君が好きだ(オムニバス)
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「馬鹿だなあ、澪士」
「……るさい」
もうじき陽もその姿を現す頃だというのに、深夜から降り始めたその雨は、まだ止むことを知らないようだった。
池袋の路地裏、人通りの全くないゴミ溜めのようなその場所で、蹲る男と佇む男。
「だから言ったでしょ」
蹲る、というより、正確には膝を抱えて座っていた。深くフードを被っているせいで、立っている男の側からはその表情が見えない。
けれど何を考えているのかは手に取るように分かった。
もうこれを繰り返したのは、両手でも余るから。
「何でさあ、臨也はそうやって、人のことを馬鹿馬鹿言いたいわけ?」
詰るような口調ではない。少し笑っているような声だ。
「俺はそんな悪趣味じゃないけど? 澪士がもう少し考えて行動してくれればって思ってるんだけど」
「……ほんと、酷いな」
膝を抱えていた男は顔を上げ、立っていた方に目を向ける。
「俺の所に来れば、誰にも酷いことはさせないってずっと言ってるのに。それを断り続ける澪士が悪いよ」
「俺は男なんか好きじゃねっつの」
「でも不本意な結果に終わってるよ。今のところね」
その男は非常に美しかった。少し服装を整えれば、女と名乗っても疑いようのない程に。
男は夜中になると、煌々と明かりの煌めく都市部をぶらつくのが趣味なのだが、その度に心ない男に声を掛け続けられる。時には女も。
男も決して弱いわけではない、大抵の喧嘩には勝てる腕っ節がある。しかし束になって来られれば、いくら強くたって難しいものがある。
だから交渉しないか、と立っている男は言ったのだ。
「お前の所に匿ってもらったら、それこそ親に顔向けできないね」
「嫌だなあ。俺のこと何だと思ってるの?」
「けだもの」
一言ばっさりと切り捨てると、座っていた男は立ち上がる。その足取りはまだどこか怪しい。
服は埃と泥まみれで、あまり明るくなってしまうときっと街を歩いて帰ることは難しくなってしまうだろう。
ふら、と歩き出すそれを、薄ら笑いを浮かべていた男が見守っていた。
「愛は小出しにせよ、って言うけれど、俺はそうは思わないね」
「何だよ? いきなり」
「俺、ずーっと昔から澪士のこと好きで、澪士への愛を伝え続けてるけど、まだ尽きる気配がないもの」
「馬鹿じゃねえの?」
馬鹿、と言う方は今度は変わってしまったけれど、形勢逆転という風にはいかないらしい。
路地を出て、朝陽に照らされる男を見ながら、ああ今直ぐ抱きしめて昏睡させてこの世のどこからも奪い去れたら、なんて考えた。
愛は小出しにせよ///愛は細く長く保つことが秘訣で、あまりに激しい愛は永続きしないものだという戒め
「……るさい」
もうじき陽もその姿を現す頃だというのに、深夜から降り始めたその雨は、まだ止むことを知らないようだった。
池袋の路地裏、人通りの全くないゴミ溜めのようなその場所で、蹲る男と佇む男。
「だから言ったでしょ」
蹲る、というより、正確には膝を抱えて座っていた。深くフードを被っているせいで、立っている男の側からはその表情が見えない。
けれど何を考えているのかは手に取るように分かった。
もうこれを繰り返したのは、両手でも余るから。
「何でさあ、臨也はそうやって、人のことを馬鹿馬鹿言いたいわけ?」
詰るような口調ではない。少し笑っているような声だ。
「俺はそんな悪趣味じゃないけど? 澪士がもう少し考えて行動してくれればって思ってるんだけど」
「……ほんと、酷いな」
膝を抱えていた男は顔を上げ、立っていた方に目を向ける。
「俺の所に来れば、誰にも酷いことはさせないってずっと言ってるのに。それを断り続ける澪士が悪いよ」
「俺は男なんか好きじゃねっつの」
「でも不本意な結果に終わってるよ。今のところね」
その男は非常に美しかった。少し服装を整えれば、女と名乗っても疑いようのない程に。
男は夜中になると、煌々と明かりの煌めく都市部をぶらつくのが趣味なのだが、その度に心ない男に声を掛け続けられる。時には女も。
男も決して弱いわけではない、大抵の喧嘩には勝てる腕っ節がある。しかし束になって来られれば、いくら強くたって難しいものがある。
だから交渉しないか、と立っている男は言ったのだ。
「お前の所に匿ってもらったら、それこそ親に顔向けできないね」
「嫌だなあ。俺のこと何だと思ってるの?」
「けだもの」
一言ばっさりと切り捨てると、座っていた男は立ち上がる。その足取りはまだどこか怪しい。
服は埃と泥まみれで、あまり明るくなってしまうときっと街を歩いて帰ることは難しくなってしまうだろう。
ふら、と歩き出すそれを、薄ら笑いを浮かべていた男が見守っていた。
「愛は小出しにせよ、って言うけれど、俺はそうは思わないね」
「何だよ? いきなり」
「俺、ずーっと昔から澪士のこと好きで、澪士への愛を伝え続けてるけど、まだ尽きる気配がないもの」
「馬鹿じゃねえの?」
馬鹿、と言う方は今度は変わってしまったけれど、形勢逆転という風にはいかないらしい。
路地を出て、朝陽に照らされる男を見ながら、ああ今直ぐ抱きしめて昏睡させてこの世のどこからも奪い去れたら、なんて考えた。
愛は小出しにせよ///愛は細く長く保つことが秘訣で、あまりに激しい愛は永続きしないものだという戒め