黄金を求めし者(神トラ2/ラヴィオ)
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翌日の夕方、僕は心の準備を整え、再び石版の前に行った。
待ち合わせの時刻には少し早い。気が急いて仕方なかった。
「……まるで、ピクニックの前日みたいだ」
ずっと昔に行った、あの綺麗な石を拾ってきた、あのピクニック。
前夜、あまり眠れなかった僕は、道中は目をこすっていたのだが、それでも着くととても楽しかったことを覚えている。
そう、今の感覚は、あの日に似ている。
「本当に行けるのかな? この石版が、ハイラルと繋げてくれるって言ってたけど」
僕は石版に手を伸ばした。
「なりません、王子」
「っ!?」
背後から突然声がして、思わず手を引っ込める。
「な、んだ、ユガか……」
「迂闊に触れると、何が起こるか分かりませんからね。どうぞお手を触れないように」
「はい……」
あまりにも驚きすぎて、まだ心臓がどきどきしている。
一歩、石版から距離を取った。
「そういえば、ラヴィオは?」
「そろそろ来ると思うけど……反対はしているようだったけど、来るみたいだね」
昨日、あの後ユガに、ラヴィオも来させるように言われたので、僕は兵士長にラヴィオを借りると言ったのだった。
城の中は異形のものだらけだが、それなりに忠誠心はあるようだ。
兵士長は残った兵士を連れて、今日も亀裂の探索へ向かった。
「丁度いい。王子、少し話があります」
「話?」
遺言みたいなもの? と思ってしまい、自分に嫌気がさす。
「王子、あなたはご存知ないかもしれませんが、私はあなたをお慕い申し上げておりました」
「えっ?」
「本当に、額縁に入れて、壁にでも飾っておきたいくらい」
不意にユガの部屋に飾ってあった、壁画のような絵を思い出し、ぞっとする。
思わず一歩下がるが、ユガも同じように距離を詰めてくる。
「レイシ王子、あなたは世界で一番美しい。ここでお別れなんて残念ですが、必ず私は戻ってきます」
「ユガ、」
「王子っ!」
その時、ラヴィオの声がして、ユガの後ろから走ってくるのが見えた。
「ラヴィオ!」
「ユガ、王子に何をっ」
「別に、何もしていませんが。ただ、別れを告げていただけです。再び無事に会えるかは分からないのでね」
しれっとユガはそんなことを言う。
ラヴィオは僕とユガの間に入ってきて、僕を護るように立った。
「ラヴィオ……」
「遅くなってすみません、王子。さあ早くユガを見送りましょう」
「おや、そんなことを言うなんて、驚きましたね。ラヴィオ、あなたはトライフォースを奪ってくることに、反対だったのではありませんか?」
「……王子のお言葉でしたら、私には異論はありません」
昨日と打って変わって、表情もなくラヴィオは返す。
「では、やり方を教えましょう。ラヴィオ、いつもの腕輪は着けていますか?」
「えっ? もちろん」
ユガは満足げに頷くと石版に近づき、ラヴィオに手招きする。
怪訝そうな顔をしながら、ラヴィオは側へ行った。
「えっ、ちょ」
「なっ」
すると突然、ユガはラヴィオの手首を掴み、自身の手と共に石版に触れさせる。
先程、何が起こるか分からないと言われた石版に、昨日、ハイラルに繋げてくれると言っていた石版に、いきなり触らせたのでとても混乱する。
「ユガ、何するんだっ」
「いえ、扉を開けようと思っただけですが」
「扉……?」
何でもないことのようにユガは答える。
気づくと、石版には亀裂が入っており、そこからは光が漏れ出ていた。
「扉って、ハイラルへのってこと?」
「ええ」
「でも、何で僕が!」
「ラヴィオが、というよりは、その腕輪が必要だったのでね」
「えっ、これ?」
ラヴィオは困惑した声を出す。既に腕は振り払っていた。
「その腕輪は長いことトライフォースの光に触れていた筈です。前国王は、その腕輪を、トライフォースの聖地にしまっていました。ハイラルへの扉を開くには、トライフォースの力が必要だと書いてあったので、もしかするとそれで開くかもと思ったわけです」
僕は脱力する。
「だったら腕輪を取ればいいだけじゃ……」
「とにかく、こんな不安定な亀裂ですが、これこそ恐らくハイラルに繋がる扉です」
「えっでもどうやって、こんな扉を通る……?」
僕がそう問うと、突然、ユガは姿を消した。
「ユガ!?」
亀裂に、僅かにユガのマントが見えた気がした。
「ユガ……えっ、ユガ? 本当にハイラルに行っちゃったの?」
「……どうやら、そのようですね」
ラヴィオは僕の隣でため息をつく。
「この亀裂から……本当に、ハイラルに繋がってるの?」
「王子、お手を触れないように。気になるのは分かりますが、あなたに何かあれば、光が戻ったとしても何の意味もありません」
「うっ……ごめんなさい」
ユガと同じことを言われ、慌てて手を引っ込める。
「……ユガ、無事だといいね」
ユガにどんな感情を向けられているのか、僕は未だに、よく分かっていないけれども。
「王子、戻りましょう。ここは冷えます」
「……うん」
そういえばユガは、いつ、どのように戻ってくるのか、何も言っていなかった。戻ってくるとしたら、やはりこの亀裂から戻ってくるのだろうか。
トライフォースを得ることはそんなに簡単だとは思わない。向こうの世界にだって、必要なものだろう。
僕はそう思いながら、ラヴィオに肩を抱かれ、自室に戻った。
待ち合わせの時刻には少し早い。気が急いて仕方なかった。
「……まるで、ピクニックの前日みたいだ」
ずっと昔に行った、あの綺麗な石を拾ってきた、あのピクニック。
前夜、あまり眠れなかった僕は、道中は目をこすっていたのだが、それでも着くととても楽しかったことを覚えている。
そう、今の感覚は、あの日に似ている。
「本当に行けるのかな? この石版が、ハイラルと繋げてくれるって言ってたけど」
僕は石版に手を伸ばした。
「なりません、王子」
「っ!?」
背後から突然声がして、思わず手を引っ込める。
「な、んだ、ユガか……」
「迂闊に触れると、何が起こるか分かりませんからね。どうぞお手を触れないように」
「はい……」
あまりにも驚きすぎて、まだ心臓がどきどきしている。
一歩、石版から距離を取った。
「そういえば、ラヴィオは?」
「そろそろ来ると思うけど……反対はしているようだったけど、来るみたいだね」
昨日、あの後ユガに、ラヴィオも来させるように言われたので、僕は兵士長にラヴィオを借りると言ったのだった。
城の中は異形のものだらけだが、それなりに忠誠心はあるようだ。
兵士長は残った兵士を連れて、今日も亀裂の探索へ向かった。
「丁度いい。王子、少し話があります」
「話?」
遺言みたいなもの? と思ってしまい、自分に嫌気がさす。
「王子、あなたはご存知ないかもしれませんが、私はあなたをお慕い申し上げておりました」
「えっ?」
「本当に、額縁に入れて、壁にでも飾っておきたいくらい」
不意にユガの部屋に飾ってあった、壁画のような絵を思い出し、ぞっとする。
思わず一歩下がるが、ユガも同じように距離を詰めてくる。
「レイシ王子、あなたは世界で一番美しい。ここでお別れなんて残念ですが、必ず私は戻ってきます」
「ユガ、」
「王子っ!」
その時、ラヴィオの声がして、ユガの後ろから走ってくるのが見えた。
「ラヴィオ!」
「ユガ、王子に何をっ」
「別に、何もしていませんが。ただ、別れを告げていただけです。再び無事に会えるかは分からないのでね」
しれっとユガはそんなことを言う。
ラヴィオは僕とユガの間に入ってきて、僕を護るように立った。
「ラヴィオ……」
「遅くなってすみません、王子。さあ早くユガを見送りましょう」
「おや、そんなことを言うなんて、驚きましたね。ラヴィオ、あなたはトライフォースを奪ってくることに、反対だったのではありませんか?」
「……王子のお言葉でしたら、私には異論はありません」
昨日と打って変わって、表情もなくラヴィオは返す。
「では、やり方を教えましょう。ラヴィオ、いつもの腕輪は着けていますか?」
「えっ? もちろん」
ユガは満足げに頷くと石版に近づき、ラヴィオに手招きする。
怪訝そうな顔をしながら、ラヴィオは側へ行った。
「えっ、ちょ」
「なっ」
すると突然、ユガはラヴィオの手首を掴み、自身の手と共に石版に触れさせる。
先程、何が起こるか分からないと言われた石版に、昨日、ハイラルに繋げてくれると言っていた石版に、いきなり触らせたのでとても混乱する。
「ユガ、何するんだっ」
「いえ、扉を開けようと思っただけですが」
「扉……?」
何でもないことのようにユガは答える。
気づくと、石版には亀裂が入っており、そこからは光が漏れ出ていた。
「扉って、ハイラルへのってこと?」
「ええ」
「でも、何で僕が!」
「ラヴィオが、というよりは、その腕輪が必要だったのでね」
「えっ、これ?」
ラヴィオは困惑した声を出す。既に腕は振り払っていた。
「その腕輪は長いことトライフォースの光に触れていた筈です。前国王は、その腕輪を、トライフォースの聖地にしまっていました。ハイラルへの扉を開くには、トライフォースの力が必要だと書いてあったので、もしかするとそれで開くかもと思ったわけです」
僕は脱力する。
「だったら腕輪を取ればいいだけじゃ……」
「とにかく、こんな不安定な亀裂ですが、これこそ恐らくハイラルに繋がる扉です」
「えっでもどうやって、こんな扉を通る……?」
僕がそう問うと、突然、ユガは姿を消した。
「ユガ!?」
亀裂に、僅かにユガのマントが見えた気がした。
「ユガ……えっ、ユガ? 本当にハイラルに行っちゃったの?」
「……どうやら、そのようですね」
ラヴィオは僕の隣でため息をつく。
「この亀裂から……本当に、ハイラルに繋がってるの?」
「王子、お手を触れないように。気になるのは分かりますが、あなたに何かあれば、光が戻ったとしても何の意味もありません」
「うっ……ごめんなさい」
ユガと同じことを言われ、慌てて手を引っ込める。
「……ユガ、無事だといいね」
ユガにどんな感情を向けられているのか、僕は未だに、よく分かっていないけれども。
「王子、戻りましょう。ここは冷えます」
「……うん」
そういえばユガは、いつ、どのように戻ってくるのか、何も言っていなかった。戻ってくるとしたら、やはりこの亀裂から戻ってくるのだろうか。
トライフォースを得ることはそんなに簡単だとは思わない。向こうの世界にだって、必要なものだろう。
僕はそう思いながら、ラヴィオに肩を抱かれ、自室に戻った。