二人暮らし(dr/臨也)
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「もしもーし、臨也ー?」
『もしもし』
「あのさー、今どこー?」
仕事を終えた平日の夜。
最寄り駅は迎えを待つ人々でごった返している。俺もその中の1人だ。
『家だけど』
「家? 新宿の?」
『そうだけど。何?』
電話を掛けた相手は恋人。奴はなかなか多忙なのだが、雨の降っている今日に限って、どうやら俺より帰りが早かったらしい。なんて珍しい。
思わずガッツポーズをしながら、周りが五月蝿いせいで声を張り上げて言葉を返す。
「あのさー、迎えに来てほしいんだけどー」
『迎え? 何で?』
「傘ないんだよね。雨結構強いんだけどさ」
『……あー』
どうやら外を見たらしい、というか今までこの雨に気づかなかったのか。かなり降ってるんですけど。
『分かったよ。迎え行く』
「ほんとに? やったー!」
『10分くらいで行く』
「お願いします!」
ちょっと呆れたような声が聞こえてきたが、そう言わせれば俺の勝ち。
喜び勇んで電話を切り、待つこと10分。
ただでさえも空が暗いのに、黒い服と黒い傘でやってきたので、俺は一瞬気づくのに遅れた。
「おかえり、澪士」
「ただいま。臨也、早いじゃん今日」
「仕事が予定より早く終わった」
「そうなんだ。雨当たらなかった?」
「セーフだった。てか、澪士から電話来るまで、こんな酷いと思わなかった」
「ですよね」
そんなことを言いながら、臨也の差す大きな傘の下に入る。
男同士で相合い傘なのだが、何とも思われないだろうか?
「大丈夫、俺たちのこと、見てる人なんていないよ」
俺の考えていることが分かったのか、臨也はそう言う。
確かにこの新宿は人が多すぎて、しかも雨で視界が悪いから、誰も俺たちのことなんか気にしていないようだった。
というかこの中で傘を2つ、至近距離で差して歩く方が迷惑にも思えた。
「……俺たちってさ、ああいう感じなのかな」
「ん?」
「いや、何でもない」
前を歩く、男女のカップル。前だけじゃなくそこかしこに居る。
彼らなら躊躇なく同じ1つの傘に入ることができる。そうすることに違和感がないから。
けど、俺たちは。
「俺たちも恋人同士なんだから、あんまり気にしなくていいんじゃない?」
そう言いながら、俺の右を歩く臨也は右手に傘を持ち替え、左手で俺の右手を握った。
ただでさえも狭い傘の中で、更に密着する。
「臨也……」
「この方が、恋人っぽくない? ね」
そう言って微笑む臨也は、俺にいつも勇気と自信をくれる。
そんなに他人を見て萎縮しなくてもいいんだ、と言ってくれている。
「……そうだね」
きっと傘に隠れて、俺たちのことは皆見えていないだろう。きっとそう。
そう思っていると、臨也が素早くキスして離れた。
「い、いざ、」
「大丈夫。見えてないよ」
そんな風に笑う臨也を、怒れる筈もない。
『もしもし』
「あのさー、今どこー?」
仕事を終えた平日の夜。
最寄り駅は迎えを待つ人々でごった返している。俺もその中の1人だ。
『家だけど』
「家? 新宿の?」
『そうだけど。何?』
電話を掛けた相手は恋人。奴はなかなか多忙なのだが、雨の降っている今日に限って、どうやら俺より帰りが早かったらしい。なんて珍しい。
思わずガッツポーズをしながら、周りが五月蝿いせいで声を張り上げて言葉を返す。
「あのさー、迎えに来てほしいんだけどー」
『迎え? 何で?』
「傘ないんだよね。雨結構強いんだけどさ」
『……あー』
どうやら外を見たらしい、というか今までこの雨に気づかなかったのか。かなり降ってるんですけど。
『分かったよ。迎え行く』
「ほんとに? やったー!」
『10分くらいで行く』
「お願いします!」
ちょっと呆れたような声が聞こえてきたが、そう言わせれば俺の勝ち。
喜び勇んで電話を切り、待つこと10分。
ただでさえも空が暗いのに、黒い服と黒い傘でやってきたので、俺は一瞬気づくのに遅れた。
「おかえり、澪士」
「ただいま。臨也、早いじゃん今日」
「仕事が予定より早く終わった」
「そうなんだ。雨当たらなかった?」
「セーフだった。てか、澪士から電話来るまで、こんな酷いと思わなかった」
「ですよね」
そんなことを言いながら、臨也の差す大きな傘の下に入る。
男同士で相合い傘なのだが、何とも思われないだろうか?
「大丈夫、俺たちのこと、見てる人なんていないよ」
俺の考えていることが分かったのか、臨也はそう言う。
確かにこの新宿は人が多すぎて、しかも雨で視界が悪いから、誰も俺たちのことなんか気にしていないようだった。
というかこの中で傘を2つ、至近距離で差して歩く方が迷惑にも思えた。
「……俺たちってさ、ああいう感じなのかな」
「ん?」
「いや、何でもない」
前を歩く、男女のカップル。前だけじゃなくそこかしこに居る。
彼らなら躊躇なく同じ1つの傘に入ることができる。そうすることに違和感がないから。
けど、俺たちは。
「俺たちも恋人同士なんだから、あんまり気にしなくていいんじゃない?」
そう言いながら、俺の右を歩く臨也は右手に傘を持ち替え、左手で俺の右手を握った。
ただでさえも狭い傘の中で、更に密着する。
「臨也……」
「この方が、恋人っぽくない? ね」
そう言って微笑む臨也は、俺にいつも勇気と自信をくれる。
そんなに他人を見て萎縮しなくてもいいんだ、と言ってくれている。
「……そうだね」
きっと傘に隠れて、俺たちのことは皆見えていないだろう。きっとそう。
そう思っていると、臨也が素早くキスして離れた。
「い、いざ、」
「大丈夫。見えてないよ」
そんな風に笑う臨也を、怒れる筈もない。