黄金を求めし者(神トラ2/ラヴィオ)
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少し月日が経ち、孤独にも慣れてきた頃、ユガから送られてきたらしい絵が、ついに6枚目を数えた。
これが本当に七賢者の絵で、これによって七賢者が封印されているとしたら、あと1枚。
あと1枚揃えば、魔王を復活させることができる。
「魔王……ね」
それがどんな存在なのかは、どんな本にも載っていなかった。
ただ、勇者と王女は光で、魔王は悪。それだけ。
魔王は必要以上の力を求め、賢者に封じられ、勇者に倒された。
「……ん? 何だこれ」
絵を抱き上げると、落ちてきた紙切れ。
開くとユガの走り書き。
「何……勇者が邪魔をする、勇者がもし共にロウラルへ来た時、王子は私を捕らえてください、」
それは全て勇者の目を欺くため。勇者がロウラルの世界へやってきて、賢者たちの封印を解いた時、勇気のトライフォースは現れる。
なんだ、何だか混乱してきた。
「つまり、この絵を7枚集めると、トライフォースの一欠けらを持った魔王が現れる。けど賢者を絵から解放すると、またもう1つの欠けらが現れる……?」
そういうことだろうか? なんという二度手間だろう。
ユガの走り書きをじっくり読み返した。
「へえ……賢者が揃ってきたから、魔法が使えるかもしれないのか。ちょっと試してみよう」
ラヴィオやユガのことはちゃんと心配しているが、あまり心配し過ぎるのも毒だと思うので、適度に別のことを考えるようにしている。異形のものとなった兵士たちと、一戦交えてみたりとか。
僕は母親から貰った魔力の宿る杖を持ち、苦労しながら外に出て、魔物に試してみようと思った。
「えいっ!」
僕は封印魔法を試してみる。ユガにやるので、出来なかったら困る。
本で読んだだけなので簡単に出来るわけはないだろうと思っていたが、あっさり、地面に描いた魔方陣から茨が生えて、魔物を捕らえた。
やつはもがいている。僕は驚いて杖を見た。
「……え、本当に?」
まだ辛うじて平和だった頃は、地面に魔方陣を描いてみても、全く反応しなかったのに。
こんなにあっさり上手くいってしまって拍子抜けする。
「……ユガが帰ってくるまで、練習でもするか」
僕は逃げ始めた魔物を追いかけた。
それから暫く経った。最近の僕の日課は、石版の前でぼーっとすることだ。
2人がいなくなってから、どれくらい経つだろう。無事でいるといいが。
そんなことを考えていると、突然、絵が落ちてきた。
「!?」
慌てて受け止める。恐る恐る裏返してみると、それが最後の1枚に違いなかった。
「……これが……」
これでついに、全員分、揃ったのか。そう思った瞬間、石版が光った。
「っ!」
思わず目を閉じる。久々の閃光だ。
ゆっくり目を開けると、そこには見覚えのある人が立っていた。
「ユガ……!」
「お久しぶりですね、レイシ王子」
そこにいたのはユガだった。小脇には別の絵を抱えている。
「お待たせしました。少々手こずりましたが……これで、全ての賢者を封印しました。今に、魔法が復活する筈です。さあ、絵を持って王の間へ」
「うんっ」
今までユガが送ってきてくれていた賢者たちの絵は、王の間へしまいこんでいた。
先ほど送られてきた絵を持ち、ユガの後に続く。
「あのさ、ユガ。ハイラルで、ラヴィオを見なかった?」
「ラヴィオ? いいえ……会ってはいませんが」
「そっか……」
不安が増す。ラヴィオは無事なのだろうか。
この世界にいないことは恐らく確かだから、せめてハイラルで、無事にいてくれるといいが。
「ラヴィオがいないのですか」
「そう。確か、ユガから1人目の賢者の絵が送られてきてからかな。着替えもなくなってたし、石版の光も消えてたから、もしかしてハイラルに行ったんじゃないかなと思って……」
僕たちは王の間にたどり着く。床にきちんと並べておいた賢者たちの絵。
最後の1枚を隣に並べる。
ユガは、自身が持っていた絵を、王の間の奥の壁に掛けた。
「それは……?」
「ハイラルの王女、ゼルダ姫です」
「ゼルダ姫……」
七賢者たちの絵とは違い、絵からでも、高貴で清廉な雰囲気が伝わってきた。きっとハイラルは、光に溢れる国だったのだろう。
「いいですか、レイシ王子。そろそろ、あの忌々しい勇者がやってくることでしょう……私は魔王を喚び出します。そうしたら勇者を庇うように、私を封印してください。そして、勇者をロウラル城から出し、絵を解放するように言ってください。勇者の名はリンク」
「リンク……」
「奴は、絵になりません。全く謎です」
その時、何者かが王の間に近づく気配がした。
「!」
「私とあなたが共謀していることは、奴には絶対に気づかれてはなりません。いいですね」
「ユガ……」
「来ますよ」
あっという間の出来事だった。勇者、が王の間に現れる。
緑の服を纏った少年だった。ラヴィオによく似ているが、ラヴィオではない。
その時、ユガの周りに突然、黒い光が現れた。
「ッ!」
『どうやら遅かったようですね……これで、魔王は復活します』
目を開けると、そこには、ユガとは似ても似つかない姿が。いや、ユガであることは確かだ。
もしかして、ユガと魔王が合体したのだろうか?
「……っ!」
「! リンク!」
僕がそんなことを考えている間に勇者リンクはユガに挑み、壁に跳ね飛ばされる。
なおも追撃を加えようとするユガの前に、半ば本能のまま立ち、僕は魔方陣を描いた。
「リンク……僕が、ユガを食い止めます。どうかあなたは、賢者たちを解放して」
七賢者たちの絵は、いつの間にか、王の間からは消え去っていた。一体いつの間になくなったのだろう。
僕の封印魔法は予定通り発動し、ユガの大きな身体を茨が包み込み、彼の自由を奪った。
「僕は、ロウラルのレイシ。この世界を憂う者です。……どうか、この世界を、救ってください」
意識を失いかけているリンクにそう言い、僕は移動魔法を唱える。
すると、瞬時にリンクは光に包まれ、光と共にどこかへ消え去った。
――どうか、村まで運ばれているといいが。まだどこに運ばれるか、僕はコントロールできない。
ふっと息をはいて、ユガを振り返った。
「ユガ……どうして、魔王と合体したの……?」
封印したままのユガは、答えることができない。でも僕は、封印を解く気にならなかった。
今は、まだ。少しユガが恐ろしい。ラヴィオが言っていたことを思い出す。
「ユガは……本当に、僕を裏切る気?」
てっきり魔王からトライフォースだけを奪うのかと思ったら、どうやらそういうわけでもないらしい。が、きっとユガには何か考えがあるのだろう。先ほどの様子から、まだ少しは、ユガの自我があるようだ。
そうだ、勇者が全ての賢者を解放し、トライフォースの一欠けらを手に入れたら。
ユガに戦ってもらって、その欠けらを得てもらおう。そう決めた。
「……ゼルダ姫、ねえ」
僕はユガを迂回し、王女の絵に近づく。壁画のような絵だが、それはあまりにも美しい。
少し嫉妬した。でも、彼女なら。
「ねえ……ゼルダ姫。あなたもハイラルの王女なら、分かるでしょう」
僕がこの世界を救いたい、その気持ちが。
これが本当に七賢者の絵で、これによって七賢者が封印されているとしたら、あと1枚。
あと1枚揃えば、魔王を復活させることができる。
「魔王……ね」
それがどんな存在なのかは、どんな本にも載っていなかった。
ただ、勇者と王女は光で、魔王は悪。それだけ。
魔王は必要以上の力を求め、賢者に封じられ、勇者に倒された。
「……ん? 何だこれ」
絵を抱き上げると、落ちてきた紙切れ。
開くとユガの走り書き。
「何……勇者が邪魔をする、勇者がもし共にロウラルへ来た時、王子は私を捕らえてください、」
それは全て勇者の目を欺くため。勇者がロウラルの世界へやってきて、賢者たちの封印を解いた時、勇気のトライフォースは現れる。
なんだ、何だか混乱してきた。
「つまり、この絵を7枚集めると、トライフォースの一欠けらを持った魔王が現れる。けど賢者を絵から解放すると、またもう1つの欠けらが現れる……?」
そういうことだろうか? なんという二度手間だろう。
ユガの走り書きをじっくり読み返した。
「へえ……賢者が揃ってきたから、魔法が使えるかもしれないのか。ちょっと試してみよう」
ラヴィオやユガのことはちゃんと心配しているが、あまり心配し過ぎるのも毒だと思うので、適度に別のことを考えるようにしている。異形のものとなった兵士たちと、一戦交えてみたりとか。
僕は母親から貰った魔力の宿る杖を持ち、苦労しながら外に出て、魔物に試してみようと思った。
「えいっ!」
僕は封印魔法を試してみる。ユガにやるので、出来なかったら困る。
本で読んだだけなので簡単に出来るわけはないだろうと思っていたが、あっさり、地面に描いた魔方陣から茨が生えて、魔物を捕らえた。
やつはもがいている。僕は驚いて杖を見た。
「……え、本当に?」
まだ辛うじて平和だった頃は、地面に魔方陣を描いてみても、全く反応しなかったのに。
こんなにあっさり上手くいってしまって拍子抜けする。
「……ユガが帰ってくるまで、練習でもするか」
僕は逃げ始めた魔物を追いかけた。
それから暫く経った。最近の僕の日課は、石版の前でぼーっとすることだ。
2人がいなくなってから、どれくらい経つだろう。無事でいるといいが。
そんなことを考えていると、突然、絵が落ちてきた。
「!?」
慌てて受け止める。恐る恐る裏返してみると、それが最後の1枚に違いなかった。
「……これが……」
これでついに、全員分、揃ったのか。そう思った瞬間、石版が光った。
「っ!」
思わず目を閉じる。久々の閃光だ。
ゆっくり目を開けると、そこには見覚えのある人が立っていた。
「ユガ……!」
「お久しぶりですね、レイシ王子」
そこにいたのはユガだった。小脇には別の絵を抱えている。
「お待たせしました。少々手こずりましたが……これで、全ての賢者を封印しました。今に、魔法が復活する筈です。さあ、絵を持って王の間へ」
「うんっ」
今までユガが送ってきてくれていた賢者たちの絵は、王の間へしまいこんでいた。
先ほど送られてきた絵を持ち、ユガの後に続く。
「あのさ、ユガ。ハイラルで、ラヴィオを見なかった?」
「ラヴィオ? いいえ……会ってはいませんが」
「そっか……」
不安が増す。ラヴィオは無事なのだろうか。
この世界にいないことは恐らく確かだから、せめてハイラルで、無事にいてくれるといいが。
「ラヴィオがいないのですか」
「そう。確か、ユガから1人目の賢者の絵が送られてきてからかな。着替えもなくなってたし、石版の光も消えてたから、もしかしてハイラルに行ったんじゃないかなと思って……」
僕たちは王の間にたどり着く。床にきちんと並べておいた賢者たちの絵。
最後の1枚を隣に並べる。
ユガは、自身が持っていた絵を、王の間の奥の壁に掛けた。
「それは……?」
「ハイラルの王女、ゼルダ姫です」
「ゼルダ姫……」
七賢者たちの絵とは違い、絵からでも、高貴で清廉な雰囲気が伝わってきた。きっとハイラルは、光に溢れる国だったのだろう。
「いいですか、レイシ王子。そろそろ、あの忌々しい勇者がやってくることでしょう……私は魔王を喚び出します。そうしたら勇者を庇うように、私を封印してください。そして、勇者をロウラル城から出し、絵を解放するように言ってください。勇者の名はリンク」
「リンク……」
「奴は、絵になりません。全く謎です」
その時、何者かが王の間に近づく気配がした。
「!」
「私とあなたが共謀していることは、奴には絶対に気づかれてはなりません。いいですね」
「ユガ……」
「来ますよ」
あっという間の出来事だった。勇者、が王の間に現れる。
緑の服を纏った少年だった。ラヴィオによく似ているが、ラヴィオではない。
その時、ユガの周りに突然、黒い光が現れた。
「ッ!」
『どうやら遅かったようですね……これで、魔王は復活します』
目を開けると、そこには、ユガとは似ても似つかない姿が。いや、ユガであることは確かだ。
もしかして、ユガと魔王が合体したのだろうか?
「……っ!」
「! リンク!」
僕がそんなことを考えている間に勇者リンクはユガに挑み、壁に跳ね飛ばされる。
なおも追撃を加えようとするユガの前に、半ば本能のまま立ち、僕は魔方陣を描いた。
「リンク……僕が、ユガを食い止めます。どうかあなたは、賢者たちを解放して」
七賢者たちの絵は、いつの間にか、王の間からは消え去っていた。一体いつの間になくなったのだろう。
僕の封印魔法は予定通り発動し、ユガの大きな身体を茨が包み込み、彼の自由を奪った。
「僕は、ロウラルのレイシ。この世界を憂う者です。……どうか、この世界を、救ってください」
意識を失いかけているリンクにそう言い、僕は移動魔法を唱える。
すると、瞬時にリンクは光に包まれ、光と共にどこかへ消え去った。
――どうか、村まで運ばれているといいが。まだどこに運ばれるか、僕はコントロールできない。
ふっと息をはいて、ユガを振り返った。
「ユガ……どうして、魔王と合体したの……?」
封印したままのユガは、答えることができない。でも僕は、封印を解く気にならなかった。
今は、まだ。少しユガが恐ろしい。ラヴィオが言っていたことを思い出す。
「ユガは……本当に、僕を裏切る気?」
てっきり魔王からトライフォースだけを奪うのかと思ったら、どうやらそういうわけでもないらしい。が、きっとユガには何か考えがあるのだろう。先ほどの様子から、まだ少しは、ユガの自我があるようだ。
そうだ、勇者が全ての賢者を解放し、トライフォースの一欠けらを手に入れたら。
ユガに戦ってもらって、その欠けらを得てもらおう。そう決めた。
「……ゼルダ姫、ねえ」
僕はユガを迂回し、王女の絵に近づく。壁画のような絵だが、それはあまりにも美しい。
少し嫉妬した。でも、彼女なら。
「ねえ……ゼルダ姫。あなたもハイラルの王女なら、分かるでしょう」
僕がこの世界を救いたい、その気持ちが。