黄金を求めし者(神トラ2/ラヴィオ)
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このロウラル王国には昔、"トライフォース"という黄金の三角形が存在していた。
それは全能の神から賜ったものであり、手にしたものには力が宿るといわれていた。
トライフォースは聖地に安置されていたが、力を得られるということで、幾度にも亘って争いが起きた。
それを憂えた僕の両親は、トライフォースを破壊した。
もうそれを巡る争いは起きるわけもなく、両親は喜び、王国は平和を見た。
しかしトライフォースが無くなったことによって、徐々に世界には斜陽がさす。
元々1つだった大地に亀裂が入り、空には太陽が出ることもなく。まともな植物が育たなくなり、魔物が草原を徘徊する。
幸い魔物は、城や村などの建物には入ってこないようだったが、外に出るにも武器が必要な時代になってしまった。
そこに僕は生まれ、両親は亡くなる。
僕は置き去りにされ、全ての責任を押し付けられたようだった。
「レイシ王子、何かお探しですか?」
「あっ兵士長」
「何をそんな驚いておるのです?」
ある日、城内をうろついていたところを兵士長に見つかる。
驚くのは、やましいことを考えている証拠かもしれない。僕は肩を竦めた。
「ラヴィオを捜してるだけだよ」
「王子はいつもラヴィオを捜してらっしゃいますな。何かご用でも?」
「そう。村の様子を一緒に見に行こうと思って」
「王子がですか? それは駄目です!」
兵士長に一喝され、やっぱりか、と思う。
「いいじゃん、ラヴィオ連れてくからさー」
「ラヴィオを連れて行こうと駄目です! いや、ラヴィオだからこそ余計心配なのです! せめてこの兵士長が編成した、選りすぐりの精鋭たちを連れて行くのならまだマシなのですが……」
「その精鋭の中に、ラヴィオって入ってる?」
「入っているとお思いですか? ラヴィオはまだ若い、槍や剣の扱いはまだまだです」
そのラヴィオに僕は負けたので、僕は多分、かなり武器の扱いが下手だ。
「王子、落ち込んでらっしゃるのですか? ですが王子は杖の扱いがお得意だとお聞きしましたぞ、ユガ殿から。まだトライフォースのある時代であれば、魔法が使えたかもしれないとか……おや、失礼」
そう、魔力の宿る杖を僕は母から受け継いでおり、さる時代ならばその杖により魔法が使えたかもとユガは言っていた。
残念ながら今はそういう時代ではないので、僕は単純に杖で敵を殴る訓練をしたり、魔法の暗記をしている。
「それより王子、村に行くより先に、お仕事を片付けてください。まだやることがあるでしょう?」
「ええ、ないもん……」
「うそおっしゃい」
僕は兵士長に背中を押され、自室にばたんと閉じ込められる。
まあ兵士長に見つかれば、まず外出はできないと分かっていた。というか他の兵士に見つかっても、大抵は兵士長に報告され、夢は潰える。
唯一ラヴィオならば、呆れながらついてきてくれるか。もしくは諭されるか、その間に兵士長に見つかって2人とも怒られるか。
……どんなに考えても同じ結末しか見えなかったので、僕は諦めた。
「仕方ない、書類の山を片付けるか……」
多くはユガによって書かれた、城の付近の瓦礫の撤去や、亀裂の調査のことなど。もしくは、分断されかけている地域への調査団の派遣に関することなど。
僕には難しいことだ。変なことが書かれていなければ、ユガや兵士長からの提案書だし、特に深く考えずにサインする。
国のトップがこんなではいけないと思いつつ。
「王子。私をお捜しでしたか?」
「! ラヴィオ!」
ようやくやる気になったところに、扉がノックされ、ラヴィオが顔を覗かせる。
「もう、ラヴィオ、遅いよー。せっかく書類整理しようと思ったのに」
「お邪魔でしたか。では失礼しました」
「いや、待って! 行かないで! せめて用件くらい聞いて!」
僕は取り出した書類を山の一番上に戻し、ラヴィオを引き止めた。
「いいんですか? 王子。ユガが心配しておりましたよ。サインしてくれないから、調査が始められないと」
「うっ……」
「嘘です。勿論悩んではおりましたが、お話くらい聞いてあげましょう。せっかく来たんですから」
「ほんと?」
ラヴィオは僕に導かれるまま、ソファーに座る。
僕もその隣に座った。
「村に行きたかったんだよ、僕はね。ただ、兵士長に見つかっちゃってさ」
「まあ大体、そのパターンですよね」
「……ねえ、今、村はどんな風になってる?」
ラヴィオは、質問の意図が分からない、と言うような顔をする。
「兵士長から、定期の報告はいつも受けている筈では」
「うん、それは勿論そうだよ。でもそれだけじゃないと僕は思ってる。報告書には、魔物はまだ村には入ってきていない、村民同士も力を合わせて頑張っている、なんて書いてあるけど――」
兵士長が嘘を言っているなんて言いたいわけではないのだが、安全な場所に居続け、外の世界をあまり知らない僕に、あまり悪いものを見せたい気持ちにはならないだろうと、勝手に思っている。
その点、ラヴィオはよくも悪くも、僕に真実を教えてくれる。無力な僕に。
「……ご報告申し上げます、レイシ王子」
突然あらたまってラヴィオは言う。
「なんだ、急に」
「村には既に、魔物が徘徊しております。見回りに行った兵士も帰ってきません。魔物の餌食になったのかは不明ですが……以前からその兵士は、城で一生を終えるくらいなら、家族の許に戻りたいと言っておりました」
「!」
「更に、村では新興宗教も興っております。多くの者が魔物の仮面をつけております。盗賊も現れました」
僕が文字からは知らされなかったことを、ラヴィオは語った。
「……兵士長は、どうして」
「次の報告書には、書かれているかもしれませんが。それが昨日、私が村に行き、見たことの全てです。そして、残念ながら」
首を横に振るラヴィオ。
「もう既に、村の者たちに、私たちの言葉は届かないでしょう。彼らはトライフォースを破壊したからこのようなことになったのだと考えており、城の者たちに反抗心を覚えております」
それは全能の神から賜ったものであり、手にしたものには力が宿るといわれていた。
トライフォースは聖地に安置されていたが、力を得られるということで、幾度にも亘って争いが起きた。
それを憂えた僕の両親は、トライフォースを破壊した。
もうそれを巡る争いは起きるわけもなく、両親は喜び、王国は平和を見た。
しかしトライフォースが無くなったことによって、徐々に世界には斜陽がさす。
元々1つだった大地に亀裂が入り、空には太陽が出ることもなく。まともな植物が育たなくなり、魔物が草原を徘徊する。
幸い魔物は、城や村などの建物には入ってこないようだったが、外に出るにも武器が必要な時代になってしまった。
そこに僕は生まれ、両親は亡くなる。
僕は置き去りにされ、全ての責任を押し付けられたようだった。
「レイシ王子、何かお探しですか?」
「あっ兵士長」
「何をそんな驚いておるのです?」
ある日、城内をうろついていたところを兵士長に見つかる。
驚くのは、やましいことを考えている証拠かもしれない。僕は肩を竦めた。
「ラヴィオを捜してるだけだよ」
「王子はいつもラヴィオを捜してらっしゃいますな。何かご用でも?」
「そう。村の様子を一緒に見に行こうと思って」
「王子がですか? それは駄目です!」
兵士長に一喝され、やっぱりか、と思う。
「いいじゃん、ラヴィオ連れてくからさー」
「ラヴィオを連れて行こうと駄目です! いや、ラヴィオだからこそ余計心配なのです! せめてこの兵士長が編成した、選りすぐりの精鋭たちを連れて行くのならまだマシなのですが……」
「その精鋭の中に、ラヴィオって入ってる?」
「入っているとお思いですか? ラヴィオはまだ若い、槍や剣の扱いはまだまだです」
そのラヴィオに僕は負けたので、僕は多分、かなり武器の扱いが下手だ。
「王子、落ち込んでらっしゃるのですか? ですが王子は杖の扱いがお得意だとお聞きしましたぞ、ユガ殿から。まだトライフォースのある時代であれば、魔法が使えたかもしれないとか……おや、失礼」
そう、魔力の宿る杖を僕は母から受け継いでおり、さる時代ならばその杖により魔法が使えたかもとユガは言っていた。
残念ながら今はそういう時代ではないので、僕は単純に杖で敵を殴る訓練をしたり、魔法の暗記をしている。
「それより王子、村に行くより先に、お仕事を片付けてください。まだやることがあるでしょう?」
「ええ、ないもん……」
「うそおっしゃい」
僕は兵士長に背中を押され、自室にばたんと閉じ込められる。
まあ兵士長に見つかれば、まず外出はできないと分かっていた。というか他の兵士に見つかっても、大抵は兵士長に報告され、夢は潰える。
唯一ラヴィオならば、呆れながらついてきてくれるか。もしくは諭されるか、その間に兵士長に見つかって2人とも怒られるか。
……どんなに考えても同じ結末しか見えなかったので、僕は諦めた。
「仕方ない、書類の山を片付けるか……」
多くはユガによって書かれた、城の付近の瓦礫の撤去や、亀裂の調査のことなど。もしくは、分断されかけている地域への調査団の派遣に関することなど。
僕には難しいことだ。変なことが書かれていなければ、ユガや兵士長からの提案書だし、特に深く考えずにサインする。
国のトップがこんなではいけないと思いつつ。
「王子。私をお捜しでしたか?」
「! ラヴィオ!」
ようやくやる気になったところに、扉がノックされ、ラヴィオが顔を覗かせる。
「もう、ラヴィオ、遅いよー。せっかく書類整理しようと思ったのに」
「お邪魔でしたか。では失礼しました」
「いや、待って! 行かないで! せめて用件くらい聞いて!」
僕は取り出した書類を山の一番上に戻し、ラヴィオを引き止めた。
「いいんですか? 王子。ユガが心配しておりましたよ。サインしてくれないから、調査が始められないと」
「うっ……」
「嘘です。勿論悩んではおりましたが、お話くらい聞いてあげましょう。せっかく来たんですから」
「ほんと?」
ラヴィオは僕に導かれるまま、ソファーに座る。
僕もその隣に座った。
「村に行きたかったんだよ、僕はね。ただ、兵士長に見つかっちゃってさ」
「まあ大体、そのパターンですよね」
「……ねえ、今、村はどんな風になってる?」
ラヴィオは、質問の意図が分からない、と言うような顔をする。
「兵士長から、定期の報告はいつも受けている筈では」
「うん、それは勿論そうだよ。でもそれだけじゃないと僕は思ってる。報告書には、魔物はまだ村には入ってきていない、村民同士も力を合わせて頑張っている、なんて書いてあるけど――」
兵士長が嘘を言っているなんて言いたいわけではないのだが、安全な場所に居続け、外の世界をあまり知らない僕に、あまり悪いものを見せたい気持ちにはならないだろうと、勝手に思っている。
その点、ラヴィオはよくも悪くも、僕に真実を教えてくれる。無力な僕に。
「……ご報告申し上げます、レイシ王子」
突然あらたまってラヴィオは言う。
「なんだ、急に」
「村には既に、魔物が徘徊しております。見回りに行った兵士も帰ってきません。魔物の餌食になったのかは不明ですが……以前からその兵士は、城で一生を終えるくらいなら、家族の許に戻りたいと言っておりました」
「!」
「更に、村では新興宗教も興っております。多くの者が魔物の仮面をつけております。盗賊も現れました」
僕が文字からは知らされなかったことを、ラヴィオは語った。
「……兵士長は、どうして」
「次の報告書には、書かれているかもしれませんが。それが昨日、私が村に行き、見たことの全てです。そして、残念ながら」
首を横に振るラヴィオ。
「もう既に、村の者たちに、私たちの言葉は届かないでしょう。彼らはトライフォースを破壊したからこのようなことになったのだと考えており、城の者たちに反抗心を覚えております」