御伽噺と微笑む(オムニバス)
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もう扉の向こうには何もないことを知ってしまった俺たちは、何をする気も起きず、ぐっと唇を噛んで下を向いていた。
一応誰かに見つからぬよう下水道には逃げてきたけれど、もうずっと誰も何も言わなかった。目の前に広がっていた光景が信じられなかったのだ。
どれくらい経っただろう、1時間も経っただろうかと思える程の長い時間の後、ようやく、サイクが口を開いた。
「……皆」
誰も顔を上げない。
「まさか、都がないなんて思いもしなかったが……俺たちはどちらにせよ、伯爵を倒さないことには自由はない」
「……そうだね」
ユマが控え目に同意する。
「もう少し……もう少しここで休んで、落ち着いたら、伯爵の屋敷を目指そう」
「……ああ」
俺も答えた。
サイクもそれきり口を閉じてしまって、水の流れる音だけが響く。
息の詰まるような時間だ。少しでも気分転換したいと思った俺は立ち上がり、一旦外の空気を吸おうと思い立つ。
「レイシ、どこへ行くつもりだ?」
「ちょっと、外へ」
「危険だ。俺も同行しよう」
有無を言わさぬ口調でサイクも立ち上がった。
断れない雰囲気なのでいいとも悪いとも言わず、俺は先に歩き出す。下水からの出口はすぐそこだ。
「……レイシ」
「どうした? サイク」
「あれ、どう思う」
2人になるとサイクはそう話しかけてくる。
「どうって……まだ、あまり信じていない」
「……そうだよな」
溜息を吐くサイク。多分ユマもテネットも同じ気持ちだろう。
アリシアが見たらどうだったか。ゲンが見たら悲しんだだろうか?
――そう思ってみても、今は既に居ない彼らが、答えてくれる筈もなく。
「伯爵を倒すのは俺も賛成だ」
「レイシ」
「……ただ、その後は、どうする? ここに居てこのまま、この世界の消滅を待つのか?」
「それは……」
サイクもまだそこまでは考えていないようだった。当たり前か。あんな状態を突きつけられても困る。世界の消滅だなんて誰も立ち会ったことのない状況だ。
「まあ先のことは、伯爵を倒してからでも遅くはない、か?」
この世界の消滅がどの程度の速度で進行しているのかは分からない。けれどユマやテネットやサイクはもうずっとこの世界に暮らしているわけだし、長いことじわじわと進行してきているのだろう。
だったら伯爵を倒してからでも遅くはない筈だ。そう楽観的に考えようと努力する。
「……レイシ」
「ん?」
「俺は……俺は、もしこの世界が永遠でなくても、構わない」
「サイク?」
突然言い出したことが理解できず、俺はサイクの方を見た。
「世界が終わるのが早いか、俺が死ぬのが早いか。それは分からないが、レイシ、お前がずっと俺の味方で居てくれるんだったら、俺はそれでいい。それなら……」
「どうした、突然?」
「……いや……忘れてくれ」
サイクは俺の方から顔を背け、そろそろ戻るか、と言う。
「ああ、そうだな」
そうだ、考えても分からないことは世の中に沢山ある。もしかすると、明日目が覚めたらあの門の外には平和な草原が広がっているかもしれないし、もしかすると、明日目が覚めない可能性だってあるのだ。
今は目の前の問題を片付けることに集中しよう。そう思った。
一応誰かに見つからぬよう下水道には逃げてきたけれど、もうずっと誰も何も言わなかった。目の前に広がっていた光景が信じられなかったのだ。
どれくらい経っただろう、1時間も経っただろうかと思える程の長い時間の後、ようやく、サイクが口を開いた。
「……皆」
誰も顔を上げない。
「まさか、都がないなんて思いもしなかったが……俺たちはどちらにせよ、伯爵を倒さないことには自由はない」
「……そうだね」
ユマが控え目に同意する。
「もう少し……もう少しここで休んで、落ち着いたら、伯爵の屋敷を目指そう」
「……ああ」
俺も答えた。
サイクもそれきり口を閉じてしまって、水の流れる音だけが響く。
息の詰まるような時間だ。少しでも気分転換したいと思った俺は立ち上がり、一旦外の空気を吸おうと思い立つ。
「レイシ、どこへ行くつもりだ?」
「ちょっと、外へ」
「危険だ。俺も同行しよう」
有無を言わさぬ口調でサイクも立ち上がった。
断れない雰囲気なのでいいとも悪いとも言わず、俺は先に歩き出す。下水からの出口はすぐそこだ。
「……レイシ」
「どうした? サイク」
「あれ、どう思う」
2人になるとサイクはそう話しかけてくる。
「どうって……まだ、あまり信じていない」
「……そうだよな」
溜息を吐くサイク。多分ユマもテネットも同じ気持ちだろう。
アリシアが見たらどうだったか。ゲンが見たら悲しんだだろうか?
――そう思ってみても、今は既に居ない彼らが、答えてくれる筈もなく。
「伯爵を倒すのは俺も賛成だ」
「レイシ」
「……ただ、その後は、どうする? ここに居てこのまま、この世界の消滅を待つのか?」
「それは……」
サイクもまだそこまでは考えていないようだった。当たり前か。あんな状態を突きつけられても困る。世界の消滅だなんて誰も立ち会ったことのない状況だ。
「まあ先のことは、伯爵を倒してからでも遅くはない、か?」
この世界の消滅がどの程度の速度で進行しているのかは分からない。けれどユマやテネットやサイクはもうずっとこの世界に暮らしているわけだし、長いことじわじわと進行してきているのだろう。
だったら伯爵を倒してからでも遅くはない筈だ。そう楽観的に考えようと努力する。
「……レイシ」
「ん?」
「俺は……俺は、もしこの世界が永遠でなくても、構わない」
「サイク?」
突然言い出したことが理解できず、俺はサイクの方を見た。
「世界が終わるのが早いか、俺が死ぬのが早いか。それは分からないが、レイシ、お前がずっと俺の味方で居てくれるんだったら、俺はそれでいい。それなら……」
「どうした、突然?」
「……いや……忘れてくれ」
サイクは俺の方から顔を背け、そろそろ戻るか、と言う。
「ああ、そうだな」
そうだ、考えても分からないことは世の中に沢山ある。もしかすると、明日目が覚めたらあの門の外には平和な草原が広がっているかもしれないし、もしかすると、明日目が覚めない可能性だってあるのだ。
今は目の前の問題を片付けることに集中しよう。そう思った。