黄金を求めし者(神トラ2/ラヴィオ)
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誰かに揺さぶられ、僕はゆっくりと目を覚ます。
「王子……!」
「ラヴィオ……どうして、ここに……」
僕はラヴィオに抱きかかえられていた。
思考が徐々にクリアになっていく。ああ、そうだ、僕は。
「ユガ……ユガは……」
「ユガは、倒れました。勇者クンの力によって」
その言葉で、全てを思い出す。……いや、ラヴィオ?
よく見ると、ラヴィオはラベンダー色のウサギのきぐるみを被っていた。
そういえば昔、そんなのをあげたような……。
「僕は……そうだ、トライフォースを手に入れなければ……!」
握り締めていた杖を頼りに、立ち上がる。
相対するのは勇者リンク。剣を構えるその後ろに、ゼルダ姫がいた。
絵画ではなく、生身の王女。とても美しい。
「勇者クン、待ってください! どうか、僕に、話させてください」
そう言ってラヴィオは僕とリンクの間に割り込み、きぐるみの帽子を脱いだ。
リンクとゼルダ姫は、驚いたようだった。
僕も初めてリンクを見た時に驚いたが、ラヴィオとリンクはよく似ている。
「レイシ王子、」
「ラヴィオ……邪魔すると言うの? 勝手にいなくなって、まさか、ハイラルに行ってリンクの手助けをしていたの?」
「ええ……まあ、そうです」
怒りがこみ上げる。
「そんな……だって、もうすぐで、全てのトライフォースが揃う筈だったのに……」
「レイシ王子、あなたは、ユガによって絵にされていたのです。そして、ユガに取り込まれていました」
「!」
その言葉に衝撃を受ける。
まさか、あの闇は、ユガだったのか。
「何で……そんな……ユガまで、僕を裏切って……?」
ラヴィオの予感は、当たっていたというのか?
ずっと前にラヴィオは、ユガが僕を裏切ると言っていたが、それは本当になったのか。
「でも……ラヴィオも、僕を裏切ったじゃないか! 無言でこの世界からいなくなって、挙句の果てに、僕とユガに敵対するような真似までして!」
「私は、王子とユガの両方を助けられる方法を知りませんでした。だから……勇者クンに味方して、せめて王子だけでも救ってもらおうと」
ラヴィオは小さく息継ぎをして続ける。
「王子、どうか、もうやめましょう。ユガも倒れたことですし」
「嫌だ! このままだと、このロウラルは――!」
「レイシ王子、それは、あなたの両親が望まれた平和を壊すことです。再び、トライフォースを巡る争いを起こすことです!」
「……っ!」
僕はラヴィオに抱きしめられ、気づかされた。
――そうだ、それは。
「……ラヴィオ……」
「仕方のないことです……この世界が崩壊してしまうのなら、それは、この世界の運命。もうきっと、ずっと昔から、決まっていたことです。でも、王子」
そんな悲しい運命など、信じない。信じたくなかった。
けれども、それは。
「もう二度と、私はあなたを、独りにはしません。この世界が終わるその時まで、あなたと共にいると、誓います」
「……っ」
思わず涙が零れる。しかしリンクとゼルダ姫もいるので、あまり泣きたくはない。
「そうか……そうだね。――ラヴィオ、ありがとう」
ラヴィオの言うことは正論だった。僕は再び、過ちを犯そうとしていたのだ。
「レイシ王子……」
「リンクと、ゼルダ姫も、ありがとう。僕は間違っていました」
ラヴィオの手を離し、毅然と2人に向かう。
「僕たちの世界を護ろうとして、あなたたちを巻き込むなんて、おかしな話だった。……こちらへ、来てください」
僕は王の間の外へ、彼らをいざなう。
そうだ、間違っていた。それは、両親の望まざることだ。
何のためにトライフォースを壊したのか。それが、どういう結果を招くのか。
僕は知っていたはずだし、両親もきっと知っていて、そういう選択をしたのだ。
「リンク、腕輪を」
ラヴィオの腕輪は、リンクに託されていた。
きっとこの腕輪が、リンクを幾度も護ったのだろう。そして今、僕たちはここにいる。
「この腕輪に残った力で、きっとあなたたちを、ハイラルの世界に戻せる筈……」
石版は僅かに光っていた。しかし、きっともうじき扉は閉まるだろう。
魔王は再び封印された。両の世界を繋ぐ必要は、もうない。
「……たくさん、迷惑をかけました」
「レイシ王子……」
「ゼルダ姫、あなたはどうか、間違わないで、僕たちのように。美しい世界を、護って」
僕はそう言って、扉を開く。最初で最後、ハイラルの世界をかいま見た。
そこは美しい世界だった。
広大な緑が広がり、色とりどりの花が咲き、小鳥がさえずる。
空は青く澄み渡り、いくばくかの白い雲が浮いて、太陽が光っていた。
嗚呼、眩しい。あの世界は。
「……リンク、どうも、ありがとう」
最後にお礼を言い、光の世界へ消えていった2人の背中を見送り、僕は扉を閉じる。
いつの間にか、涙が流れていた。
「王子」
「ラヴィオ……僕は、ばかだったよ。あんな眩しい世界で、僕たちが生きていけるわけがない。あんな世界で、目なんかあけられないよ」
泣きながら、笑いながら、ラヴィオを振り返る。
すると、強く抱きしめられた。
「ラヴィオ……?」
「王子……どうか、許してください。あなたを護れなかった私を」
「……? 何それ」
僕は少し笑う。
「あなたの望む世界を創れず、裏切ってしまった。家来として失格です」
ラヴィオの声が、あまりに悲痛で。
僕がさっき詰ったのが、だいぶ堪えているらしかった。
「……でもラヴィオは、僕が堕ちてしまうのを、防ごうとしてくれたんだよね」
もし仮にこの世界にトライフォースが掲げられたとして、ハイラル王国は今のロウラル王国のようになってしまっていただろう。ユガに絆された僕は、それでもいいと思ったかもしれない。
でも、ラヴィオが言ったように、それは許されないことだ。例え僕が、ロウラル王国の王子であっても。
「ありがとう。それに……僕は本当に、ユガに裏切られてしまったからね」
「少しだけ、間に合わなかったんです。だから、全てを勇者クンに託すしかなかった」
「ずっと、向こうの世界で、戦ってくれていたんでしょう? 僕は寂しかったけどね……でもラヴィオは、正当な歴史を、取り戻すために」
その時だった。
僕たちのいる場所に強い風が吹きぬけ、飛ばされそうになる。
「なっ、」
「王子、しっかり掴まってください!」
僕たちは互いに掴まり合い、その強風に耐える。
暫くして風がやむと、そこには、驚くほどの光が湛えられていた。
「これは……」
それは、トライフォースだった。
空を見上げる。空には、徐々に光が差し始めていた。
「どうして……リンク、ゼルダ姫……」
先ほどまで石版のあった位置には、トライフォースが浮かんでいる。それはきっと、2人が願い、このロウラル王国に分けてくれたものに違いなかった。
再び涙が流れる。僕は膝から崩れ落ちた。
「ありがとう……!」
そうしてこの王国は、再び光を取り戻す、のかもしれなかった。
「王子……!」
「ラヴィオ……どうして、ここに……」
僕はラヴィオに抱きかかえられていた。
思考が徐々にクリアになっていく。ああ、そうだ、僕は。
「ユガ……ユガは……」
「ユガは、倒れました。勇者クンの力によって」
その言葉で、全てを思い出す。……いや、ラヴィオ?
よく見ると、ラヴィオはラベンダー色のウサギのきぐるみを被っていた。
そういえば昔、そんなのをあげたような……。
「僕は……そうだ、トライフォースを手に入れなければ……!」
握り締めていた杖を頼りに、立ち上がる。
相対するのは勇者リンク。剣を構えるその後ろに、ゼルダ姫がいた。
絵画ではなく、生身の王女。とても美しい。
「勇者クン、待ってください! どうか、僕に、話させてください」
そう言ってラヴィオは僕とリンクの間に割り込み、きぐるみの帽子を脱いだ。
リンクとゼルダ姫は、驚いたようだった。
僕も初めてリンクを見た時に驚いたが、ラヴィオとリンクはよく似ている。
「レイシ王子、」
「ラヴィオ……邪魔すると言うの? 勝手にいなくなって、まさか、ハイラルに行ってリンクの手助けをしていたの?」
「ええ……まあ、そうです」
怒りがこみ上げる。
「そんな……だって、もうすぐで、全てのトライフォースが揃う筈だったのに……」
「レイシ王子、あなたは、ユガによって絵にされていたのです。そして、ユガに取り込まれていました」
「!」
その言葉に衝撃を受ける。
まさか、あの闇は、ユガだったのか。
「何で……そんな……ユガまで、僕を裏切って……?」
ラヴィオの予感は、当たっていたというのか?
ずっと前にラヴィオは、ユガが僕を裏切ると言っていたが、それは本当になったのか。
「でも……ラヴィオも、僕を裏切ったじゃないか! 無言でこの世界からいなくなって、挙句の果てに、僕とユガに敵対するような真似までして!」
「私は、王子とユガの両方を助けられる方法を知りませんでした。だから……勇者クンに味方して、せめて王子だけでも救ってもらおうと」
ラヴィオは小さく息継ぎをして続ける。
「王子、どうか、もうやめましょう。ユガも倒れたことですし」
「嫌だ! このままだと、このロウラルは――!」
「レイシ王子、それは、あなたの両親が望まれた平和を壊すことです。再び、トライフォースを巡る争いを起こすことです!」
「……っ!」
僕はラヴィオに抱きしめられ、気づかされた。
――そうだ、それは。
「……ラヴィオ……」
「仕方のないことです……この世界が崩壊してしまうのなら、それは、この世界の運命。もうきっと、ずっと昔から、決まっていたことです。でも、王子」
そんな悲しい運命など、信じない。信じたくなかった。
けれども、それは。
「もう二度と、私はあなたを、独りにはしません。この世界が終わるその時まで、あなたと共にいると、誓います」
「……っ」
思わず涙が零れる。しかしリンクとゼルダ姫もいるので、あまり泣きたくはない。
「そうか……そうだね。――ラヴィオ、ありがとう」
ラヴィオの言うことは正論だった。僕は再び、過ちを犯そうとしていたのだ。
「レイシ王子……」
「リンクと、ゼルダ姫も、ありがとう。僕は間違っていました」
ラヴィオの手を離し、毅然と2人に向かう。
「僕たちの世界を護ろうとして、あなたたちを巻き込むなんて、おかしな話だった。……こちらへ、来てください」
僕は王の間の外へ、彼らをいざなう。
そうだ、間違っていた。それは、両親の望まざることだ。
何のためにトライフォースを壊したのか。それが、どういう結果を招くのか。
僕は知っていたはずだし、両親もきっと知っていて、そういう選択をしたのだ。
「リンク、腕輪を」
ラヴィオの腕輪は、リンクに託されていた。
きっとこの腕輪が、リンクを幾度も護ったのだろう。そして今、僕たちはここにいる。
「この腕輪に残った力で、きっとあなたたちを、ハイラルの世界に戻せる筈……」
石版は僅かに光っていた。しかし、きっともうじき扉は閉まるだろう。
魔王は再び封印された。両の世界を繋ぐ必要は、もうない。
「……たくさん、迷惑をかけました」
「レイシ王子……」
「ゼルダ姫、あなたはどうか、間違わないで、僕たちのように。美しい世界を、護って」
僕はそう言って、扉を開く。最初で最後、ハイラルの世界をかいま見た。
そこは美しい世界だった。
広大な緑が広がり、色とりどりの花が咲き、小鳥がさえずる。
空は青く澄み渡り、いくばくかの白い雲が浮いて、太陽が光っていた。
嗚呼、眩しい。あの世界は。
「……リンク、どうも、ありがとう」
最後にお礼を言い、光の世界へ消えていった2人の背中を見送り、僕は扉を閉じる。
いつの間にか、涙が流れていた。
「王子」
「ラヴィオ……僕は、ばかだったよ。あんな眩しい世界で、僕たちが生きていけるわけがない。あんな世界で、目なんかあけられないよ」
泣きながら、笑いながら、ラヴィオを振り返る。
すると、強く抱きしめられた。
「ラヴィオ……?」
「王子……どうか、許してください。あなたを護れなかった私を」
「……? 何それ」
僕は少し笑う。
「あなたの望む世界を創れず、裏切ってしまった。家来として失格です」
ラヴィオの声が、あまりに悲痛で。
僕がさっき詰ったのが、だいぶ堪えているらしかった。
「……でもラヴィオは、僕が堕ちてしまうのを、防ごうとしてくれたんだよね」
もし仮にこの世界にトライフォースが掲げられたとして、ハイラル王国は今のロウラル王国のようになってしまっていただろう。ユガに絆された僕は、それでもいいと思ったかもしれない。
でも、ラヴィオが言ったように、それは許されないことだ。例え僕が、ロウラル王国の王子であっても。
「ありがとう。それに……僕は本当に、ユガに裏切られてしまったからね」
「少しだけ、間に合わなかったんです。だから、全てを勇者クンに託すしかなかった」
「ずっと、向こうの世界で、戦ってくれていたんでしょう? 僕は寂しかったけどね……でもラヴィオは、正当な歴史を、取り戻すために」
その時だった。
僕たちのいる場所に強い風が吹きぬけ、飛ばされそうになる。
「なっ、」
「王子、しっかり掴まってください!」
僕たちは互いに掴まり合い、その強風に耐える。
暫くして風がやむと、そこには、驚くほどの光が湛えられていた。
「これは……」
それは、トライフォースだった。
空を見上げる。空には、徐々に光が差し始めていた。
「どうして……リンク、ゼルダ姫……」
先ほどまで石版のあった位置には、トライフォースが浮かんでいる。それはきっと、2人が願い、このロウラル王国に分けてくれたものに違いなかった。
再び涙が流れる。僕は膝から崩れ落ちた。
「ありがとう……!」
そうしてこの王国は、再び光を取り戻す、のかもしれなかった。