黄金を求めし者(神トラ2/ラヴィオ)
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その後、トライフォースが再び聖地に安置されたロウラル王国は、これまでにない程の速度で復興を遂げていくことになる。
空には太陽が照り、亀裂の入っていた大地は再び繋がった。村の人々も諍いをやめ、異形のものとなっていた城の兵士たちも、その間の記憶が無かったかのように振る舞っていた。
全ては悪夢で、霧のように、人々の記憶から消え去っていった。
「……なんか、不思議だね、ラヴィオ」
「なにがです?」
陽の当たる屋上で、全てが始まった場所で、僕たちは並んで座っていた。
眼下には、すっかり元通りになった街々。――いや、僕はその頃のことを知らないから、これは両親が見ると懐かしいものなんだろうか。
「皆、もう、あの頃のことを忘れちゃったのかな」
時間にしては、まだ数ヶ月というところだろうか。それでも皆は、トライフォースがなく、終焉を見た世界のことを忘れてしまったようで。
城の人々にいたっては、ユガという存在すら、忘却してしまったらしい。
誰に聞いても、もう、ユガのことは覚えていなかった。
「何故でしょうね。トライフォースの計らいでしょうか?」
「えっ、そうなのかな?」
「私たちもきっと、そろそろ、ユガのことを忘れてしまうのでしょうね」
その実、僕たちも、所々思い出せないこともあった。何を思い出せないのかも、もう分からないのだけれど。
あんな経験は二度とないからと思って書き留めようと思ってみても、文字にすることすらままならなかった。
「……そういえば、光の道も、閉じてしまったもんね」
あの日僕たちは、トライフォースが聖地に再び帰ってきたのを見届け、光の道を後にし、とりあえずは眠りに就いたのだった。
翌日以降は、次々と元に戻る兵士たちと会議を重ね、この世界を徐々に復興させていくことにした。
それからふと思い出して2人で屋上に上った時、聖地への道は、もう閉ざされていたのだ。
「今後は、トライフォースを破壊することも、奪い合うこともないように、ということでしょうかね?」
「それならそれで、いいよね」
そうだ、この世界には、トライフォースという存在が無い、と思えることが一番幸せ。
もう、あんなことは起きてほしくない。起こさない。
そんなものに頼ることなく、この世界を平和に保ち続けるのが、僕の役目であると思うのだ。
「……ねえ、ラヴィオ。ラヴィオもいつか、ハイラルの勇者と共に戦ったことを、忘れちゃうのかな」
ラヴィオがこちらを見る気配がした。
「ラヴィオは、言ってたよね、最後に。彼のようになりたかった、って」
「……はい」
「でもラヴィオは、僕を救ってくれたじゃないか」
ああもう、それでも、勇者の名前も思い出せないのだ。
「彼が、向こうの世界を救ったように。ラヴィオは僕を救ってくれた」
「……レイシ王子」
「それでいいじゃないか。だってラヴィオは、僕の世界だ」
僕は少し笑う。
つられてラヴィオも笑った。
「――そう言ってくれると、嬉しいです」
ラヴィオと彼はよく似ていた。そして、彼らは世界を救ってくれた。
過ちを犯した僕とユガを救い、そして、赦してくれた。
「……でもね、ラヴィオ」
「はい?」
「僕はもう、あの勇者の名前も、王女の名前も、思い出せないんだ」
少しだけ思い出すのは、向こうの世界が、今のこの世界のように眩しかったこと。
「ええ、私もです」
僕たちは空を見上げる。トライフォースを分け与えてくれた彼らは、今も元気でいるだろうか?
きっとこのまま思い出すこともなく、忘却を続ける僕らは、二度と過ちを繰り返さないと、誓えるだろうか?
「ラヴィオ、ありがとう。僕を救ってくれて。……これからもどうか、隣で、僕を支え続けていて」
「はい、もちろんです」
ラヴィオの手が伸びてきたので、僕は握り返す。
「レイシ王子、私のいとしい人」
「ラヴィオ、ずっとそばにいて」
「あなたは私の世界です」
いとしい人と共に生きる世界が、こんなにも幸せだなんてことを、僕は今まで、ちゃんと認識していなかったのかもしれない。
どうかこの世界が、途切れることなく続きますように。
空には太陽が照り、亀裂の入っていた大地は再び繋がった。村の人々も諍いをやめ、異形のものとなっていた城の兵士たちも、その間の記憶が無かったかのように振る舞っていた。
全ては悪夢で、霧のように、人々の記憶から消え去っていった。
「……なんか、不思議だね、ラヴィオ」
「なにがです?」
陽の当たる屋上で、全てが始まった場所で、僕たちは並んで座っていた。
眼下には、すっかり元通りになった街々。――いや、僕はその頃のことを知らないから、これは両親が見ると懐かしいものなんだろうか。
「皆、もう、あの頃のことを忘れちゃったのかな」
時間にしては、まだ数ヶ月というところだろうか。それでも皆は、トライフォースがなく、終焉を見た世界のことを忘れてしまったようで。
城の人々にいたっては、ユガという存在すら、忘却してしまったらしい。
誰に聞いても、もう、ユガのことは覚えていなかった。
「何故でしょうね。トライフォースの計らいでしょうか?」
「えっ、そうなのかな?」
「私たちもきっと、そろそろ、ユガのことを忘れてしまうのでしょうね」
その実、僕たちも、所々思い出せないこともあった。何を思い出せないのかも、もう分からないのだけれど。
あんな経験は二度とないからと思って書き留めようと思ってみても、文字にすることすらままならなかった。
「……そういえば、光の道も、閉じてしまったもんね」
あの日僕たちは、トライフォースが聖地に再び帰ってきたのを見届け、光の道を後にし、とりあえずは眠りに就いたのだった。
翌日以降は、次々と元に戻る兵士たちと会議を重ね、この世界を徐々に復興させていくことにした。
それからふと思い出して2人で屋上に上った時、聖地への道は、もう閉ざされていたのだ。
「今後は、トライフォースを破壊することも、奪い合うこともないように、ということでしょうかね?」
「それならそれで、いいよね」
そうだ、この世界には、トライフォースという存在が無い、と思えることが一番幸せ。
もう、あんなことは起きてほしくない。起こさない。
そんなものに頼ることなく、この世界を平和に保ち続けるのが、僕の役目であると思うのだ。
「……ねえ、ラヴィオ。ラヴィオもいつか、ハイラルの勇者と共に戦ったことを、忘れちゃうのかな」
ラヴィオがこちらを見る気配がした。
「ラヴィオは、言ってたよね、最後に。彼のようになりたかった、って」
「……はい」
「でもラヴィオは、僕を救ってくれたじゃないか」
ああもう、それでも、勇者の名前も思い出せないのだ。
「彼が、向こうの世界を救ったように。ラヴィオは僕を救ってくれた」
「……レイシ王子」
「それでいいじゃないか。だってラヴィオは、僕の世界だ」
僕は少し笑う。
つられてラヴィオも笑った。
「――そう言ってくれると、嬉しいです」
ラヴィオと彼はよく似ていた。そして、彼らは世界を救ってくれた。
過ちを犯した僕とユガを救い、そして、赦してくれた。
「……でもね、ラヴィオ」
「はい?」
「僕はもう、あの勇者の名前も、王女の名前も、思い出せないんだ」
少しだけ思い出すのは、向こうの世界が、今のこの世界のように眩しかったこと。
「ええ、私もです」
僕たちは空を見上げる。トライフォースを分け与えてくれた彼らは、今も元気でいるだろうか?
きっとこのまま思い出すこともなく、忘却を続ける僕らは、二度と過ちを繰り返さないと、誓えるだろうか?
「ラヴィオ、ありがとう。僕を救ってくれて。……これからもどうか、隣で、僕を支え続けていて」
「はい、もちろんです」
ラヴィオの手が伸びてきたので、僕は握り返す。
「レイシ王子、私のいとしい人」
「ラヴィオ、ずっとそばにいて」
「あなたは私の世界です」
いとしい人と共に生きる世界が、こんなにも幸せだなんてことを、僕は今まで、ちゃんと認識していなかったのかもしれない。
どうかこの世界が、途切れることなく続きますように。