御伽噺と微笑む(オムニバス)
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禍に巻き込まれたその日、仮面の男に乞われてその門に飛び込んだ彼らは、泣きながら帰ってきた。
レイシは傷だらけのカムイを背負っている。アスク王城で彼らを出迎えたミストは思わず声を上げた。
「お願い、クラリーネさんとエリーゼさんを呼んできて!」
「わ、分かった!」
レイシはカムイの部屋まで彼を運び、ミスト、クラリーネ、エリーゼが付きっ切りになって看病した。
その間レイシは何も手に付かないような様子で、ずっと忙しなく城内を行き来していたが、少し休めと周りに言われ、漸く自室で倒れるように眠った。
翌日、クラリーネがレイシを呼びにやってきた。カムイが目覚めたようだと。
慌てて身支度を整えたレイシはカムイの部屋の扉をそっと押した。
「カムイ……」
「レイシ」
小さく名を呼ぶと、ベッドの上で上半身を起こしていたカムイがレイシの方を向く。
「カムイ、大丈夫? 怪我は」
「うん、大丈夫だよ。心配させてごめんね、レイシ」
申し訳なさそうに僅かに笑み、そう答えるカムイにレイシは思わず鼻をすすった。
そのままカムイの座るベッドへ近づく。
「違う。悪いのは俺だ。あの時、諦めようって言えば良かった……」
「いや、僕も大丈夫だと思ったんだ。読みが甘かったね。自分の力を過信していた」
レイシは思わずカムイの手を握った。
君のせいじゃない、そう伝えたかった。
「俺……俺は、カムイが居なくなったらどうしようって、そればっかり考えてて……」
「どうしたんだい、急に」
「誰が居なくなっても勿論悲しいし、泣いてしまうだろうけど、カムイが居なくなることを……会えなくなることを想像したら、もう……」
そう言葉にするだけでもうレイシの目からは涙が溢れてきていた。
カムイは苦笑してレイシの手を握り返した。これではどちらが怪我人か分からない。
「レイシは僕のこと、そういう風に思ってくれてたんだ?」
「え……? あ、いや、そういうわけじゃ……」
「否定されるのも傷つくな」
「あ、ごめん、カムイ……」
戦禍の門へ飛び込んだ時――彼らはたった2人で行ったわけではないけれど――全ての禍を自身の力で打ち倒せると信じていた。
けれど現実はいつだってそうなったことはない。1人で手を広げてみても、守れる範囲には当然限界があって、いつもこうして泣きながら帰ってくるのに。
「カムイが居なくなってしまうのは、俺にとって本当に耐えがたいことなんだ。でも、戦場に赴く時、一番信頼できるのはカムイだとも思うんだ……」
「レイシ」
「何でだろう。矛盾しているかな、これ」
いや、矛盾しているわけじゃないよ、という言葉はカムイの喉の奥で引っかかる。
「じゃあ僕は、もっと強くなるね」
「え?」
「僕がもっと強くなって、レイシの期待に応えられるような人間になる。そうすれば僕がレイシを守れるから」
「カムイ……」
ぎゅ、と強く握り返し、レイシは口を開く。
「カムイ、好きだ」
「な、急に何」
「分からない。俺はもう何の記憶も無いけれど、カムイの事を考える度に色々思うのは、これが「好き」ってことなんじゃないかと思って」
至極真面目な表情でそう言うレイシに、カムイは思わず照れて視線を外す。
「……僕だって……」
「え?」
「僕だって、ずっとレイシのこと、大事だと思っているよ」
「!」
「だからこんな風にかっこ悪いところ見せたくないし……ていうか、今、こんな時に言わなくても……」
「いや、今言わなきゃいけない気がして」
それは縁起が悪いとかそういう話ではなく、自分のけじめとかそういうもので。
こうして涙を流すくらい心配してくれる人なんて他にいないんじゃないだろうか、とカムイは思った。
レイシは傷だらけのカムイを背負っている。アスク王城で彼らを出迎えたミストは思わず声を上げた。
「お願い、クラリーネさんとエリーゼさんを呼んできて!」
「わ、分かった!」
レイシはカムイの部屋まで彼を運び、ミスト、クラリーネ、エリーゼが付きっ切りになって看病した。
その間レイシは何も手に付かないような様子で、ずっと忙しなく城内を行き来していたが、少し休めと周りに言われ、漸く自室で倒れるように眠った。
翌日、クラリーネがレイシを呼びにやってきた。カムイが目覚めたようだと。
慌てて身支度を整えたレイシはカムイの部屋の扉をそっと押した。
「カムイ……」
「レイシ」
小さく名を呼ぶと、ベッドの上で上半身を起こしていたカムイがレイシの方を向く。
「カムイ、大丈夫? 怪我は」
「うん、大丈夫だよ。心配させてごめんね、レイシ」
申し訳なさそうに僅かに笑み、そう答えるカムイにレイシは思わず鼻をすすった。
そのままカムイの座るベッドへ近づく。
「違う。悪いのは俺だ。あの時、諦めようって言えば良かった……」
「いや、僕も大丈夫だと思ったんだ。読みが甘かったね。自分の力を過信していた」
レイシは思わずカムイの手を握った。
君のせいじゃない、そう伝えたかった。
「俺……俺は、カムイが居なくなったらどうしようって、そればっかり考えてて……」
「どうしたんだい、急に」
「誰が居なくなっても勿論悲しいし、泣いてしまうだろうけど、カムイが居なくなることを……会えなくなることを想像したら、もう……」
そう言葉にするだけでもうレイシの目からは涙が溢れてきていた。
カムイは苦笑してレイシの手を握り返した。これではどちらが怪我人か分からない。
「レイシは僕のこと、そういう風に思ってくれてたんだ?」
「え……? あ、いや、そういうわけじゃ……」
「否定されるのも傷つくな」
「あ、ごめん、カムイ……」
戦禍の門へ飛び込んだ時――彼らはたった2人で行ったわけではないけれど――全ての禍を自身の力で打ち倒せると信じていた。
けれど現実はいつだってそうなったことはない。1人で手を広げてみても、守れる範囲には当然限界があって、いつもこうして泣きながら帰ってくるのに。
「カムイが居なくなってしまうのは、俺にとって本当に耐えがたいことなんだ。でも、戦場に赴く時、一番信頼できるのはカムイだとも思うんだ……」
「レイシ」
「何でだろう。矛盾しているかな、これ」
いや、矛盾しているわけじゃないよ、という言葉はカムイの喉の奥で引っかかる。
「じゃあ僕は、もっと強くなるね」
「え?」
「僕がもっと強くなって、レイシの期待に応えられるような人間になる。そうすれば僕がレイシを守れるから」
「カムイ……」
ぎゅ、と強く握り返し、レイシは口を開く。
「カムイ、好きだ」
「な、急に何」
「分からない。俺はもう何の記憶も無いけれど、カムイの事を考える度に色々思うのは、これが「好き」ってことなんじゃないかと思って」
至極真面目な表情でそう言うレイシに、カムイは思わず照れて視線を外す。
「……僕だって……」
「え?」
「僕だって、ずっとレイシのこと、大事だと思っているよ」
「!」
「だからこんな風にかっこ悪いところ見せたくないし……ていうか、今、こんな時に言わなくても……」
「いや、今言わなきゃいけない気がして」
それは縁起が悪いとかそういう話ではなく、自分のけじめとかそういうもので。
こうして涙を流すくらい心配してくれる人なんて他にいないんじゃないだろうか、とカムイは思った。
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