君が好きだ(オムニバス)
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いつものようにカイツと共にラバナスタの街を歩いていると、1人、膝に顔を埋めて座り込んでいる子供を見つけた。いや、子供といっても俺と同じくらいか。
ダウンタウンでは見かけたことがない。だったら表の世界の子だろうか。とはいえあまり見たことのない服装だ。
そんなことを考えながらじっと見ていると、その子はぱっと顔を上げた。
「!」
「あ……」
目が合う。俺は驚く。
何故ならその子が泣いているように見えたからだ。
「あの、」
その子はぐいと目元を袖で拭き取り、立ち上がって俺の方に走ってきた。
「な、何?」
「ここ……どこ?」
「え?」
一瞬何を問われたのか分からず、俺はカイツの方を見る。
「どこって、ラバナスタだけど」
「ラバナスタ……」
「もしかして迷子?」
カイツが後ろから問う。
するとその子は少し黙った後、小さく頷いた。
「でも、一人で来たわけじゃないんだろ?」
「うん、父さんと来た」
「じゃあ、父さんを捜せばいいじゃん。ここにいないで」
「……でも……」
煮え切らない態度に呆れたらしいカイツは一足先にどこかへ行ってしまった。そういえばミゲロさんに呼ばれているとか言っていたな。また荷物運びだろうか。
しかし俺は見捨てることができない。基本的には困っている子供をあまり放っておけない性格なのだ。
「父さん、14時の飛空艇で帰るって……」
「14時って……もう過ぎてるじゃん」
「そう、だから……」
俺は溜息を吐いた。こいつ、何を言っているのだろう。
「いや、だから。こんな所に居たって会えないじゃん。飛空艇の駅行ったり警察に行ったり、すれば?」
「警察……」
「ほんとに何も知らないのか?」
「うん……だって、初めて来たし……」
少し語気を強めて言うと涙ぐむ。確かにラバナスタ出身ではなさそうだ。ラバナスタではこんなことでは生きていけないから。
再び溜息をつくと、俺は言った。
「俺、ヴァン。お前は?」
「えっと……#s#」
「わかった。#s#、俺も一緒に捜してやるから」
「! 本当に?」
「ああ。だから泣くな」
「あ、うん、ごめん」
その子、#s#は再び目元を拭く。本当は俺もそんなに暇ではないのだが、こんな様子を見せられたら放っておくわけにはいかない。
「で、#s#は何しに来たわけ?」
「父さん、商人なんだ。色んな国に行って色々買って、他の国で売ってる。それで……僕は、普段は留守番なんだけど、そろそろ僕も勉強しなきゃいけないから……って」
「ふーん」
そうか。商人なのか。それならば帝国兵も悪いようにはしないだろうな。最悪見つけられなくとも、帝国兵にそれを話せば、もしかすると捜してもらえるかもしれない。
そう思うと俺の気は少し楽になった。俺1人で#s#の運命を背負わなくてもいいのだと。
それから色々捜してみたが、案の定、#s#の父親らしき人は見つからなかった。
#s#は泣きそうな顔をしている。俺は溜息をついた。
「……大丈夫だって、多分」
「大丈夫って……」
「お前の父親も多分、#s#のこと捜してるから」
だから、と言う。
「あそこの帝国兵の所に行って、父親とはぐれた、って言ってこい」
「えっ、僕が!?」
「当たり前だろ」
「でも……」
「俺じゃ多分話聞いてもらえないし。大体、#s#も俺と同い年だろ? それくらい言えなくてどうするんだよ」
「うっ……」
どうやら正論として刺さったらしい。#s#は頷き、帝国兵に近づいていって話を始めた。
俺は日頃の行いのせいで、帝国兵は多分まともに話を聞いてくれない。だからどちらにしろ#s#自身が話す必要がある。
そう思いながらぼーっと眺めていると、#s#は小走りで俺の方に戻ってきた。
「捜してくれるって」
「お、よかったな」
「ありがとう、ヴァン」
#s#は笑う。俺が、一緒に捜してやる、と言った時よりも安心した表情で。
「じゃあさ、#s#」
「ん?」
「俺の普段住んでる所、案内してやるよ。多分#s#は見たことないような所だと思うから」
「えっ、見たことないような所……?」
「大丈夫だって、怖くないから」
どこの国の出身かは知らないが、商人の息子ならダウンタウンのような所は見たことがないだろう。でもきっと、知ってもらうことに悪いことはない筈だ。
俺は言いながら裏道を歩き、ダウンタウンに繋がる扉を開けた。
後ろから着いてくる#s#を時折振り返る。緊張した表情だ。
「ここ……」
「ダウンタウン、って呼ばれてる」
「ヴァン、こんな所に住んでるの?」
「そう」
疑問に思うのも当然だろう。#s#からすれば、下水道に住んでいるようなものだろうから。
すると突然、後ろから聞きなれた声が聞こえた。
「あーヴァン、こんな所に居たの? 捜したよ」
「パンネロ」
振り返るとそこに居るのはパンネロ。
珍しい、この時間はいつも、ミゲロさんの店の手伝いをしているのだが。
「ん? その子誰?」
「あ、こいつ#s#。どっかから来たんだけど、父親とはぐれたんだって」
「どっかってどこよ。あ、私パンネロ。ヴァンの友達。よろしく」
「あ、#s#です、よろしく」
なんか私たちと雰囲気違うよね、とパンネロは言う。
そりゃそうだ、商人の息子だってさ、と俺は答える。
「へえ。そういうの、何て言うんだっけ?」
「そういうのって、何だよ?」
「ああ、そうだ。提灯に釣り鐘だ」
「何だよ、それ」
「ダラン爺に教えてもらった」
パンネロは言葉の意味を教えてくれる気はないらしい。自分で聞けということなのだろう。
「それで、お父さんは見つかりそうなの?」
「帝国の方でも捜してくれるって。多分、すぐに見つかるんじゃないか?」
「ああ、そうなんだ。じゃあきっと大丈夫だね」
そう言ってどこかに行ってしまう。
けれどパンネロの明るい笑顔を見た#s#は少し安心したみたいだった。
「……色んな人がいるんだね」
「色んな人って? そりゃそうだろ」
「なんか……こういう所に住んでる人って、皆、暗いのかと思ってた」
#s#の言葉はあまりに素直すぎて怒る気もなくなる。
けど、自分には関係のない世界だと言わず、こうして直視してくれる。
それだけで俺は嬉しかった。そこら辺の、都合の悪いことを見ないようにする大人たちとは全然違うから。
「#s#、俺たちはずっと友達だから」
「?」
「もし父さんが見つかって家に帰っても、またラバナスタに来たら、遊ぼうな」
「! うん!」
俺がそう言うと#s#はぱっと笑う。その笑顔を見て俺はほっとした。
提灯に釣り鐘///身分があまりに違って、お互いの間が釣り合わないことのたとえ
ダウンタウンでは見かけたことがない。だったら表の世界の子だろうか。とはいえあまり見たことのない服装だ。
そんなことを考えながらじっと見ていると、その子はぱっと顔を上げた。
「!」
「あ……」
目が合う。俺は驚く。
何故ならその子が泣いているように見えたからだ。
「あの、」
その子はぐいと目元を袖で拭き取り、立ち上がって俺の方に走ってきた。
「な、何?」
「ここ……どこ?」
「え?」
一瞬何を問われたのか分からず、俺はカイツの方を見る。
「どこって、ラバナスタだけど」
「ラバナスタ……」
「もしかして迷子?」
カイツが後ろから問う。
するとその子は少し黙った後、小さく頷いた。
「でも、一人で来たわけじゃないんだろ?」
「うん、父さんと来た」
「じゃあ、父さんを捜せばいいじゃん。ここにいないで」
「……でも……」
煮え切らない態度に呆れたらしいカイツは一足先にどこかへ行ってしまった。そういえばミゲロさんに呼ばれているとか言っていたな。また荷物運びだろうか。
しかし俺は見捨てることができない。基本的には困っている子供をあまり放っておけない性格なのだ。
「父さん、14時の飛空艇で帰るって……」
「14時って……もう過ぎてるじゃん」
「そう、だから……」
俺は溜息を吐いた。こいつ、何を言っているのだろう。
「いや、だから。こんな所に居たって会えないじゃん。飛空艇の駅行ったり警察に行ったり、すれば?」
「警察……」
「ほんとに何も知らないのか?」
「うん……だって、初めて来たし……」
少し語気を強めて言うと涙ぐむ。確かにラバナスタ出身ではなさそうだ。ラバナスタではこんなことでは生きていけないから。
再び溜息をつくと、俺は言った。
「俺、ヴァン。お前は?」
「えっと……#s#」
「わかった。#s#、俺も一緒に捜してやるから」
「! 本当に?」
「ああ。だから泣くな」
「あ、うん、ごめん」
その子、#s#は再び目元を拭く。本当は俺もそんなに暇ではないのだが、こんな様子を見せられたら放っておくわけにはいかない。
「で、#s#は何しに来たわけ?」
「父さん、商人なんだ。色んな国に行って色々買って、他の国で売ってる。それで……僕は、普段は留守番なんだけど、そろそろ僕も勉強しなきゃいけないから……って」
「ふーん」
そうか。商人なのか。それならば帝国兵も悪いようにはしないだろうな。最悪見つけられなくとも、帝国兵にそれを話せば、もしかすると捜してもらえるかもしれない。
そう思うと俺の気は少し楽になった。俺1人で#s#の運命を背負わなくてもいいのだと。
それから色々捜してみたが、案の定、#s#の父親らしき人は見つからなかった。
#s#は泣きそうな顔をしている。俺は溜息をついた。
「……大丈夫だって、多分」
「大丈夫って……」
「お前の父親も多分、#s#のこと捜してるから」
だから、と言う。
「あそこの帝国兵の所に行って、父親とはぐれた、って言ってこい」
「えっ、僕が!?」
「当たり前だろ」
「でも……」
「俺じゃ多分話聞いてもらえないし。大体、#s#も俺と同い年だろ? それくらい言えなくてどうするんだよ」
「うっ……」
どうやら正論として刺さったらしい。#s#は頷き、帝国兵に近づいていって話を始めた。
俺は日頃の行いのせいで、帝国兵は多分まともに話を聞いてくれない。だからどちらにしろ#s#自身が話す必要がある。
そう思いながらぼーっと眺めていると、#s#は小走りで俺の方に戻ってきた。
「捜してくれるって」
「お、よかったな」
「ありがとう、ヴァン」
#s#は笑う。俺が、一緒に捜してやる、と言った時よりも安心した表情で。
「じゃあさ、#s#」
「ん?」
「俺の普段住んでる所、案内してやるよ。多分#s#は見たことないような所だと思うから」
「えっ、見たことないような所……?」
「大丈夫だって、怖くないから」
どこの国の出身かは知らないが、商人の息子ならダウンタウンのような所は見たことがないだろう。でもきっと、知ってもらうことに悪いことはない筈だ。
俺は言いながら裏道を歩き、ダウンタウンに繋がる扉を開けた。
後ろから着いてくる#s#を時折振り返る。緊張した表情だ。
「ここ……」
「ダウンタウン、って呼ばれてる」
「ヴァン、こんな所に住んでるの?」
「そう」
疑問に思うのも当然だろう。#s#からすれば、下水道に住んでいるようなものだろうから。
すると突然、後ろから聞きなれた声が聞こえた。
「あーヴァン、こんな所に居たの? 捜したよ」
「パンネロ」
振り返るとそこに居るのはパンネロ。
珍しい、この時間はいつも、ミゲロさんの店の手伝いをしているのだが。
「ん? その子誰?」
「あ、こいつ#s#。どっかから来たんだけど、父親とはぐれたんだって」
「どっかってどこよ。あ、私パンネロ。ヴァンの友達。よろしく」
「あ、#s#です、よろしく」
なんか私たちと雰囲気違うよね、とパンネロは言う。
そりゃそうだ、商人の息子だってさ、と俺は答える。
「へえ。そういうの、何て言うんだっけ?」
「そういうのって、何だよ?」
「ああ、そうだ。提灯に釣り鐘だ」
「何だよ、それ」
「ダラン爺に教えてもらった」
パンネロは言葉の意味を教えてくれる気はないらしい。自分で聞けということなのだろう。
「それで、お父さんは見つかりそうなの?」
「帝国の方でも捜してくれるって。多分、すぐに見つかるんじゃないか?」
「ああ、そうなんだ。じゃあきっと大丈夫だね」
そう言ってどこかに行ってしまう。
けれどパンネロの明るい笑顔を見た#s#は少し安心したみたいだった。
「……色んな人がいるんだね」
「色んな人って? そりゃそうだろ」
「なんか……こういう所に住んでる人って、皆、暗いのかと思ってた」
#s#の言葉はあまりに素直すぎて怒る気もなくなる。
けど、自分には関係のない世界だと言わず、こうして直視してくれる。
それだけで俺は嬉しかった。そこら辺の、都合の悪いことを見ないようにする大人たちとは全然違うから。
「#s#、俺たちはずっと友達だから」
「?」
「もし父さんが見つかって家に帰っても、またラバナスタに来たら、遊ぼうな」
「! うん!」
俺がそう言うと#s#はぱっと笑う。その笑顔を見て俺はほっとした。
提灯に釣り鐘///身分があまりに違って、お互いの間が釣り合わないことのたとえ