黄金を求めし者(神トラ2/ラヴィオ)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それからというもの、兵士長すら異形のものになってしまい、この城に人間は殆どいなくなってしまった。
彼らによって、城は作り変えられている。まるで、何かと戦うかのように。
「……ラヴィオ、この世界は、どうなってしまうんだろうね」
僕とラヴィオは、僕の部屋に身を寄せていた。他の部屋は既に、何かダンジョンのようなものになってしまっていた。
村はもう少しまともだろうとは思ったが、ユガの帰りを待たねばならない。
僕はそう考え、この城を離れる選択肢はなかった。
「ユガがいなくなってから、随分変わってしまいましたね」
「そうだね……ユガが帰ってくれば、また元に戻るのかな?」
ラヴィオの手を握り返す。不安に押しつぶされそうな中で、ラヴィオだけが、心の支えだった。
そんな中、ある日、石版の方から音が聞こえた。
「!」
「ユガ、かな?」
僕とラヴィオは部屋を出て、石版の許へ向かう。そこにあったのは、一枚の絵だった。
描かれていたのは女性。ユガの部屋に飾ってあった壁画のような絵に、よく似ていた。
「何で、こんな物がここに……?」
「……そういえば、ユガ、言ってた」
僕が以前、絵の課題で書いた物語。七賢者が闇の魔王を封印し、復活したものの勇者に倒されるお話。あれはハイラルの世界の話だったらしい。
その後も魔王は復活を待ちわびているが、その魔王が、どうやらトライフォースの一欠けらを持っているらしい。
つまり、まずは七賢者の力を削ぎ、魔王を復活させ、その欠けらを手に入れるそうだ。
「何でそんな大事なこと、今まで教えてくれないんですか……」
「あ、ごめん。知ってると思ってた」
絵を送る、と言っていたが、七賢者の絵なのか? 絵に封印できるということ? だとしたら、部屋に飾られていた、あの絵は。
首を横に振り、余計なことは考えないようにする。今はユガを信じる時だ。
「とりあえず、トライフォースには3つの欠けらがあるんだって。勇気、知恵、力……だったかな。3つ揃って初めて、トライフォースになるみたい」
その内の1つは魔王が持っている。そしてもう2つは、ハイラルの王家が代々継いでいるらしい。ある場所は分かっているから、それらをどうにかして、ユガが得て来るということだ。
「……王子」
「どうしたの、ラヴィオ」
「今更、ですが」
躊躇いがちに問う。
「きっと……ユガの言うことには、裏があります。今は、ユガを信じる他ないのは事実ですが。けど、あの男は、必ず王子を裏切る」
「……何でそう言い切れるの?」
「証拠はありません、私の単純な想像です。……けれど、奴は。王子を見る時の、目は」
ラヴィオは唇を噛み、それ以上は何も言わなかった。
その後に何を言いたいのかは分からなかったが、ラヴィオが何を心配しているのか、それは少し分かった。
「……ごめんね、ラヴィオ。僕にはもう、こういう選択肢を取る他ない。あの時は悪かったって思ってる」
ラヴィオの忠告を聞かず、ユガをハイラルに行かせたこと。
「でも、僕も、ラヴィオと共に暮らせる幸福な世界を作りたい。こんな壊れかけた世界だって、愛してるから」
僕は目を閉じて言った。まるで、赦しを乞うように。
その翌朝目覚めると、ベッドからラヴィオの姿が消えていた。
普段、僕たちは互いを護り合うように、同じベッドで眠っているのだ。
「ラヴィオ……?」
夜中起きて出て行ったのか? でも、どこに。
嫌な予感がして、僕は急いで石版の許に向かった。
「やっぱり……!」
石版の亀裂は大きくなっていたが、漏れ出ていた光は全く消え失せていた。
昨日はまだ、弱弱しく光っていたのだ、それでも。
「……ラヴィオは、ハイラルに行ったんだ」
服や下着は少し残っていたが、あらかた減っていた。それならば計画的犯行だ。
僕は亀裂に触れる。もはや何も起こらなかった。
僕をハイラルの世界に運んでくれる、そんな奇跡は起こらなかった。
「ラヴィオのばか……!」
どうして僕を残して行ったんだ? そんなにユガのことが心配だったのだろうか。
いや、有り得ない。昨日はあんなことを言っていたが、根本的に、ラヴィオはユガのことが嫌いだ。自分で言うのもなんだが、僕のことを置いてユガの許へ行くなんてことは考えられない。
だとすれば、だ。
「僕の何かを……助けるために、ハイラルに……?」
ユガは、ラヴィオの腕輪に――僕の両親がラヴィオに贈った腕輪に――トライフォースの力が残存していると言っていた。だとしたら、腕輪を使ってハイラルの世界に行けたとしてもおかしくない。ユガが行けたのは……きっと、魔力があったからだろう。それか、トライフォースの恩恵を受けていたからか。
ラヴィオはたまにちょっとドジだが、考えなしに行動するような人ではない。だから、きっと、何かを思って。
「……でも、何か書置きを残して行ってくれたって、いいじゃないか」
僕は1人。ここで1人。異形のものによって作り変えられた城の中に、たった1人。
今更ハイラルの世界に行くことはできない。だから、僕はここで、2人の帰りを待つしかない。
心が折れてしまいそうだった。悲しくて、涙が止まらない気さえした。
それでも僕は、ロウラルの王子。ここで待つより他になかった。
彼らによって、城は作り変えられている。まるで、何かと戦うかのように。
「……ラヴィオ、この世界は、どうなってしまうんだろうね」
僕とラヴィオは、僕の部屋に身を寄せていた。他の部屋は既に、何かダンジョンのようなものになってしまっていた。
村はもう少しまともだろうとは思ったが、ユガの帰りを待たねばならない。
僕はそう考え、この城を離れる選択肢はなかった。
「ユガがいなくなってから、随分変わってしまいましたね」
「そうだね……ユガが帰ってくれば、また元に戻るのかな?」
ラヴィオの手を握り返す。不安に押しつぶされそうな中で、ラヴィオだけが、心の支えだった。
そんな中、ある日、石版の方から音が聞こえた。
「!」
「ユガ、かな?」
僕とラヴィオは部屋を出て、石版の許へ向かう。そこにあったのは、一枚の絵だった。
描かれていたのは女性。ユガの部屋に飾ってあった壁画のような絵に、よく似ていた。
「何で、こんな物がここに……?」
「……そういえば、ユガ、言ってた」
僕が以前、絵の課題で書いた物語。七賢者が闇の魔王を封印し、復活したものの勇者に倒されるお話。あれはハイラルの世界の話だったらしい。
その後も魔王は復活を待ちわびているが、その魔王が、どうやらトライフォースの一欠けらを持っているらしい。
つまり、まずは七賢者の力を削ぎ、魔王を復活させ、その欠けらを手に入れるそうだ。
「何でそんな大事なこと、今まで教えてくれないんですか……」
「あ、ごめん。知ってると思ってた」
絵を送る、と言っていたが、七賢者の絵なのか? 絵に封印できるということ? だとしたら、部屋に飾られていた、あの絵は。
首を横に振り、余計なことは考えないようにする。今はユガを信じる時だ。
「とりあえず、トライフォースには3つの欠けらがあるんだって。勇気、知恵、力……だったかな。3つ揃って初めて、トライフォースになるみたい」
その内の1つは魔王が持っている。そしてもう2つは、ハイラルの王家が代々継いでいるらしい。ある場所は分かっているから、それらをどうにかして、ユガが得て来るということだ。
「……王子」
「どうしたの、ラヴィオ」
「今更、ですが」
躊躇いがちに問う。
「きっと……ユガの言うことには、裏があります。今は、ユガを信じる他ないのは事実ですが。けど、あの男は、必ず王子を裏切る」
「……何でそう言い切れるの?」
「証拠はありません、私の単純な想像です。……けれど、奴は。王子を見る時の、目は」
ラヴィオは唇を噛み、それ以上は何も言わなかった。
その後に何を言いたいのかは分からなかったが、ラヴィオが何を心配しているのか、それは少し分かった。
「……ごめんね、ラヴィオ。僕にはもう、こういう選択肢を取る他ない。あの時は悪かったって思ってる」
ラヴィオの忠告を聞かず、ユガをハイラルに行かせたこと。
「でも、僕も、ラヴィオと共に暮らせる幸福な世界を作りたい。こんな壊れかけた世界だって、愛してるから」
僕は目を閉じて言った。まるで、赦しを乞うように。
その翌朝目覚めると、ベッドからラヴィオの姿が消えていた。
普段、僕たちは互いを護り合うように、同じベッドで眠っているのだ。
「ラヴィオ……?」
夜中起きて出て行ったのか? でも、どこに。
嫌な予感がして、僕は急いで石版の許に向かった。
「やっぱり……!」
石版の亀裂は大きくなっていたが、漏れ出ていた光は全く消え失せていた。
昨日はまだ、弱弱しく光っていたのだ、それでも。
「……ラヴィオは、ハイラルに行ったんだ」
服や下着は少し残っていたが、あらかた減っていた。それならば計画的犯行だ。
僕は亀裂に触れる。もはや何も起こらなかった。
僕をハイラルの世界に運んでくれる、そんな奇跡は起こらなかった。
「ラヴィオのばか……!」
どうして僕を残して行ったんだ? そんなにユガのことが心配だったのだろうか。
いや、有り得ない。昨日はあんなことを言っていたが、根本的に、ラヴィオはユガのことが嫌いだ。自分で言うのもなんだが、僕のことを置いてユガの許へ行くなんてことは考えられない。
だとすれば、だ。
「僕の何かを……助けるために、ハイラルに……?」
ユガは、ラヴィオの腕輪に――僕の両親がラヴィオに贈った腕輪に――トライフォースの力が残存していると言っていた。だとしたら、腕輪を使ってハイラルの世界に行けたとしてもおかしくない。ユガが行けたのは……きっと、魔力があったからだろう。それか、トライフォースの恩恵を受けていたからか。
ラヴィオはたまにちょっとドジだが、考えなしに行動するような人ではない。だから、きっと、何かを思って。
「……でも、何か書置きを残して行ってくれたって、いいじゃないか」
僕は1人。ここで1人。異形のものによって作り変えられた城の中に、たった1人。
今更ハイラルの世界に行くことはできない。だから、僕はここで、2人の帰りを待つしかない。
心が折れてしまいそうだった。悲しくて、涙が止まらない気さえした。
それでも僕は、ロウラルの王子。ここで待つより他になかった。