このゲームはお預けで(夢100/ドライ)
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レイシは軽く息を吸い、城の中でも外れの方、大きな扉をノックする。
「ドライ王子」
中から返事はない。しかしレイシは意に介さずドアノブを回し、扉を内に向かって押した。いつものように鍵はかかっておらず、いとも簡単に中へ入れてしまう。
そっと扉の隙間から中を窺うと、部屋の主はこれまたいつものように、画面の中の御伽噺に夢中になっていた。
「……はあ」
「レイシか」
大袈裟に溜息を吐いてみせると、レイシの方を一度も見ることなく彼は呟く。聞いていないだろうが、そうだよ、とレイシは答える。
扉を後ろ手で閉めた後、レイシはドライの隣に座った。
「今日は、何? RPG?」
「見て分かるだろ」
「わかるよ。3日前に出たばかりのやつでしょ」
丁度戦闘が終わったところでドライはメニュー画面を開き、ようやくレイシの方を見た。
今日はもう部屋から出るつもりはない、とでも言いたげなメガネ姿である、別にメガネが似合っていないわけではないけれど。一応視力のことを気にしているんだなあ、とレイシは思った。
「何しに来た?」
「何しにって……分かるでしょそれくらい。いつものことなんだから」
「僕は今日はもう部屋から出るつもりはないし、これ以外のゲームやる気はないけど」
「はいはい。じゃあ俺は隣でドライ王子のプレイを見てますね」
すいとドライの瞳は直ぐに画面に向けられた。レイシは黄色い飛べない鳥のぬいぐるみを抱き寄せながら同じ様に画面を見る。
ドライはいつものように軽快にプレイしていく、彼は大体何のゲームでもやるし今までにクリアしてきたソフトの数が半端ではないので、初めてのゲームをプレイする時でさえ迷いが殆どない。
だからこそ見知らぬものには強い警戒心を示すのだ。
「ドライ、ちょっと貸して」
「嫌だ」
「じゃ、そこ。そこ調べて」
「は? どこだよ」
「だから、そこだってば」
レイシが隣からドライのコントローラを奪おうとすると、ドライはそれを嫌がって身体を捻る。コントローラのケーブルは十分に長いので――これはゲーマー誰もが恐れていることだろうが――それでも下手に本体を引っ張ってしまいデータが消し飛ぶ恐れはない。
仕方なくレイシが画面を指さしてもドライにはイマイチ伝わらない。
「だーかーらー……」
痺れを切らしたレイシはドライの手の上からボタンを触る。ずっとゲームをしていたのであろう、ドライの手の温もりが伝わってくる。
十字キーを動かしボタンで調べる、すると主人公と仲間の会話が始まった。
「……なんだよ? これ」
「隠しイベント」
「へー」
「……怒るなよ」
明らかに機嫌の悪くなったドライから離れながら溜息をつくレイシ。
「こういうのは自分で見つけるのが楽しいのに」
「これ結構判定がシビアなんだよ。今しか見れないしさ、いいアイテムももらえるし」
「あっそ」
会話イベントの途中だというのに、ドライはレイシに目を向ける。
なに、とレイシが訊ねると、口角を上げて笑った。
「そう言って本当は、僕に触りたかったとか?」
「……は?」
「って言う方が、攻略ルートっぽいだろ?」
誰が誰を攻略しているのか。レイシにはさっぱり分からなかったが、ドライのゲーム思考は少しだけ分かる。
どこでフラグが立ったんだろうか、と思いながら。
「ドライ王子」
中から返事はない。しかしレイシは意に介さずドアノブを回し、扉を内に向かって押した。いつものように鍵はかかっておらず、いとも簡単に中へ入れてしまう。
そっと扉の隙間から中を窺うと、部屋の主はこれまたいつものように、画面の中の御伽噺に夢中になっていた。
「……はあ」
「レイシか」
大袈裟に溜息を吐いてみせると、レイシの方を一度も見ることなく彼は呟く。聞いていないだろうが、そうだよ、とレイシは答える。
扉を後ろ手で閉めた後、レイシはドライの隣に座った。
「今日は、何? RPG?」
「見て分かるだろ」
「わかるよ。3日前に出たばかりのやつでしょ」
丁度戦闘が終わったところでドライはメニュー画面を開き、ようやくレイシの方を見た。
今日はもう部屋から出るつもりはない、とでも言いたげなメガネ姿である、別にメガネが似合っていないわけではないけれど。一応視力のことを気にしているんだなあ、とレイシは思った。
「何しに来た?」
「何しにって……分かるでしょそれくらい。いつものことなんだから」
「僕は今日はもう部屋から出るつもりはないし、これ以外のゲームやる気はないけど」
「はいはい。じゃあ俺は隣でドライ王子のプレイを見てますね」
すいとドライの瞳は直ぐに画面に向けられた。レイシは黄色い飛べない鳥のぬいぐるみを抱き寄せながら同じ様に画面を見る。
ドライはいつものように軽快にプレイしていく、彼は大体何のゲームでもやるし今までにクリアしてきたソフトの数が半端ではないので、初めてのゲームをプレイする時でさえ迷いが殆どない。
だからこそ見知らぬものには強い警戒心を示すのだ。
「ドライ、ちょっと貸して」
「嫌だ」
「じゃ、そこ。そこ調べて」
「は? どこだよ」
「だから、そこだってば」
レイシが隣からドライのコントローラを奪おうとすると、ドライはそれを嫌がって身体を捻る。コントローラのケーブルは十分に長いので――これはゲーマー誰もが恐れていることだろうが――それでも下手に本体を引っ張ってしまいデータが消し飛ぶ恐れはない。
仕方なくレイシが画面を指さしてもドライにはイマイチ伝わらない。
「だーかーらー……」
痺れを切らしたレイシはドライの手の上からボタンを触る。ずっとゲームをしていたのであろう、ドライの手の温もりが伝わってくる。
十字キーを動かしボタンで調べる、すると主人公と仲間の会話が始まった。
「……なんだよ? これ」
「隠しイベント」
「へー」
「……怒るなよ」
明らかに機嫌の悪くなったドライから離れながら溜息をつくレイシ。
「こういうのは自分で見つけるのが楽しいのに」
「これ結構判定がシビアなんだよ。今しか見れないしさ、いいアイテムももらえるし」
「あっそ」
会話イベントの途中だというのに、ドライはレイシに目を向ける。
なに、とレイシが訊ねると、口角を上げて笑った。
「そう言って本当は、僕に触りたかったとか?」
「……は?」
「って言う方が、攻略ルートっぽいだろ?」
誰が誰を攻略しているのか。レイシにはさっぱり分からなかったが、ドライのゲーム思考は少しだけ分かる。
どこでフラグが立ったんだろうか、と思いながら。
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