君が好きだ(オムニバス)
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僕はその日、仗助の家を訪れていた。
共に大きな封筒を手にし緊張している。
「……開けるか」
「うん」
僕たちは中の書類を破かないよう慎重に封筒を開ける。
そしてたった一枚入っていた紙を取り出した。僕は声も出なかった。
「うわ! やった!」
仗助が喜ぶ。もうそれ以上聞かなくても分かる。
「仗助……おめでとう」
「澪士は!?」
「……不合格だって」
僕たちは今、共に大学の受験結果を見ているところだ。
同じ大学を受け、同じ様に結果通知が届いたが、仗助は合格で、僕は不合格のようだった。
「あ……」
一気に表情を暗くした僕の前ではしゃぎすぎたことを悔いているのか、仗助の表情も暗くなった。
「……仗助が気にすることじゃないよ。大体、仗助は合格したんだから、もっと喜んだらいいのに」
「いや、でも……」
「僕のことは気にしないで。……でもさ」
僕たちが受けたのは遠方の大学だ。実家からでは通えないから、一緒に都会に出て行って二人で暮らそう、と話していた。
僕たちはこっそり付き合っていたが親は当然知らない。けど大学に通うためと言えば互いの両親もいいと言うだろう、という浅はかな考えだった。
「僕たち、別れよう」
「えっ……」
思わず声が震えた。仗助は固まる。
でも、僕は初めから決めていた。もし僕だけ落ちることになって、仗助の足を引っ張るようなことが起きたら別れを切り出そうと。
「別れるって、何で」
「だって僕たちはエンキョリレンアイになるでしょ。僕は受験勉強をしなきゃならないし、仗助は大学に入って忙しいだろうし。距離も遠くなって、きっと殆ど会えないし……」
「いや、絶対に別れねぇ」
「!」
しかし仗助は強い瞳で僕に言う。
「俺はお前がいいんだよ、澪士。もう何回も言ってるだろ」
「仗助……」
「確かに、俺たちはどっちも忙しくなる。俺が夏休みに入って帰省するまでは多分会えないだろうけど、俺は絶対に澪士とは別れねぇから」
そんなに引き留めないでほしい。仗助にそう言われると決心が揺らいでしまう。
「でも僕は、仗助の邪魔にはなりたくないから……」
「邪魔なんて言ったことないだろ? 大体、もし今澪士と別れたら、その方が逆に気になるっての」
「……」
「じゃあ一応聞くけど、澪士、お前は俺と別れたいのか」
「!」
僕は答えに詰まる。ここで別れたい、と言えば、もしかしたら仗助には殴られるかもしれないが、別れられるのだろうか。その方が仗助のためだろうか。
けどそんな嘘は吐けず、ぽろりと涙が零れた。
「別れたく……ない。仗助と別れるなんて、想像もできない」
「じゃあそれでいいだろ。俺もお前も別れたくないと思ってんだから」
半ば呆れたように言われる。僕の暴走ぶりに呆れているのだろう。
「……ごめん、仗助」
「何で謝るんだよ?」
「仗助のこと、好きになってよかった」
こんな馬鹿なことを言っても引き留めてくれる。1年も遠距離で付き合い続けることをいとも簡単に許容してくれる。
この人と付き合えていることが奇跡みたいだった。いや実際に奇跡なのだろう。
「ありがとう、仗助」
「遠ざかる程想いが募る、とも言うしな。俺たちなら大丈夫だって」
「うん、そうだね」
「その代わり、俺が向こうに行くまでは沢山遊ぼうぜ」
「うん」
僕は不合格通知を封筒にしまう。あとは親を説得するだけだ。来年も大学を受験させてくれと。今度は必ず合格するからと。
「次はもっと頑張るから」
「ああ」
「仗助に必ず追い付いてみせるから、待ってて」
僕たちは握った拳をぶつけあう。これがいつでも約束の証だった。
遠ざかる程想いが募る///恋人を思う気持ちは、遠く離れたり、仲を引き裂かれたりすると、かえって強くなることをいう
共に大きな封筒を手にし緊張している。
「……開けるか」
「うん」
僕たちは中の書類を破かないよう慎重に封筒を開ける。
そしてたった一枚入っていた紙を取り出した。僕は声も出なかった。
「うわ! やった!」
仗助が喜ぶ。もうそれ以上聞かなくても分かる。
「仗助……おめでとう」
「澪士は!?」
「……不合格だって」
僕たちは今、共に大学の受験結果を見ているところだ。
同じ大学を受け、同じ様に結果通知が届いたが、仗助は合格で、僕は不合格のようだった。
「あ……」
一気に表情を暗くした僕の前ではしゃぎすぎたことを悔いているのか、仗助の表情も暗くなった。
「……仗助が気にすることじゃないよ。大体、仗助は合格したんだから、もっと喜んだらいいのに」
「いや、でも……」
「僕のことは気にしないで。……でもさ」
僕たちが受けたのは遠方の大学だ。実家からでは通えないから、一緒に都会に出て行って二人で暮らそう、と話していた。
僕たちはこっそり付き合っていたが親は当然知らない。けど大学に通うためと言えば互いの両親もいいと言うだろう、という浅はかな考えだった。
「僕たち、別れよう」
「えっ……」
思わず声が震えた。仗助は固まる。
でも、僕は初めから決めていた。もし僕だけ落ちることになって、仗助の足を引っ張るようなことが起きたら別れを切り出そうと。
「別れるって、何で」
「だって僕たちはエンキョリレンアイになるでしょ。僕は受験勉強をしなきゃならないし、仗助は大学に入って忙しいだろうし。距離も遠くなって、きっと殆ど会えないし……」
「いや、絶対に別れねぇ」
「!」
しかし仗助は強い瞳で僕に言う。
「俺はお前がいいんだよ、澪士。もう何回も言ってるだろ」
「仗助……」
「確かに、俺たちはどっちも忙しくなる。俺が夏休みに入って帰省するまでは多分会えないだろうけど、俺は絶対に澪士とは別れねぇから」
そんなに引き留めないでほしい。仗助にそう言われると決心が揺らいでしまう。
「でも僕は、仗助の邪魔にはなりたくないから……」
「邪魔なんて言ったことないだろ? 大体、もし今澪士と別れたら、その方が逆に気になるっての」
「……」
「じゃあ一応聞くけど、澪士、お前は俺と別れたいのか」
「!」
僕は答えに詰まる。ここで別れたい、と言えば、もしかしたら仗助には殴られるかもしれないが、別れられるのだろうか。その方が仗助のためだろうか。
けどそんな嘘は吐けず、ぽろりと涙が零れた。
「別れたく……ない。仗助と別れるなんて、想像もできない」
「じゃあそれでいいだろ。俺もお前も別れたくないと思ってんだから」
半ば呆れたように言われる。僕の暴走ぶりに呆れているのだろう。
「……ごめん、仗助」
「何で謝るんだよ?」
「仗助のこと、好きになってよかった」
こんな馬鹿なことを言っても引き留めてくれる。1年も遠距離で付き合い続けることをいとも簡単に許容してくれる。
この人と付き合えていることが奇跡みたいだった。いや実際に奇跡なのだろう。
「ありがとう、仗助」
「遠ざかる程想いが募る、とも言うしな。俺たちなら大丈夫だって」
「うん、そうだね」
「その代わり、俺が向こうに行くまでは沢山遊ぼうぜ」
「うん」
僕は不合格通知を封筒にしまう。あとは親を説得するだけだ。来年も大学を受験させてくれと。今度は必ず合格するからと。
「次はもっと頑張るから」
「ああ」
「仗助に必ず追い付いてみせるから、待ってて」
僕たちは握った拳をぶつけあう。これがいつでも約束の証だった。
遠ざかる程想いが募る///恋人を思う気持ちは、遠く離れたり、仲を引き裂かれたりすると、かえって強くなることをいう