動揺したのか少し手が緩んだので、俺は無理やり振り払った。
「……私が最期に会いたいのは……」
そこまで呟いて、言葉を飲み込む。
この事実は、墓場まで持っていくつもりだ。
「とにかく、死ぬその瞬間まで、あなたの側になんて居たくないんです。その顔はもう見たくありません」
「はあ?」
「ではルーク様、ご機嫌よう」
「お、おい、ちょっと待て!」
俺は軽やかに階段を駆け上がり、屋敷の屋根へ上がる。
何故か珍しく彼も着いてきた。こんなに酷い言葉を吐いているのに。
「レイシ、何する気だ!?」
「もうこの運命から、好い加減逃れたくなりました。もうすぐ強制的に終わってしまうけれど――それが預言だけれど――たまには、私自身で何かを選び取りたい」
「待て、レイシ!」
「さよなら、ルーク。最期にあなたに会いたかった」
俺は重心を傾ける。届かないと知りながら、彼に手を伸ばす。
彼も慌てて手を伸ばしてきたけれど、もう俺の手が、ルークに届くことなどないのだった。
決して許されない空を見ながら、ルークは溜息をついた。
「なあ、レイシ」
「何ですか、ルーク様」
「世界が終わるって聞いた」
そして同じくいつものように、仕えるべき彼の側に居た俺は、問いにぱっと顔を上げた。
「それをどこから?」
「皆噂してる」
「……黙っておけと言ったのに」
憎々しげに呟くと、怒ったような顔で彼は振り返る。
「また? また俺に、何も教えないつもりだったのか?」
「ええ、勿論です」
俺はしれっと答えると、彼は歩いてきて俺の胸ぐらを掴んだ。
「つまり、世界が終わるってのは本当のことなんだな?」
「ええそうです」
「それはいつだ? 具体的には?」
「あすです」
「はあ?」
正直に答えたが、どうやら信用されていないようだった。
それは勿論そうだろう。俺だってつい最近その話を聞いたばかりだったが、最初は信じていなかった。
けれどそれに対して政府は沈黙していたから、ああそういうことなのか、と理解した訳だ。
もう誰もこの未曾有の危機について対策などしておらず、混乱を混乱のままとしておく、と決めたのだろうから。
「おい、それは本当か?」
「本当です。ルーク様に事実を申し上げないことはありますが、間違った情報をお伝えしたことはございません。誓って」
でも、それももう終わりだ。
「なのに何でここの奴らは、いつもどおりなんだ? 普通はもっと狼狽えて、家に帰って家族に会ったりするもんじゃないのか?」
「いえ、そのようなことは禁じております。我々の務めは、ルーク様に快適にお過ごしいただくこと。そしてこの屋敷から出ないよう見張ることです」
「……ってことは、この期におよんでもまだ、俺を外に出す気はねえってことか?」
「ご名答です。さすがルーク様」
「馬鹿にすんじゃねえ!」
未だ胸ぐらを掴まれているのだが、その手にはより力が入った。
そろそろ苦しい。
「俺は、外の景色を見ないで死ぬわけにはいかないんだよ!」
「はあ? 馬鹿も休み休み言ってください。私だって好きであなたのことを見張っているわけではありません」
「何だと?」
動揺したのか少し手が緩んだので、俺は無理やり振り払った。
「……私が最期に会いたいのは……」
そこまで呟いて、言葉を飲み込む。
この事実は、墓場まで持っていくつもりだ。
「とにかく、死ぬその瞬間まで、あなたの側になんて居たくないんです。その顔はもう見たくありません」
「はあ?」
「ではルーク様、ご機嫌よう」
「お、おい、ちょっと待て!」
俺は軽やかに階段を駆け上がり、屋敷の屋根へ上がる。
何故か珍しく彼も着いてきた。こんなに酷い言葉を吐いているのに。
「レイシ、何する気だ!?」
「もうこの運命から、好い加減逃れたくなりました。もうすぐ強制的に終わってしまうけれど――それが預言だけれど――たまには、私自身で何かを選び取りたい」
「待て、レイシ!」
「さよなら、ルーク。最期にあなたに会いたかった」
俺は重心を傾ける。届かないと知りながら、彼に手を伸ばす。
彼も慌てて手を伸ばしてきたけれど、もう俺の手が、ルークに届くことなどないのだった。