二人暮らし(dr/臨也)
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「臨也、もう、来月だね。楽しみだね」
「うん、そうだね」
季節は冬。外に出れば指がかじかみ、白い息を吹きかける。
俺は書きかけの紙をテーブルの上に置き、いつもより真剣にパソコンに向かっている臨也に言った。
「なんか、早かったね」
俺たちが結婚すると決めてから、もう1年が経つ。
日本の法律では男同士が入籍することはできなくて、それでも式だけはやろう、という話になった。呼ぶ人はいないのだけれど。
親族にだけは洗いざらい話した。俺は職場には勿論言えず、まあ入籍できるわけでもないのでまあいいか、という話になったのだ。
それでこじんまりとした式を挙げることになったのだが、それがもう来月なのだ。
「俺、澪士のウエディングドレス見たかったんだけど」
「……え?」
当然男同士の式なので、あまり華やかではない。女性同士ならまた違ったのだろうけど。
そんなことを考えていると臨也が突然馬鹿なことを言い出した。
「ねえ、澪士。ウエディングドレス注文してあげようか? 特注の」
「え? 何言ってんの?」
「式が終わったらそのままセックスしたい」
「ねえ本当に馬鹿なの?」
良からぬ妄想へと走っているようだ。放っておくと俺の身も危ないので必死に止めておく。
「絶対似合うよ、澪士。細いし肌白いし」
「そこじゃない」
「オーダーメイドなら買うことになるわけだし、いくら汚しても大丈夫だよ?」
「あのさ、息子がウエディングドレス着て結婚式挙げてたら、マジで俺の親卒倒するから」
工事済みならまだいいだろうが、俺はそういうのではない。断じて。性別は男でいいと思ってる。
「そっか……仕方ないな」
じゃあ式以外のところで注文するから、家で着てみせてよ、と。
相変わらず止まる間もない空想に溜息をつく。
「……よくそんなに色々思いつくね」
「澪士が可愛いのが悪い」
臨也の隣に座ると、パソコンに昔の写真が出ているのが見えた。
「? なにそれ?」
「スライドショー」
「え、結婚式によくあるやつ? 馴れ初めみたいな?」
「そうそう」
「……あのさあ」
俺は再びげんなりする。
「出席者、俺たちと親族だけだよ? ていうか式場じゃなくてレストランでご飯食べるだけだからね?」
「分かってるって」
「じゃあそれどこで流すつもり?」
臨也はパソコンを操作し、スライドショーを再生する画面を見せてくる。
じっと画面を見ていると、懐かしい写真がたくさんあった。
「俺たち、意外と写真撮ってるんだね」
「俺も、写真整理しててちょっとびっくりした」
「……待って? 今の写真なに?」
割と早い速度で流れ去ったのだが、今のは俺の寝顔じゃないのだろうか?
「え、ちょっと待ってちょっと待ってちょっとちょっとちょっと」
「なに?」
「うわああああおい何やってんのまじで!」
しかし寝顔の写真は一瞬で、そのあとまた微笑ましい写真が映し出されていた。
――と思ったら、写真はいつの間にか、行為中のものになっている。角度や状況に差こそあれど、ほぼ全て俺がメインで写っている。死ぬほど恥ずかしい。
「何これ!? いやていうかまず何でこんな写真持ってんの!? 合成!?」
「そんなこと俺がするわけないじゃん。盗撮だよ」
「はあ!?」
これを結婚式で流すつもりだったのか? いや臨也はそこまで馬鹿じゃない。さすがに世間一般の常識は持ち合わせている。
そこまで何とか冷静になって考え、何度か深呼吸をして、心を落ち着かせた。
「……ねえ、臨也? このスライドショーの用途は?」
「結婚式で流すわけないでしょ?」
「ああ、そう。よかった」
ぐったりと背もたれに深く沈み込む。
「結婚式の前日にでも見て、こういうことあったよね、とかって話をしたかったんだけど」
「……けど?」
「今見せちゃったし、俺、編集してる間にさあ」
パソコンを退け、ぐいと俺の上に乗ってくる臨也。ちょっと待て、パソコンが行為中の画面で終わってるんですけど。
しかしそう抗議しようとしたのも虚しく、押し付けられる昂ぶりに言葉が詰まる。
「えーと……臨也?」
「写真の澪士、可愛すぎて、ちょっと嫉妬した」
「え? 写真に嫉妬すんの?」
「もっと可愛い澪士が見たい」
貪るようにキスされる。俺は少し躊躇ったのち、それに応えた。
絡む俺の右手と臨也の左手。その薬指に嵌まった異物は、もうだいぶ慣れた。
「愛してるよ、澪士」
耳元で囁かれる愛は過剰だ。でも。
「俺も好き、臨也」
このまま一生を過ごすのも悪くないな、と思った。
「うん、そうだね」
季節は冬。外に出れば指がかじかみ、白い息を吹きかける。
俺は書きかけの紙をテーブルの上に置き、いつもより真剣にパソコンに向かっている臨也に言った。
「なんか、早かったね」
俺たちが結婚すると決めてから、もう1年が経つ。
日本の法律では男同士が入籍することはできなくて、それでも式だけはやろう、という話になった。呼ぶ人はいないのだけれど。
親族にだけは洗いざらい話した。俺は職場には勿論言えず、まあ入籍できるわけでもないのでまあいいか、という話になったのだ。
それでこじんまりとした式を挙げることになったのだが、それがもう来月なのだ。
「俺、澪士のウエディングドレス見たかったんだけど」
「……え?」
当然男同士の式なので、あまり華やかではない。女性同士ならまた違ったのだろうけど。
そんなことを考えていると臨也が突然馬鹿なことを言い出した。
「ねえ、澪士。ウエディングドレス注文してあげようか? 特注の」
「え? 何言ってんの?」
「式が終わったらそのままセックスしたい」
「ねえ本当に馬鹿なの?」
良からぬ妄想へと走っているようだ。放っておくと俺の身も危ないので必死に止めておく。
「絶対似合うよ、澪士。細いし肌白いし」
「そこじゃない」
「オーダーメイドなら買うことになるわけだし、いくら汚しても大丈夫だよ?」
「あのさ、息子がウエディングドレス着て結婚式挙げてたら、マジで俺の親卒倒するから」
工事済みならまだいいだろうが、俺はそういうのではない。断じて。性別は男でいいと思ってる。
「そっか……仕方ないな」
じゃあ式以外のところで注文するから、家で着てみせてよ、と。
相変わらず止まる間もない空想に溜息をつく。
「……よくそんなに色々思いつくね」
「澪士が可愛いのが悪い」
臨也の隣に座ると、パソコンに昔の写真が出ているのが見えた。
「? なにそれ?」
「スライドショー」
「え、結婚式によくあるやつ? 馴れ初めみたいな?」
「そうそう」
「……あのさあ」
俺は再びげんなりする。
「出席者、俺たちと親族だけだよ? ていうか式場じゃなくてレストランでご飯食べるだけだからね?」
「分かってるって」
「じゃあそれどこで流すつもり?」
臨也はパソコンを操作し、スライドショーを再生する画面を見せてくる。
じっと画面を見ていると、懐かしい写真がたくさんあった。
「俺たち、意外と写真撮ってるんだね」
「俺も、写真整理しててちょっとびっくりした」
「……待って? 今の写真なに?」
割と早い速度で流れ去ったのだが、今のは俺の寝顔じゃないのだろうか?
「え、ちょっと待ってちょっと待ってちょっとちょっとちょっと」
「なに?」
「うわああああおい何やってんのまじで!」
しかし寝顔の写真は一瞬で、そのあとまた微笑ましい写真が映し出されていた。
――と思ったら、写真はいつの間にか、行為中のものになっている。角度や状況に差こそあれど、ほぼ全て俺がメインで写っている。死ぬほど恥ずかしい。
「何これ!? いやていうかまず何でこんな写真持ってんの!? 合成!?」
「そんなこと俺がするわけないじゃん。盗撮だよ」
「はあ!?」
これを結婚式で流すつもりだったのか? いや臨也はそこまで馬鹿じゃない。さすがに世間一般の常識は持ち合わせている。
そこまで何とか冷静になって考え、何度か深呼吸をして、心を落ち着かせた。
「……ねえ、臨也? このスライドショーの用途は?」
「結婚式で流すわけないでしょ?」
「ああ、そう。よかった」
ぐったりと背もたれに深く沈み込む。
「結婚式の前日にでも見て、こういうことあったよね、とかって話をしたかったんだけど」
「……けど?」
「今見せちゃったし、俺、編集してる間にさあ」
パソコンを退け、ぐいと俺の上に乗ってくる臨也。ちょっと待て、パソコンが行為中の画面で終わってるんですけど。
しかしそう抗議しようとしたのも虚しく、押し付けられる昂ぶりに言葉が詰まる。
「えーと……臨也?」
「写真の澪士、可愛すぎて、ちょっと嫉妬した」
「え? 写真に嫉妬すんの?」
「もっと可愛い澪士が見たい」
貪るようにキスされる。俺は少し躊躇ったのち、それに応えた。
絡む俺の右手と臨也の左手。その薬指に嵌まった異物は、もうだいぶ慣れた。
「愛してるよ、澪士」
耳元で囁かれる愛は過剰だ。でも。
「俺も好き、臨也」
このまま一生を過ごすのも悪くないな、と思った。
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