二人暮らし(dr/臨也)
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「もう秋か」
俺がリビングのソファに座ってノートパソコンを弄っていると、外を眺めていた恋人澪士が呟く。
「物悲しい季節だねー」
外に林立する木々の紅葉はそれぞれだ。まだ僅かに緑のものもあるし、完全に赤や黄に染まっている葉もある。
もう夏だったことをすっかり忘れてしまうくらい、毎日袖の長い服を着なければ寒いと感じてしまうような季節になった。
「ねえ、そういえばさ、臨也」
「ん? 何」
「これ」
バサ、と音を立ててガラスのローテーブルの上に置かれたのは、何かの雑誌。
わざわざ声を掛けられたので多分俺に見せたい物でもあるのだろう、と思いながら拾い上げると、それはカタログだった。
「……何これ。お墓のカタログ?」
「そう」
「よく見つけたねこんなの」
墓ってカタログなんかあるのか。
何でこんな物を持っているのか、とか何故墓のカタログを今、とか色々言いたいことはあるが、まずはそこに少し感心した。
「ところで、何でお墓?」
そう尋ねながら顔を上げると、彼は別に普通の顔をしていた。まるで日常会話でもするような、そんな感じだった。
「だってさ。人が死ぬ時には、大抵お墓は必要だよ。今時鳥葬とか海に撒くのとか色々あるけど。このままいくんだったら俺たちは子孫なんか残せそうもないし、永代供養のお墓とか買っておいた方がいいんじゃないかと思って」
「……まあ……永代供養は確かに一考の余地はあると思うけど、それはこの墓カタログには関係ないのでは?」
「それは流石に分かってるよ! でも墓のデザインくらい考えたいじゃん?」
澪士は俺の隣に座り、横からカタログを覗き込む。
ここでこんなに価値観の違いが露呈することは珍しくはないのだろうか?
俺は正直墓なんてどうでもいいし――だって死んだら見ないのに――まああまり迷惑を掛けたいと思っているわけでもないけれど、まだ20代だからもう少し考える時間はあると思っているのだが。
「ていうかそもそも、俺と澪士は同じ墓に入るってこと?」
「うん。その予定だけど?」
「あ、そう」
「じゃあ墓のデザインは俺の好きにしていい?」
「どうぞ」
そう言って楽しそうにカタログを見始める澪士の神経が分からなかった。別に頭がおかしいとか、縁起でもないとか、そういうことを言っているわけではなく。単純に思考の振り方が違うんだな、と思った。
勿論俺と澪士は違う人間であり、考えることがそんなに似ていないのは元々分かっている。
だからこそ俺は、澪士が楽しそうに好きなようにやれることなら、出来るだけその通りにしてあげたいと思っていた。
「あ、ねえ臨也、これかっこよくない?」
「黒?」
「そう。あ、ねえでも、これもなんか石の風合いが生きてていいよねー」
「まあ俺は相当嫌じゃない限り口出さないから、決まったら教えて」
「んー」
答えて俺はノートパソコンを膝に載せ、再び没頭する。澪士はこれもいいよなーとか独り言を言いながらカタログを捲っていた。
うん、そう。これでいい。完璧に価値観の嵌まる人間なんていない。
けれどもその中で少しでも居心地がいい場所を求めて、俺たちは出会ったのだ。
俺がリビングのソファに座ってノートパソコンを弄っていると、外を眺めていた恋人澪士が呟く。
「物悲しい季節だねー」
外に林立する木々の紅葉はそれぞれだ。まだ僅かに緑のものもあるし、完全に赤や黄に染まっている葉もある。
もう夏だったことをすっかり忘れてしまうくらい、毎日袖の長い服を着なければ寒いと感じてしまうような季節になった。
「ねえ、そういえばさ、臨也」
「ん? 何」
「これ」
バサ、と音を立ててガラスのローテーブルの上に置かれたのは、何かの雑誌。
わざわざ声を掛けられたので多分俺に見せたい物でもあるのだろう、と思いながら拾い上げると、それはカタログだった。
「……何これ。お墓のカタログ?」
「そう」
「よく見つけたねこんなの」
墓ってカタログなんかあるのか。
何でこんな物を持っているのか、とか何故墓のカタログを今、とか色々言いたいことはあるが、まずはそこに少し感心した。
「ところで、何でお墓?」
そう尋ねながら顔を上げると、彼は別に普通の顔をしていた。まるで日常会話でもするような、そんな感じだった。
「だってさ。人が死ぬ時には、大抵お墓は必要だよ。今時鳥葬とか海に撒くのとか色々あるけど。このままいくんだったら俺たちは子孫なんか残せそうもないし、永代供養のお墓とか買っておいた方がいいんじゃないかと思って」
「……まあ……永代供養は確かに一考の余地はあると思うけど、それはこの墓カタログには関係ないのでは?」
「それは流石に分かってるよ! でも墓のデザインくらい考えたいじゃん?」
澪士は俺の隣に座り、横からカタログを覗き込む。
ここでこんなに価値観の違いが露呈することは珍しくはないのだろうか?
俺は正直墓なんてどうでもいいし――だって死んだら見ないのに――まああまり迷惑を掛けたいと思っているわけでもないけれど、まだ20代だからもう少し考える時間はあると思っているのだが。
「ていうかそもそも、俺と澪士は同じ墓に入るってこと?」
「うん。その予定だけど?」
「あ、そう」
「じゃあ墓のデザインは俺の好きにしていい?」
「どうぞ」
そう言って楽しそうにカタログを見始める澪士の神経が分からなかった。別に頭がおかしいとか、縁起でもないとか、そういうことを言っているわけではなく。単純に思考の振り方が違うんだな、と思った。
勿論俺と澪士は違う人間であり、考えることがそんなに似ていないのは元々分かっている。
だからこそ俺は、澪士が楽しそうに好きなようにやれることなら、出来るだけその通りにしてあげたいと思っていた。
「あ、ねえ臨也、これかっこよくない?」
「黒?」
「そう。あ、ねえでも、これもなんか石の風合いが生きてていいよねー」
「まあ俺は相当嫌じゃない限り口出さないから、決まったら教えて」
「んー」
答えて俺はノートパソコンを膝に載せ、再び没頭する。澪士はこれもいいよなーとか独り言を言いながらカタログを捲っていた。
うん、そう。これでいい。完璧に価値観の嵌まる人間なんていない。
けれどもその中で少しでも居心地がいい場所を求めて、俺たちは出会ったのだ。