僕は君に愛させたい(FE覚醒/クロム)
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その晩、訓練と称して街に泊まらず野営を強いられた俺たち。
何が楽しくて王族がこんな野営をしているのだ、とも思ったのだが、訓練と言われればしょうがない気もした。リズは嫌がっていたが。女の子なんだから当たり前か。
だが眠りに就いてから3時間も経たない内に俺は不意に目が覚めた。
見張りのフレデリクと目が合う。
「ごめんフレデリク、ちょっと辺りが気になるから見てくる」
「はい」
一見辺りは何の変哲もなかったが、そんなに風もないのに木々がざわめている気がする。俺の本能が嫌な予感を告げている。
フレデリクも何かを感じていたようで、クロムとリズを庇うように座っていた。
まだ起こす程のことは起きていないが、いつでも守れるようにと。
「よろしくお願いします」
俺は頷いて立ち上がる。睡眠時間も短く寝起きだが意外と頭は冴えている。何かが起きているかもしれない、という緊張感のせいだろうか。
ぐるっと10分ほどかけて辺りを歩き回ってみたが、特に何も見当たらなかったことは逆に不安を掻き立てる。
何か、何か決定的な、この不安の原因を見つけ出さなければ。
そう焦った時、背後で小枝を踏む音が聞こえて、飛び上がって振り返った。
「グゥゥゥ……」
「っ!?」
そこに居たのは人間。……のように見えるが、何故か生気を感じられなかった。目が虚ろだし、獣のような声を上げている。
その人間は持っていた斧を振りかざし、俺をめがけて振り下ろした。
「危ないっ!」
「!」
声が聞こえて、誰かが俺とその人間の間に割って入ってきて、斧を剣で受け止めた。
クロムでもリズでもフレデリクでもない。知らない人物だ。
一体誰かは分からなかったが、俺は素早くサンダーを唱える。しかし『それ』は怯んだものの、倒すには至らない。
「何やってる、レイシ! 逃げて!」
「あ、」
その言葉に弾かれるように俺は逃げ出す。早く、早く逃げて、フレデリクに伝えなければ。
息を切らしながら野営地に戻ると、既に2人も起きていて、クロムは剣を抜いていた。
「レイシ、無事か! 何が起きている?」
「クロム、何か、何かが……」
俺を襲ってきたんだ、と言いかけて、辺りを囲む気配に気づく。奴らは気配を隠す気もないようだった。
俺たちはリズを庇うように立ち、各々の武器を握り直す。
「気を付けて、皆。やつら、人間じゃない気がする」
「人間じゃない? どういうことだ?」
「分からない。けど、生気は感じられないし、サンダーも大して効いていないように見えた」
俺がそう言い終えた瞬間、奴らが一斉に襲ってきた。
フレデリクが斧、クロムが剣でいなし、俺が少し離れた所からサンダーを唱える。
けど、敵の方が少し多い。攻撃が効いている手ごたえもなく、いかにリズを逃がすか、と弱気に考え始める。
「くそっ、何だこいつらは!」
「! お兄ちゃん、後ろ!」
「っ!」
1人の敵に気を取られればすぐに背中を取られる。
リズはクロムの背後に忍び寄る敵に気づいたが、声を掛けた時にはもう遅い。
クロムの背中に向かって斧が振り下ろされた、その時。
「グアァッ!」
敵はいきなり呻いて地面に倒れた。その首筋には矢が刺さっている。一体誰が?
それと同時に馬の蹄の音が迫ってくる。
俺は思わず身構えたが、馬に跨ってやってきたその人は、フレデリクに加勢して槍で敵を倒した。
「ソワレ!」
「待たせたね。皆無事かい?」
「仲間……?」
「ああ、そうだ」
馬に乗った女性は最低限の言葉だけを交わした後、最後の敵に止めを刺す。
するともう一人、茂みから誰かが出てきた。
「また敵か!?」
「いや、私は貴族のヴィオール。たまたま通りかかったら君たちが襲われていたので、加勢したまでさ」
ヴィオールと名乗った男は弓矢を持っている。先程クロムを助けてくれたのは彼なのだろうか。
辺りの不穏な気配が一旦落ち着いたところで、俺は漸く、最初に助けてくれた人のことを思い出す。
「そういえば……最初に俺のことを助けてくれた人が、いない」
「助けてくれた人?」
「ああ。あれに襲われかけた俺を助けてくれた。俺の名前を知っているようだったけど……」
そこまで考えて、ふっと、それはあり得ない、ということに気が付いた。
だって俺の名前は、今日、クロムに与えられたものだ。まさか俺が記憶を失う前も同じ名前だったなんて奇跡は、有り得なくはないが確率としては非常に低い。
これはちょっとしたホラーだ。一体誰だったのだろう。考えると怖いのであまり考えたくはないが。
俺が落ち込んでいるとフレデリクが声を上げる。
「夜は危ないので移動は避けたいですが、この状況では、ここに留まる方が危険です。今から歩けば、太陽が昇る頃には王宮に着く筈です。皆さん行きましょう」
「私も同行していいかい?」
「……どうぞ」
ヴィオールが尋ねると、少し渋った後にフレデリクは頷いた。俺の時よりやけにあっさりだな、と思ったが、彼も俺たちのことを助けてくれたのは違いない。こんな所に置いて行って危ない目に遭われるのも嫌だし。
俺たちは言葉少なに出発した。一体あれらが何だったのか、俺を助けてくれたのは誰なのか、考えても答えは出なかった。
何が楽しくて王族がこんな野営をしているのだ、とも思ったのだが、訓練と言われればしょうがない気もした。リズは嫌がっていたが。女の子なんだから当たり前か。
だが眠りに就いてから3時間も経たない内に俺は不意に目が覚めた。
見張りのフレデリクと目が合う。
「ごめんフレデリク、ちょっと辺りが気になるから見てくる」
「はい」
一見辺りは何の変哲もなかったが、そんなに風もないのに木々がざわめている気がする。俺の本能が嫌な予感を告げている。
フレデリクも何かを感じていたようで、クロムとリズを庇うように座っていた。
まだ起こす程のことは起きていないが、いつでも守れるようにと。
「よろしくお願いします」
俺は頷いて立ち上がる。睡眠時間も短く寝起きだが意外と頭は冴えている。何かが起きているかもしれない、という緊張感のせいだろうか。
ぐるっと10分ほどかけて辺りを歩き回ってみたが、特に何も見当たらなかったことは逆に不安を掻き立てる。
何か、何か決定的な、この不安の原因を見つけ出さなければ。
そう焦った時、背後で小枝を踏む音が聞こえて、飛び上がって振り返った。
「グゥゥゥ……」
「っ!?」
そこに居たのは人間。……のように見えるが、何故か生気を感じられなかった。目が虚ろだし、獣のような声を上げている。
その人間は持っていた斧を振りかざし、俺をめがけて振り下ろした。
「危ないっ!」
「!」
声が聞こえて、誰かが俺とその人間の間に割って入ってきて、斧を剣で受け止めた。
クロムでもリズでもフレデリクでもない。知らない人物だ。
一体誰かは分からなかったが、俺は素早くサンダーを唱える。しかし『それ』は怯んだものの、倒すには至らない。
「何やってる、レイシ! 逃げて!」
「あ、」
その言葉に弾かれるように俺は逃げ出す。早く、早く逃げて、フレデリクに伝えなければ。
息を切らしながら野営地に戻ると、既に2人も起きていて、クロムは剣を抜いていた。
「レイシ、無事か! 何が起きている?」
「クロム、何か、何かが……」
俺を襲ってきたんだ、と言いかけて、辺りを囲む気配に気づく。奴らは気配を隠す気もないようだった。
俺たちはリズを庇うように立ち、各々の武器を握り直す。
「気を付けて、皆。やつら、人間じゃない気がする」
「人間じゃない? どういうことだ?」
「分からない。けど、生気は感じられないし、サンダーも大して効いていないように見えた」
俺がそう言い終えた瞬間、奴らが一斉に襲ってきた。
フレデリクが斧、クロムが剣でいなし、俺が少し離れた所からサンダーを唱える。
けど、敵の方が少し多い。攻撃が効いている手ごたえもなく、いかにリズを逃がすか、と弱気に考え始める。
「くそっ、何だこいつらは!」
「! お兄ちゃん、後ろ!」
「っ!」
1人の敵に気を取られればすぐに背中を取られる。
リズはクロムの背後に忍び寄る敵に気づいたが、声を掛けた時にはもう遅い。
クロムの背中に向かって斧が振り下ろされた、その時。
「グアァッ!」
敵はいきなり呻いて地面に倒れた。その首筋には矢が刺さっている。一体誰が?
それと同時に馬の蹄の音が迫ってくる。
俺は思わず身構えたが、馬に跨ってやってきたその人は、フレデリクに加勢して槍で敵を倒した。
「ソワレ!」
「待たせたね。皆無事かい?」
「仲間……?」
「ああ、そうだ」
馬に乗った女性は最低限の言葉だけを交わした後、最後の敵に止めを刺す。
するともう一人、茂みから誰かが出てきた。
「また敵か!?」
「いや、私は貴族のヴィオール。たまたま通りかかったら君たちが襲われていたので、加勢したまでさ」
ヴィオールと名乗った男は弓矢を持っている。先程クロムを助けてくれたのは彼なのだろうか。
辺りの不穏な気配が一旦落ち着いたところで、俺は漸く、最初に助けてくれた人のことを思い出す。
「そういえば……最初に俺のことを助けてくれた人が、いない」
「助けてくれた人?」
「ああ。あれに襲われかけた俺を助けてくれた。俺の名前を知っているようだったけど……」
そこまで考えて、ふっと、それはあり得ない、ということに気が付いた。
だって俺の名前は、今日、クロムに与えられたものだ。まさか俺が記憶を失う前も同じ名前だったなんて奇跡は、有り得なくはないが確率としては非常に低い。
これはちょっとしたホラーだ。一体誰だったのだろう。考えると怖いのであまり考えたくはないが。
俺が落ち込んでいるとフレデリクが声を上げる。
「夜は危ないので移動は避けたいですが、この状況では、ここに留まる方が危険です。今から歩けば、太陽が昇る頃には王宮に着く筈です。皆さん行きましょう」
「私も同行していいかい?」
「……どうぞ」
ヴィオールが尋ねると、少し渋った後にフレデリクは頷いた。俺の時よりやけにあっさりだな、と思ったが、彼も俺たちのことを助けてくれたのは違いない。こんな所に置いて行って危ない目に遭われるのも嫌だし。
俺たちは言葉少なに出発した。一体あれらが何だったのか、俺を助けてくれたのは誰なのか、考えても答えは出なかった。
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