終末の日(オムニバス)
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「ねえ、雨だね」
「そうだな」
「セッツァー、雨嫌いなんじゃなかったっけ?」
「ああ」
ブラックジャック号の甲板に2人で背中合わせに座り込み、身体に雨を受ける。
雨がしとしとと降り続けるその光景は、まるで、世界の終わりなど知らないかのように。
「思い出す奴が居るんだ」
それは紛れもなく、彼の友人であるダリルのことだろう。でも、彼女は既にこの世にはいない。
セッツァーと速さを競い合い、更なる高みを追い求めているさなかに亡くなったそうだ。
セッツァーのその時の悲しみは如何ほどだったろうか。
「でもね、もう俺たちも、何も思い出せなくなるね」
俄には信じがたいことだが、もう俺たちの人生には、終止符が打たれるらしい。
まだ生きているのに? 不思議なことだ。
余命宣告を受ける人は、こんな気持ちなのだろうか? 多分俺にはもう一生分からないだろう。
「そうだな」
「じゃあ、その前にさ」
俺は立ち上がる。バランスを崩したセッツァーが俺を見上げてくる。
「俺のこと、好きって言って」
突飛な言葉に、彼は動揺した様子もない。
「どうした? いきなり」
「一度も言ってくれてない。俺は、セッツァーからそんな優しい言葉を貰ったことはない。あなたが彼女に言ったような言葉を、1つも」
「だから、俺とダリルはそんな関係じゃ……」
「じゃあ、そう思わせるあなたが悪い」
俺は言い切る。世界にはもうたった2人。
自然と涙が零れてくるのを感じるが、もう止められない。止める理由もない。
「俺は、ずっとセッツァーのこと、好き。いまここで打ち砕かれて、あなたの返答を聞けずに、数多の塵の一部になっても」
「レイシ、」
「でももし叶うなら、セッツァーの答えが、ききたいな」
陸地を覆うほどの洪水は、もうすぐそこに迫っている。
このブラックジャック号で飛び続ければ、あるいは延命できるのかもしれないけれど、でも俺達は、それを選ばない。
「……俺は、レイシのこと」
遠くから聞こえる、とてつもない勢いの波の音が、全ての声を滅ぼした。
「そうだな」
「セッツァー、雨嫌いなんじゃなかったっけ?」
「ああ」
ブラックジャック号の甲板に2人で背中合わせに座り込み、身体に雨を受ける。
雨がしとしとと降り続けるその光景は、まるで、世界の終わりなど知らないかのように。
「思い出す奴が居るんだ」
それは紛れもなく、彼の友人であるダリルのことだろう。でも、彼女は既にこの世にはいない。
セッツァーと速さを競い合い、更なる高みを追い求めているさなかに亡くなったそうだ。
セッツァーのその時の悲しみは如何ほどだったろうか。
「でもね、もう俺たちも、何も思い出せなくなるね」
俄には信じがたいことだが、もう俺たちの人生には、終止符が打たれるらしい。
まだ生きているのに? 不思議なことだ。
余命宣告を受ける人は、こんな気持ちなのだろうか? 多分俺にはもう一生分からないだろう。
「そうだな」
「じゃあ、その前にさ」
俺は立ち上がる。バランスを崩したセッツァーが俺を見上げてくる。
「俺のこと、好きって言って」
突飛な言葉に、彼は動揺した様子もない。
「どうした? いきなり」
「一度も言ってくれてない。俺は、セッツァーからそんな優しい言葉を貰ったことはない。あなたが彼女に言ったような言葉を、1つも」
「だから、俺とダリルはそんな関係じゃ……」
「じゃあ、そう思わせるあなたが悪い」
俺は言い切る。世界にはもうたった2人。
自然と涙が零れてくるのを感じるが、もう止められない。止める理由もない。
「俺は、ずっとセッツァーのこと、好き。いまここで打ち砕かれて、あなたの返答を聞けずに、数多の塵の一部になっても」
「レイシ、」
「でももし叶うなら、セッツァーの答えが、ききたいな」
陸地を覆うほどの洪水は、もうすぐそこに迫っている。
このブラックジャック号で飛び続ければ、あるいは延命できるのかもしれないけれど、でも俺達は、それを選ばない。
「……俺は、レイシのこと」
遠くから聞こえる、とてつもない勢いの波の音が、全ての声を滅ぼした。