このゲームはお預けで(夢100/ドライ)
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それから1か月、レイシの仕事は忙しくなり、終電で家に帰り朝飛び起きる、という生活が続いた。
当然休みはあったが洗濯や日用品の買い物をしている間に1日が終わり、あるいは平日の分を寝だめして終わったり。時には上司から休日出勤を打診されることもあった。
その休日もレイシは忙しく部屋の掃除をしていた。ドライの所に訪問できないことを心苦しく思っていたが、それでも来週辺りになんとか落ち着きそうだからそれくらいに行ければ、と思っていた。
昼過ぎ、掃除機をかけ終わった頃、部屋のチャイムが鳴る。
「はーい」
頼んでおいた毛布が来たのだろうか、と思いながらレイシは扉を開けた。するとそこには。
「え……ドライ?」
「レイシ、久しぶりだな」
なぜここに、と思って一瞬固まってしまったが、ドライは命を狙われる身。慌てて部屋の中に招き入れる。
掃除機をかけ終わっていて本当に良かったと思ったが、まだ完全に片づけたわけではない。
「ドライ、なんでここに」
「お前の様子を見てこいと父上に言われた」
「……嘘」
「嘘だ」
ほっとした。そんな用事で外出したがらない、ましてや命を狙われている息子を外出させないだろう。
「とりあえず、座って。今から買い物に行こうと思ってたところだから何もないけど、コーヒーでいい?」
「ああ」
レイシは電気ケトルに水を入れスイッチをオンにする。これも午前中に洗浄を終えたばかりだ。
カップを2つ出し、インスタントコーヒーの粉を入れる。沸騰した熱湯をカップに注ぎ込み、マドラーでかき混ぜてリビングへ持っていった。
「……で、一体どんな用事?」
「用はない」
「ええ?」
コーヒーに口を付けながらドライは答える。
「今まで僕がお前に用事があったことがあるか?」
「いや……対戦とか?」
「対戦だったらネットでやってる」
「確かに」
レイシは妙に納得してしまう。
「さっきの話」
「え?」
「父上に言われて、と言うのは嘘だが、様子を見に来たというのは本当だ」
カップを置いてレイシの方を見るドライ。
その目はけして嘘を言っているようには見えず、また攻略かと思いながらもレイシは視線を外せなかった。
「忙しいのか」
「こうして休みは一応あるんだけどね。家のこと色々やってたら全然行けなくて……ごめん」
「なんで謝る?」
ドライは眉を寄せながら訊ねる。
「あ、いや。ドライを訪ねてくれたら嬉しい、って国王様にも言われてるし、俺も何回かドライの所行ってるから、いきなり行かなくなったらそりゃ心配かけるなって……」
「……変なやつ」
別に僕が頼んだわけでもないのに勝手に来て、勝手に来なくなったからこっちから来たら今度は謝るのか、と。
そこで謝ると何で変になるのかレイシには分からなかったが、多分ドライには色々と思う所があるのだろう、と無理やり理解した。
「レイシ、お前さ」
「ん?」
「王宮で働いたら?」
「……え?」
なぜそうなるのか分からず、今度はレイシが眉をしかめる。
「だって忙しいんだろう。僕の所で雇ったら一日中ゲームができる」
「いや、待って。それどういう職種?」
「僕のゲーム相手」
「……あー……」
いや有り得ないでしょ、とレイシはばっさり切り捨てることができなかった。例えこの後「嘘に決まってるだろ」と言われようと、そんないい条件の話だったら騙されてもいいかなと思った。だってゲームしながらお金がもらえるなんて最高じゃないか、レイシにとってはドライも気の合う相手だし。
レイシは暫く目線を下に落としていたが、ドライはその間口を開かなかった。視線をドライに戻すレイシ。
「……嘘だ、って言わないの?」
「嘘? 何が」
「ゲーム相手として雇う話」
「嘘じゃない」
「ええ? 嘘」
「だから嘘じゃないって言ってるだろ」
ドライの目尻が少し上がる、ちょっと怒ってるな、とレイシは思った。疑ったからだろうか。
「いやでもそんな条件いい話なんて、有り得なくない? だってゲームしながらお金もらえるなんて、ゲーマーの夢だよ?」
「そうだな。でも嘘じゃない」
「……うーん」
鼻先にぶら提げられたにんじん。でもそれは走っても走っても追い付かないものではなくて、本当はそこに置いてあるだけのものだと言う。
レイシはやはり悩んだが、結局答えは。
「やめとく」
「は? 何で」
「だって俺、ゲームするのも好きだけど、作るのも好きだし」
作るのも好き、と言いながら、レイシは自分の頬が少しほころぶのを感じた。――そうだ、本当に好きなのだ。ただ新作を待つだけしかできなかったあの頃とは違う。
そんなレイシを見てドライははあと溜息を吐いた。
「……まあ、お前がそれで良いって言うならいいけど」
「あきれた?」
「あきれた」
休日も最低限のことしかできないレイシのことを憐れんでいるのだろう。しかしレイシも同じ様に、ドライのことを可哀相に思うときがあった。
「でも、ま、本当につらくなったらまた聞くかも」
「勝手にしろ」
じゃあ今日は何のゲームやる、とレイシは笑いながら問いかけた。
当然休みはあったが洗濯や日用品の買い物をしている間に1日が終わり、あるいは平日の分を寝だめして終わったり。時には上司から休日出勤を打診されることもあった。
その休日もレイシは忙しく部屋の掃除をしていた。ドライの所に訪問できないことを心苦しく思っていたが、それでも来週辺りになんとか落ち着きそうだからそれくらいに行ければ、と思っていた。
昼過ぎ、掃除機をかけ終わった頃、部屋のチャイムが鳴る。
「はーい」
頼んでおいた毛布が来たのだろうか、と思いながらレイシは扉を開けた。するとそこには。
「え……ドライ?」
「レイシ、久しぶりだな」
なぜここに、と思って一瞬固まってしまったが、ドライは命を狙われる身。慌てて部屋の中に招き入れる。
掃除機をかけ終わっていて本当に良かったと思ったが、まだ完全に片づけたわけではない。
「ドライ、なんでここに」
「お前の様子を見てこいと父上に言われた」
「……嘘」
「嘘だ」
ほっとした。そんな用事で外出したがらない、ましてや命を狙われている息子を外出させないだろう。
「とりあえず、座って。今から買い物に行こうと思ってたところだから何もないけど、コーヒーでいい?」
「ああ」
レイシは電気ケトルに水を入れスイッチをオンにする。これも午前中に洗浄を終えたばかりだ。
カップを2つ出し、インスタントコーヒーの粉を入れる。沸騰した熱湯をカップに注ぎ込み、マドラーでかき混ぜてリビングへ持っていった。
「……で、一体どんな用事?」
「用はない」
「ええ?」
コーヒーに口を付けながらドライは答える。
「今まで僕がお前に用事があったことがあるか?」
「いや……対戦とか?」
「対戦だったらネットでやってる」
「確かに」
レイシは妙に納得してしまう。
「さっきの話」
「え?」
「父上に言われて、と言うのは嘘だが、様子を見に来たというのは本当だ」
カップを置いてレイシの方を見るドライ。
その目はけして嘘を言っているようには見えず、また攻略かと思いながらもレイシは視線を外せなかった。
「忙しいのか」
「こうして休みは一応あるんだけどね。家のこと色々やってたら全然行けなくて……ごめん」
「なんで謝る?」
ドライは眉を寄せながら訊ねる。
「あ、いや。ドライを訪ねてくれたら嬉しい、って国王様にも言われてるし、俺も何回かドライの所行ってるから、いきなり行かなくなったらそりゃ心配かけるなって……」
「……変なやつ」
別に僕が頼んだわけでもないのに勝手に来て、勝手に来なくなったからこっちから来たら今度は謝るのか、と。
そこで謝ると何で変になるのかレイシには分からなかったが、多分ドライには色々と思う所があるのだろう、と無理やり理解した。
「レイシ、お前さ」
「ん?」
「王宮で働いたら?」
「……え?」
なぜそうなるのか分からず、今度はレイシが眉をしかめる。
「だって忙しいんだろう。僕の所で雇ったら一日中ゲームができる」
「いや、待って。それどういう職種?」
「僕のゲーム相手」
「……あー……」
いや有り得ないでしょ、とレイシはばっさり切り捨てることができなかった。例えこの後「嘘に決まってるだろ」と言われようと、そんないい条件の話だったら騙されてもいいかなと思った。だってゲームしながらお金がもらえるなんて最高じゃないか、レイシにとってはドライも気の合う相手だし。
レイシは暫く目線を下に落としていたが、ドライはその間口を開かなかった。視線をドライに戻すレイシ。
「……嘘だ、って言わないの?」
「嘘? 何が」
「ゲーム相手として雇う話」
「嘘じゃない」
「ええ? 嘘」
「だから嘘じゃないって言ってるだろ」
ドライの目尻が少し上がる、ちょっと怒ってるな、とレイシは思った。疑ったからだろうか。
「いやでもそんな条件いい話なんて、有り得なくない? だってゲームしながらお金もらえるなんて、ゲーマーの夢だよ?」
「そうだな。でも嘘じゃない」
「……うーん」
鼻先にぶら提げられたにんじん。でもそれは走っても走っても追い付かないものではなくて、本当はそこに置いてあるだけのものだと言う。
レイシはやはり悩んだが、結局答えは。
「やめとく」
「は? 何で」
「だって俺、ゲームするのも好きだけど、作るのも好きだし」
作るのも好き、と言いながら、レイシは自分の頬が少しほころぶのを感じた。――そうだ、本当に好きなのだ。ただ新作を待つだけしかできなかったあの頃とは違う。
そんなレイシを見てドライははあと溜息を吐いた。
「……まあ、お前がそれで良いって言うならいいけど」
「あきれた?」
「あきれた」
休日も最低限のことしかできないレイシのことを憐れんでいるのだろう。しかしレイシも同じ様に、ドライのことを可哀相に思うときがあった。
「でも、ま、本当につらくなったらまた聞くかも」
「勝手にしろ」
じゃあ今日は何のゲームやる、とレイシは笑いながら問いかけた。