君が好きだ(オムニバス)
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「はあー……」
寒い。両手に白い息を吐きかける。
こんな、部屋着とブランケットだけで出てくるんじゃなかった。
そう後悔しても、なかなか夜空を見上げる目は離せない。
「……どうして、こうなったかな」
そんなことを考えていると、梯子の方からガタガタッと音がして驚く。
何だ、物取りか? 身構えて注視していると、ひょいと顔を現したのは。
「……ロック?」
「#s#、こんな所に居たのか」
ロックは身軽に上ってきて、少し距離を離して座り込む。
「何でこんな屋根の上に居るんだ? #s#」
「んー……星が綺麗だったから」
「ああ、確かに」
星が綺麗だったから。他の人の顔を見たくなくて。
ところどころ雪の積もる瓦の屋根は冷たい。それでもここから動けずにいる。
「……綺麗だな」
「!」
再び夜空を見上げようとしたところ、聞き捨てならない台詞が聞こえて、勢いよくロックの方を振り向く。
「綺麗? 何が?」
「何って、夜空が」
「そうだこの際出会ってしまったんだから、もう終わりにしよう」
「……#s#、何を言ってるんだ?」
ロックは明らかに困惑している。しかし何が分からないというのか。
俺は毎日散々言い続けてきただろう。
ズボンのポケットからナイフを取り出す。刃先はきっと冷えているから、温かな肉に刺せば丁度良く温まるに違いない。
「レイチェルにロックを取られてしまったのが許せないんだ。だから死んで」
「何言ってる? #s#」
「離別の後の悋気って、知らない?」
きっと知らないだろう。しかし説明はせずに続ける。
「今ロックを殺したところで、ロックの想いはレイチェルに囚われ続けている。とはいえ人の想いばかりはどんなに呪っても変えられないし。それならせめて、ロックの身体だけは欲しい」
「#s#……」
「同情はいらないよ。俺をこんな風にしたのはロックだから。さ、こっちへ」
このナイフでロックを殺した後、俺もすぐに死のう。そう決めている。多分冥界で結ばれることもないけど、またゼロから始められるのならそれでいい。
しかしロックは立ち上がったきり動かない。仕方ないので俺がそちらへ行くことにした。
「足滑らすなよ、#s#」
「大丈夫」
何だ。これから殺されようとしているのに、その余裕は。
ちょっと苛立って足を踏み出すと、俺の足は雪を踏んで、つるりと滑った。
「うわっ!」
もう片方の足では支えきれない。
ぐらりと身体が揺れた瞬間、ロックの手が俺の手を掴んだ。
「#s#、気を付けろって言っただろ!」
「ロック、離して」
「離してって何で」
「俺先に死ぬから。後から来て」
「……はあ……」
溜息を吐きながらも、俺は結局ロックに屋根の上に再び引き上げられる。
俺はもう片方の手にナイフを持ったままなのに、ロックは全く気にしていないようだった。
「何で助けたの」
「目の前で人が死ぬのを黙って見てられるわけないだろ」
「でもさ、ロックが今のとこで俺の手を離してくれたら、俺はロックとレイチェルが幸せになる未来を見なくてハッピー。ロックが後を追ってくれるなら更にハッピー。ロックがもしその後暫く死ななくても、罪悪感の中に俺が残っているからそれはそれでハッピー!」
「……#s#、そんなキャラだったか?」
「ううん、多分違うね」
昔――ロックがレイチェルと恋仲になる前、俺とロックは親密な関係だった。お互いに「恋人」とははっきりは言わなかったけれど、その名がぴったりな関係だった。
本当に幸せだった。でも今は違うから。
「さっきも言ったけど、俺をこんな風にしたのはロックだよ」
「それは光栄って思っていいのか?」
「分からないけど、責任を取って一緒に死んで」
そう言いながらナイフを差し出す。ロックは溜息をついた。
離別の後の悋気///離別した後に相手に新しい恋人ができると、もう縁が切れて関係ないはずなのに、つい嫉妬心が起こること
寒い。両手に白い息を吐きかける。
こんな、部屋着とブランケットだけで出てくるんじゃなかった。
そう後悔しても、なかなか夜空を見上げる目は離せない。
「……どうして、こうなったかな」
そんなことを考えていると、梯子の方からガタガタッと音がして驚く。
何だ、物取りか? 身構えて注視していると、ひょいと顔を現したのは。
「……ロック?」
「#s#、こんな所に居たのか」
ロックは身軽に上ってきて、少し距離を離して座り込む。
「何でこんな屋根の上に居るんだ? #s#」
「んー……星が綺麗だったから」
「ああ、確かに」
星が綺麗だったから。他の人の顔を見たくなくて。
ところどころ雪の積もる瓦の屋根は冷たい。それでもここから動けずにいる。
「……綺麗だな」
「!」
再び夜空を見上げようとしたところ、聞き捨てならない台詞が聞こえて、勢いよくロックの方を振り向く。
「綺麗? 何が?」
「何って、夜空が」
「そうだこの際出会ってしまったんだから、もう終わりにしよう」
「……#s#、何を言ってるんだ?」
ロックは明らかに困惑している。しかし何が分からないというのか。
俺は毎日散々言い続けてきただろう。
ズボンのポケットからナイフを取り出す。刃先はきっと冷えているから、温かな肉に刺せば丁度良く温まるに違いない。
「レイチェルにロックを取られてしまったのが許せないんだ。だから死んで」
「何言ってる? #s#」
「離別の後の悋気って、知らない?」
きっと知らないだろう。しかし説明はせずに続ける。
「今ロックを殺したところで、ロックの想いはレイチェルに囚われ続けている。とはいえ人の想いばかりはどんなに呪っても変えられないし。それならせめて、ロックの身体だけは欲しい」
「#s#……」
「同情はいらないよ。俺をこんな風にしたのはロックだから。さ、こっちへ」
このナイフでロックを殺した後、俺もすぐに死のう。そう決めている。多分冥界で結ばれることもないけど、またゼロから始められるのならそれでいい。
しかしロックは立ち上がったきり動かない。仕方ないので俺がそちらへ行くことにした。
「足滑らすなよ、#s#」
「大丈夫」
何だ。これから殺されようとしているのに、その余裕は。
ちょっと苛立って足を踏み出すと、俺の足は雪を踏んで、つるりと滑った。
「うわっ!」
もう片方の足では支えきれない。
ぐらりと身体が揺れた瞬間、ロックの手が俺の手を掴んだ。
「#s#、気を付けろって言っただろ!」
「ロック、離して」
「離してって何で」
「俺先に死ぬから。後から来て」
「……はあ……」
溜息を吐きながらも、俺は結局ロックに屋根の上に再び引き上げられる。
俺はもう片方の手にナイフを持ったままなのに、ロックは全く気にしていないようだった。
「何で助けたの」
「目の前で人が死ぬのを黙って見てられるわけないだろ」
「でもさ、ロックが今のとこで俺の手を離してくれたら、俺はロックとレイチェルが幸せになる未来を見なくてハッピー。ロックが後を追ってくれるなら更にハッピー。ロックがもしその後暫く死ななくても、罪悪感の中に俺が残っているからそれはそれでハッピー!」
「……#s#、そんなキャラだったか?」
「ううん、多分違うね」
昔――ロックがレイチェルと恋仲になる前、俺とロックは親密な関係だった。お互いに「恋人」とははっきりは言わなかったけれど、その名がぴったりな関係だった。
本当に幸せだった。でも今は違うから。
「さっきも言ったけど、俺をこんな風にしたのはロックだよ」
「それは光栄って思っていいのか?」
「分からないけど、責任を取って一緒に死んで」
そう言いながらナイフを差し出す。ロックは溜息をついた。
離別の後の悋気///離別した後に相手に新しい恋人ができると、もう縁が切れて関係ないはずなのに、つい嫉妬心が起こること