終末の日(オムニバス)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
僕たちは遠くを見ていた。
大地が剥がれ、隙間から水が侵入してくるのを、ただ黙って、遠くから見ていた。
「ねえ、今更言うのもなんだけどさ」
「何だ」
「昨日の訓練の時のロンクー、かっこよかったよ」
指先だけが互いに触れている。僕の言葉にぴく、とその指が動いた。
「……何だ、いきなり」
「ロンクー、照れてる? どうしても言いたいなって思ったんだよね」
僕はロンクーの顔を覗き込む。
すると彼はその分だけ顔を背けた。
「あー……もっと見たかったなあ」
そうぽろっと零してから、あっ、と思った。
「レイシ」
世界が終わると知ったあの日、僕たちは約束したのだ。決してネガティブな話はしないと。きっと何とかなるからと。
けれど明日で終わってしまう、それが確定してしまった今日。ついそんな言葉を発してしまう。
と同時に、頬を涙が流れるのが分かった。
「ロンクー……」
「レイシ……泣いてるのか?」
「……何で、だろう?」
何でなのかは勿論分かっている。強がりだ。
ぐいと右手で涙を拭うと、左手を引かれ、僕はロンクーの胸の中に収まった。
「ロンクー?」
「……夢なら良かった」
「え?」
僕は至近距離にあるロンクーを見上げる。
しかしロンクーは地平線をずっと見ていた。
「こんなに別れが辛いと思うのなら……結婚しない方が良かったのかもな」
そう、実は僕たちはつい1ヶ月前に結婚したばかりだった。男同士という世間の目を憚るような組み合わせだから、ごくごく親しい人だけ招き、食事会を催した。もちろんきちんと指輪も貰ったし誓いのキスもした。
けれどその翌々日に世界が間もなく終わることを知ったのだ。その時の気持ちはもう思い出したくもない。
「ロンクー……」
「いや……そんなことを言うのは失礼だな」
僕たちがいつから惹かれ合っていたのかはもう分からない。忘れる程に長く共に居て、将来も当然一緒に成長していくことを確信していて、だからある時、僕たちは結婚するのが正しいと気づいてしまった。
日々は今までの日常の延長線上だ。それでも確かに何か違う喜びもあった。
「僕は、良かったと思うな」
勿論、世界が終わらない方がより良かったと思うけど。
「何があっても、僕の魂に刻まれたこの愛は消えない。ロンクーと結婚できて良かったっていう気持ちは変わらない」
「レイシ」
「ねえ、もし次また、同じ場所に生まれられたら。今度も結婚して、今度こそ、幸せな結末を迎えたいな」
いいでしょう? と問うと。
返事代わりのキスが降ってくる。
「夢だったら、良かったのにな」
同じように放たれた言葉は多分この現実に対してだろう。それでもこうして破滅に向かっていく世界は思ったより美しい。
大地は海から隆起した。だから再び水に飲まれて海へ還っていく。それは当然だと思えた。
僕たちがこうして共に居るように、そしてまた来世に共に歩むであろうように、当然のことだった。
大地が剥がれ、隙間から水が侵入してくるのを、ただ黙って、遠くから見ていた。
「ねえ、今更言うのもなんだけどさ」
「何だ」
「昨日の訓練の時のロンクー、かっこよかったよ」
指先だけが互いに触れている。僕の言葉にぴく、とその指が動いた。
「……何だ、いきなり」
「ロンクー、照れてる? どうしても言いたいなって思ったんだよね」
僕はロンクーの顔を覗き込む。
すると彼はその分だけ顔を背けた。
「あー……もっと見たかったなあ」
そうぽろっと零してから、あっ、と思った。
「レイシ」
世界が終わると知ったあの日、僕たちは約束したのだ。決してネガティブな話はしないと。きっと何とかなるからと。
けれど明日で終わってしまう、それが確定してしまった今日。ついそんな言葉を発してしまう。
と同時に、頬を涙が流れるのが分かった。
「ロンクー……」
「レイシ……泣いてるのか?」
「……何で、だろう?」
何でなのかは勿論分かっている。強がりだ。
ぐいと右手で涙を拭うと、左手を引かれ、僕はロンクーの胸の中に収まった。
「ロンクー?」
「……夢なら良かった」
「え?」
僕は至近距離にあるロンクーを見上げる。
しかしロンクーは地平線をずっと見ていた。
「こんなに別れが辛いと思うのなら……結婚しない方が良かったのかもな」
そう、実は僕たちはつい1ヶ月前に結婚したばかりだった。男同士という世間の目を憚るような組み合わせだから、ごくごく親しい人だけ招き、食事会を催した。もちろんきちんと指輪も貰ったし誓いのキスもした。
けれどその翌々日に世界が間もなく終わることを知ったのだ。その時の気持ちはもう思い出したくもない。
「ロンクー……」
「いや……そんなことを言うのは失礼だな」
僕たちがいつから惹かれ合っていたのかはもう分からない。忘れる程に長く共に居て、将来も当然一緒に成長していくことを確信していて、だからある時、僕たちは結婚するのが正しいと気づいてしまった。
日々は今までの日常の延長線上だ。それでも確かに何か違う喜びもあった。
「僕は、良かったと思うな」
勿論、世界が終わらない方がより良かったと思うけど。
「何があっても、僕の魂に刻まれたこの愛は消えない。ロンクーと結婚できて良かったっていう気持ちは変わらない」
「レイシ」
「ねえ、もし次また、同じ場所に生まれられたら。今度も結婚して、今度こそ、幸せな結末を迎えたいな」
いいでしょう? と問うと。
返事代わりのキスが降ってくる。
「夢だったら、良かったのにな」
同じように放たれた言葉は多分この現実に対してだろう。それでもこうして破滅に向かっていく世界は思ったより美しい。
大地は海から隆起した。だから再び水に飲まれて海へ還っていく。それは当然だと思えた。
僕たちがこうして共に居るように、そしてまた来世に共に歩むであろうように、当然のことだった。
12/12ページ