黄金を求めし者(神トラ2/ラヴィオ)
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※番外編
世界が完全に闇に覆われてしまうより前に、僕たちは2人で、こっそり城を抜け出したことがあった。
「わー、危ない」
「よく兵士長に見つかりませんでしたね……」
「ん、僕、兵士長の行動パターン熟知してるからね」
「その情熱、もっと他のことに使えません?」
僕はある日、ラヴィオを誘って、城の外に出た。
ラヴィオなら外に出るのは日常茶飯事だろうが、僕はあまり出られない。
外を魔物がうろついているわけでも何でもないのだが、最近、山の方で地割れが起きたらしく、危険だといわれていた。
「ふーん……この辺りは、意外と普通なんだね」
外に出るのは久しぶりだ。が、美化されている思い出と比較しても、城の周りはあまり変わっていなかった。
兵士の目をかいくぐって外に出る。村の方に行けば見回りの兵士がいるはずなので、行くとしたら反対の方だ。
「どこへ行くんです?」
「んー、散歩だよ。あてのないヤツ」
僕はラヴィオの手を引き、歩き出す。空が淀んでいるので、あまり新鮮な空気という感じもしない。
けれど、危険な感じはしなかった。護身用に僕は杖、ラヴィオは剣を持ってきているが、どうやら必要もなさそうだ。
「僕もラヴィオもいなかったら怪しまれるし、夕食までには絶対帰ろうね」
今は昼を少し過ぎた頃だ。今日は珍しく、ユガから与えられた課題をすごい速度で終わらせて提出してきたのだが、怪しまれないだろうか?
いや、ユガにはもうばれてるだろうな。でもユガのことだから、兵士長に言うなんてことはないだろう。
「一体どこまで行くつもりなんですか……」
「少し、ラヴィオと座って話せる所までは、行きたいかな」
そう言いながら、水辺にたどり着く。
心なしか、水が濁っている気がする。これも、トライフォースがなくなったせいだろうか?
「王子、あれ」
不意にラヴィオが言い、その指の先を見る。
「小鳥……?」
鳥が地面にいて、ぴいぴいと鳴いている。
僕たちは慌てて駆け寄った。
「かわいそうに。羽を怪我している」
「この子の親は……」
「……あ、あれ」
少し離れた所に、鳥が落ちていた。
落ちていた、というのは、的確な表現だろう。その鳥は、もう動かなかった。
「何かにやられたのかな……子どもを庇って……?」
「……城でなら、手当てしてやれるかもしれません」
「待って、この子の親を」
僕は柔らかそうな地面を掘り、その小鳥の親を埋める。
近くで花を摘み、そっとその地面の上に載せる。
「辺りに、他の子どもはいないようですね」
「そっか……じゃあ、早く戻ろう」
僕はラヴィオの手にそっと小鳥を載せる。
怯えているようには見えたが、逃げ出す術もないのだろう、じっとしている。
小鳥はこのロウラルでよく見かける種だった。
「ねえ、この子を連れて帰ったらきっと、兵士長に怒られるよね」
「ベランダにやってきた、ということにしましょう」
「そうだね。そうしよっか」
僕らは元来た道を戻り、裏道から城内へ戻る。
そのまま医務室へと直行した。
「この子、治せる? 鳥なんだけど」
「鳥?」
保健医は嫌な顔をする。
普段は腹痛の兵士を診たり、怪我の応急処置などもしてくれるが、やはり鳥は専門外なのだろう。
「王子、この鳥をどこで?」
「えーとね、ベランダに落ちてきたの。かわいそうに、羽がぼろぼろで、もう飛べないみたい」
「そうですか……」
そう返し、医者は手早く処置を施していく。まるで初めてではないみたいに。
あっという間に小鳥の羽には包帯が巻かれていった。
小鳥も始めこそ消毒液が沁みるのかぴいぴいと鳴いていたが、やがて、大人しくなる。
「はい、できました。この子はしばらくこちらで預かります」
「えっ、そうなの?」
「もちろんです。部屋に連れ帰って、細菌などが入っても困りますからね」
「はあい……」
また会いたくなれば、いつでも医務室に来てください、と言われ、僕たちは部屋を出た。
ラヴィオと互いに顔を見合わせる。
「ねえ、あの小鳥、真っ白だったね」
「そうですね」
「シロ、って名前、どう?」
「えっ名前ですか?」
怪訝そうな顔をされた。
「そう、呼ぶのに、いつまでも小鳥、なんてかわいそうでしょ。あの子は……そうだな、もう、自然に帰れるのかも分からないし」
「王子……」
「親がいないから、餌を採る方法も何も、教えてあげられないからね、僕たちは」
そう言って僕たちは医務室の前で別れる。また明日、シロを見舞うことを約束して。
それから何日か経ち、シロの羽からは包帯が外れ、部屋に連れ帰ってもよいことになった。
僕はとりあえずラヴィオを呼び、城の入り口から堂々と外に出る。
「兵士長には、なんて?」
「早く戻ってこいって言われた」
シロを自然に帰したい、と僕は素直に兵士長に告げると、案外あっさり許してくれた。ただし、あまり遠くに行くことは許さないと。
僕たちは、城から10mほどしか離れていない場所で、そっと手を広げる。
シロは僕たちを見上げていた。そして、ぴいと鳴いた。
「……シロ、おうちはどこ?」
僕は尋ねるが、もちろん返事が返ってくるはずもなく。
「でもねえ、僕たちは、これ以上は外には行けないんだよ。シロに頑張って帰ってもらわなきゃ」
しかし一向にシロが飛び立つ気配もない。
「……シロ、僕たちと一緒に、お城に住む?」
そう尋ねると、シロはぴいと鳴いた。
「あれ、ラヴィオ、シロってもしかして僕の言葉わかってる?」
「……たまたまじゃないですか?」
「仕方ないなあ、もう」
僕は再び手の中にシロを包む。
空いた手でラヴィオの手を握った。
「兵士長に今度は、シロを飼ってもいいか、聞かなきゃ」
「絶対反対されると思いますけどね。どこか適当な所に置いてこい、みたいな」
「あっ何それ、ラヴィオの兵士長の真似、すごい似てる」
僕たちは元来た道を戻る。シロも一緒に。
僕は、自分の部屋で飼うから、執務も疎かにしないからと兵士長を必死に説得し、何とか城の武器庫で飼うことを許してもらえた。ちょっとかわいそうだが。
けどシロは他の兵士たちにもよく懐き、すぐに城中に解放され、皆のアイドルとなった。
「……そういえば、ラヴィオ。シロの姿が見えないんだよね」
僕は、ラヴィオがハイラルから戻ってきた時、泣きそうになりながら問う。
ロウラル城は完全にダンジョンと成り果てているし、シロもそれに巻き込まれたのか、あるいは、異形のものになってしまったのか。
「シロ……無事かな……」
「ああ、大丈夫ですよ」
そう言うと、ラヴィオの背中から、シロが飛び出した。
もう随分大きくなっている。
「シロ! よかったー……!」
「私がハイラルに行く時に、一緒についてきてくれたんですよ。一緒に勇者クンを応援してたんです」
「もう、本当に心配したんだから!」
僕はぎゅっとシロを抱きしめた。シロは苦しげにぴいと鳴く。
ああでも、無事でよかった。ずっとラヴィオを護っていてくれたのかもしれない。
「2人とも、本当に無事でよかった!」
僕はついでにラヴィオも抱きしめた。
******
シロがかわいい
世界が完全に闇に覆われてしまうより前に、僕たちは2人で、こっそり城を抜け出したことがあった。
「わー、危ない」
「よく兵士長に見つかりませんでしたね……」
「ん、僕、兵士長の行動パターン熟知してるからね」
「その情熱、もっと他のことに使えません?」
僕はある日、ラヴィオを誘って、城の外に出た。
ラヴィオなら外に出るのは日常茶飯事だろうが、僕はあまり出られない。
外を魔物がうろついているわけでも何でもないのだが、最近、山の方で地割れが起きたらしく、危険だといわれていた。
「ふーん……この辺りは、意外と普通なんだね」
外に出るのは久しぶりだ。が、美化されている思い出と比較しても、城の周りはあまり変わっていなかった。
兵士の目をかいくぐって外に出る。村の方に行けば見回りの兵士がいるはずなので、行くとしたら反対の方だ。
「どこへ行くんです?」
「んー、散歩だよ。あてのないヤツ」
僕はラヴィオの手を引き、歩き出す。空が淀んでいるので、あまり新鮮な空気という感じもしない。
けれど、危険な感じはしなかった。護身用に僕は杖、ラヴィオは剣を持ってきているが、どうやら必要もなさそうだ。
「僕もラヴィオもいなかったら怪しまれるし、夕食までには絶対帰ろうね」
今は昼を少し過ぎた頃だ。今日は珍しく、ユガから与えられた課題をすごい速度で終わらせて提出してきたのだが、怪しまれないだろうか?
いや、ユガにはもうばれてるだろうな。でもユガのことだから、兵士長に言うなんてことはないだろう。
「一体どこまで行くつもりなんですか……」
「少し、ラヴィオと座って話せる所までは、行きたいかな」
そう言いながら、水辺にたどり着く。
心なしか、水が濁っている気がする。これも、トライフォースがなくなったせいだろうか?
「王子、あれ」
不意にラヴィオが言い、その指の先を見る。
「小鳥……?」
鳥が地面にいて、ぴいぴいと鳴いている。
僕たちは慌てて駆け寄った。
「かわいそうに。羽を怪我している」
「この子の親は……」
「……あ、あれ」
少し離れた所に、鳥が落ちていた。
落ちていた、というのは、的確な表現だろう。その鳥は、もう動かなかった。
「何かにやられたのかな……子どもを庇って……?」
「……城でなら、手当てしてやれるかもしれません」
「待って、この子の親を」
僕は柔らかそうな地面を掘り、その小鳥の親を埋める。
近くで花を摘み、そっとその地面の上に載せる。
「辺りに、他の子どもはいないようですね」
「そっか……じゃあ、早く戻ろう」
僕はラヴィオの手にそっと小鳥を載せる。
怯えているようには見えたが、逃げ出す術もないのだろう、じっとしている。
小鳥はこのロウラルでよく見かける種だった。
「ねえ、この子を連れて帰ったらきっと、兵士長に怒られるよね」
「ベランダにやってきた、ということにしましょう」
「そうだね。そうしよっか」
僕らは元来た道を戻り、裏道から城内へ戻る。
そのまま医務室へと直行した。
「この子、治せる? 鳥なんだけど」
「鳥?」
保健医は嫌な顔をする。
普段は腹痛の兵士を診たり、怪我の応急処置などもしてくれるが、やはり鳥は専門外なのだろう。
「王子、この鳥をどこで?」
「えーとね、ベランダに落ちてきたの。かわいそうに、羽がぼろぼろで、もう飛べないみたい」
「そうですか……」
そう返し、医者は手早く処置を施していく。まるで初めてではないみたいに。
あっという間に小鳥の羽には包帯が巻かれていった。
小鳥も始めこそ消毒液が沁みるのかぴいぴいと鳴いていたが、やがて、大人しくなる。
「はい、できました。この子はしばらくこちらで預かります」
「えっ、そうなの?」
「もちろんです。部屋に連れ帰って、細菌などが入っても困りますからね」
「はあい……」
また会いたくなれば、いつでも医務室に来てください、と言われ、僕たちは部屋を出た。
ラヴィオと互いに顔を見合わせる。
「ねえ、あの小鳥、真っ白だったね」
「そうですね」
「シロ、って名前、どう?」
「えっ名前ですか?」
怪訝そうな顔をされた。
「そう、呼ぶのに、いつまでも小鳥、なんてかわいそうでしょ。あの子は……そうだな、もう、自然に帰れるのかも分からないし」
「王子……」
「親がいないから、餌を採る方法も何も、教えてあげられないからね、僕たちは」
そう言って僕たちは医務室の前で別れる。また明日、シロを見舞うことを約束して。
それから何日か経ち、シロの羽からは包帯が外れ、部屋に連れ帰ってもよいことになった。
僕はとりあえずラヴィオを呼び、城の入り口から堂々と外に出る。
「兵士長には、なんて?」
「早く戻ってこいって言われた」
シロを自然に帰したい、と僕は素直に兵士長に告げると、案外あっさり許してくれた。ただし、あまり遠くに行くことは許さないと。
僕たちは、城から10mほどしか離れていない場所で、そっと手を広げる。
シロは僕たちを見上げていた。そして、ぴいと鳴いた。
「……シロ、おうちはどこ?」
僕は尋ねるが、もちろん返事が返ってくるはずもなく。
「でもねえ、僕たちは、これ以上は外には行けないんだよ。シロに頑張って帰ってもらわなきゃ」
しかし一向にシロが飛び立つ気配もない。
「……シロ、僕たちと一緒に、お城に住む?」
そう尋ねると、シロはぴいと鳴いた。
「あれ、ラヴィオ、シロってもしかして僕の言葉わかってる?」
「……たまたまじゃないですか?」
「仕方ないなあ、もう」
僕は再び手の中にシロを包む。
空いた手でラヴィオの手を握った。
「兵士長に今度は、シロを飼ってもいいか、聞かなきゃ」
「絶対反対されると思いますけどね。どこか適当な所に置いてこい、みたいな」
「あっ何それ、ラヴィオの兵士長の真似、すごい似てる」
僕たちは元来た道を戻る。シロも一緒に。
僕は、自分の部屋で飼うから、執務も疎かにしないからと兵士長を必死に説得し、何とか城の武器庫で飼うことを許してもらえた。ちょっとかわいそうだが。
けどシロは他の兵士たちにもよく懐き、すぐに城中に解放され、皆のアイドルとなった。
「……そういえば、ラヴィオ。シロの姿が見えないんだよね」
僕は、ラヴィオがハイラルから戻ってきた時、泣きそうになりながら問う。
ロウラル城は完全にダンジョンと成り果てているし、シロもそれに巻き込まれたのか、あるいは、異形のものになってしまったのか。
「シロ……無事かな……」
「ああ、大丈夫ですよ」
そう言うと、ラヴィオの背中から、シロが飛び出した。
もう随分大きくなっている。
「シロ! よかったー……!」
「私がハイラルに行く時に、一緒についてきてくれたんですよ。一緒に勇者クンを応援してたんです」
「もう、本当に心配したんだから!」
僕はぎゅっとシロを抱きしめた。シロは苦しげにぴいと鳴く。
ああでも、無事でよかった。ずっとラヴィオを護っていてくれたのかもしれない。
「2人とも、本当に無事でよかった!」
僕はついでにラヴィオも抱きしめた。
******
シロがかわいい
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