僕は君に愛させたい(FE覚醒/クロム)
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「おーい」
「……?」
「おい、大丈夫か?」
潜った光の眩さに目を閉じていた。
しかし遠くから聞こえてくる、俺を呼ぶ声に、恐る恐る目を開ける。
「良かった。意識はあるようだな」
「……!」
ぱっと目を開いた瞬間、俺の顔を覗き込んでいた男と目が合う。
その時、俺の胸はどきりと大きく鳴る。
「俺はクロム。お前は?」
「クロム……」
クロム。聞いたことがある名だ。
そう思いながら、名乗った男に手を貸され、俺は上半身を起こす。
周りをきょろきょろと見渡すと、一面草原だが、遠くの方に建物が見えた。どういうことなのかは分からないし、ここがどこなのか全く見覚えはないが、先程のよく分からない部屋からは出られたようだ。少し安堵した。
今の状況について、また「クロム」という聞き覚えのある名前について思い出そうとするが、途中で頭が痛んだ。まるでそれ以上思い出すことを拒んでいるかのように。
思わず頭を押さえると、心配した声音で男は言う。
「頭が痛いのか? 大丈夫か?」
「ああ、ううん……大丈夫だ」
「そうか、ならいいんだが……いきなりで悪いが、よかったら名前を聞かせてくれないか」
「名前……」
俺の顔を覗き込んでいた男、クロムに尋ねられ、俺は再び思い出そうとした。
いや、思い出そうとした、というのはおかしいか。普通、名前なんて、考えなくても分かっている筈なのに。
そしてやはり、俺の頭は痛んだ。自身の名前さえ思い出したくないのか?
「名前……は、分からない……」
「分からない? 名前が分からないのか?」
「お兄ちゃーん!」
クロムが俺の言葉を繰り返すと、遠くからこちらへ向かってくる少女の声が聞こえた。
俺とクロムは思わずそちらを見る。明るい表情で手を振りながら走ってくる少女と険しい顔の男が居た。
「あっ、目が覚めたの? 私リズ! クロムお兄ちゃんの妹だよ」
「私は王宮騎士のフレデリクです」
「リズ、フレデリク、彼は自分の名前を思い出せないらしいんだ。記憶喪失かもしれない」
「記憶喪失?」
フレデリク、と名乗った男の眉間の皺がますます深くなる。
「クロム様、やはり私は反対です。記憶喪失になった振りをして、クロム様とリズ様のお命を狙っているに違いありません」
「フレデリク、それは考えすぎだ。それに記憶がないのが本当だとしたら、ますますこんな所に1人で置いていくことはできなくなる」
「ですが……」
「大丈夫、もし私たちが危なくなったら、フレデリクが守ってくれるでしょ?」
「それは当たり前です」
畳み掛けるように言うクロムとリズ。その勢いに押されるフレデリク。
フレデリクはそのまま俺の方を見た。
「……いいですか。今回はクロム様とリズ様がどうしてもと仰るから許しますが、近くの街に連れて行くだけですからね。街に着いた後は然るべき場所へ行っていただきます。あと、少しでも不審な真似をした場合は切り捨てますから」
「フレデリク、切り捨てる、って……」
「え、えっと、あの……何の話?」
俺抜きで進む話に困惑を示すと、クロムはばつの悪そうな表情をする。
「すまない、いきなり色々なことを話してしまったな。俺たちはこの辺りを見回っていたんだが、その時にお前を見つけたんだ。ここは郊外だから、いつ山賊や獣に襲われてもおかしくない。だから、とりあえず近くの街まで一緒に連れて行こうと思っていたんだが」
「フレデリクが反対してたの。フレデリクは心配性だから……」
何となく事情が呑み込めてきた。俺はここで倒れていたのか。だったらあの闇から逃げているのは夢だったのだろうか。
だとしても、ここに1人で置いて行かれるわけにはいかない。ここがどこで自分が誰なのかも思い出せないようなこの状況では。
「ああ、分かった、ありがとう。俺が不審な素振りを見せたら突き放してもらって構わないから」
俺は頷いた。
「立てるか?」
クロムが手を差し伸べてくる。
隣に居たフレデリクが嫌な顔をするのが見えたが、俺は構わずその手を取った。
ぐい、と男の力強い手に引かれ、鼓動が少しずつ高鳴り出す。
「でも、名前がないのも不便だな」
「……何か付けて」
「俺が?」
クロムの驚いた瞳が俺の方を見て、俺は頷いた。
「いや、でもな……人の名前なんて付けたことないし、」
「仮の名前でいいよ。俺がいつか、自分の名前を思い出すまででいいから。お願いします」
自分に関することを思い出そうとすればする程、頭痛はやまない。
いつか思い出せるか、なんてまだ確証はない。
けど、目を伏せて真剣に考えてくれるクロムを見て、きっと大丈夫、という気がしてきた。
「……レイシ」
「え?」
「レイシ、っていう名前は、どうだ?」
「レイシ」
クロムが漸く絞り出した言葉は、俺の耳に心地よく届く。
新しく与えられた自分の名を口に出してみれば、それが本当に自分の名前だったのではないかと思えるほどしっくりきた。
「すごい、いい感じ。ありがとうクロム」
俺は笑う。つられてクロムも笑ってくれたのがたまらなく嬉しかった。
「……?」
「おい、大丈夫か?」
潜った光の眩さに目を閉じていた。
しかし遠くから聞こえてくる、俺を呼ぶ声に、恐る恐る目を開ける。
「良かった。意識はあるようだな」
「……!」
ぱっと目を開いた瞬間、俺の顔を覗き込んでいた男と目が合う。
その時、俺の胸はどきりと大きく鳴る。
「俺はクロム。お前は?」
「クロム……」
クロム。聞いたことがある名だ。
そう思いながら、名乗った男に手を貸され、俺は上半身を起こす。
周りをきょろきょろと見渡すと、一面草原だが、遠くの方に建物が見えた。どういうことなのかは分からないし、ここがどこなのか全く見覚えはないが、先程のよく分からない部屋からは出られたようだ。少し安堵した。
今の状況について、また「クロム」という聞き覚えのある名前について思い出そうとするが、途中で頭が痛んだ。まるでそれ以上思い出すことを拒んでいるかのように。
思わず頭を押さえると、心配した声音で男は言う。
「頭が痛いのか? 大丈夫か?」
「ああ、ううん……大丈夫だ」
「そうか、ならいいんだが……いきなりで悪いが、よかったら名前を聞かせてくれないか」
「名前……」
俺の顔を覗き込んでいた男、クロムに尋ねられ、俺は再び思い出そうとした。
いや、思い出そうとした、というのはおかしいか。普通、名前なんて、考えなくても分かっている筈なのに。
そしてやはり、俺の頭は痛んだ。自身の名前さえ思い出したくないのか?
「名前……は、分からない……」
「分からない? 名前が分からないのか?」
「お兄ちゃーん!」
クロムが俺の言葉を繰り返すと、遠くからこちらへ向かってくる少女の声が聞こえた。
俺とクロムは思わずそちらを見る。明るい表情で手を振りながら走ってくる少女と険しい顔の男が居た。
「あっ、目が覚めたの? 私リズ! クロムお兄ちゃんの妹だよ」
「私は王宮騎士のフレデリクです」
「リズ、フレデリク、彼は自分の名前を思い出せないらしいんだ。記憶喪失かもしれない」
「記憶喪失?」
フレデリク、と名乗った男の眉間の皺がますます深くなる。
「クロム様、やはり私は反対です。記憶喪失になった振りをして、クロム様とリズ様のお命を狙っているに違いありません」
「フレデリク、それは考えすぎだ。それに記憶がないのが本当だとしたら、ますますこんな所に1人で置いていくことはできなくなる」
「ですが……」
「大丈夫、もし私たちが危なくなったら、フレデリクが守ってくれるでしょ?」
「それは当たり前です」
畳み掛けるように言うクロムとリズ。その勢いに押されるフレデリク。
フレデリクはそのまま俺の方を見た。
「……いいですか。今回はクロム様とリズ様がどうしてもと仰るから許しますが、近くの街に連れて行くだけですからね。街に着いた後は然るべき場所へ行っていただきます。あと、少しでも不審な真似をした場合は切り捨てますから」
「フレデリク、切り捨てる、って……」
「え、えっと、あの……何の話?」
俺抜きで進む話に困惑を示すと、クロムはばつの悪そうな表情をする。
「すまない、いきなり色々なことを話してしまったな。俺たちはこの辺りを見回っていたんだが、その時にお前を見つけたんだ。ここは郊外だから、いつ山賊や獣に襲われてもおかしくない。だから、とりあえず近くの街まで一緒に連れて行こうと思っていたんだが」
「フレデリクが反対してたの。フレデリクは心配性だから……」
何となく事情が呑み込めてきた。俺はここで倒れていたのか。だったらあの闇から逃げているのは夢だったのだろうか。
だとしても、ここに1人で置いて行かれるわけにはいかない。ここがどこで自分が誰なのかも思い出せないようなこの状況では。
「ああ、分かった、ありがとう。俺が不審な素振りを見せたら突き放してもらって構わないから」
俺は頷いた。
「立てるか?」
クロムが手を差し伸べてくる。
隣に居たフレデリクが嫌な顔をするのが見えたが、俺は構わずその手を取った。
ぐい、と男の力強い手に引かれ、鼓動が少しずつ高鳴り出す。
「でも、名前がないのも不便だな」
「……何か付けて」
「俺が?」
クロムの驚いた瞳が俺の方を見て、俺は頷いた。
「いや、でもな……人の名前なんて付けたことないし、」
「仮の名前でいいよ。俺がいつか、自分の名前を思い出すまででいいから。お願いします」
自分に関することを思い出そうとすればする程、頭痛はやまない。
いつか思い出せるか、なんてまだ確証はない。
けど、目を伏せて真剣に考えてくれるクロムを見て、きっと大丈夫、という気がしてきた。
「……レイシ」
「え?」
「レイシ、っていう名前は、どうだ?」
「レイシ」
クロムが漸く絞り出した言葉は、俺の耳に心地よく届く。
新しく与えられた自分の名を口に出してみれば、それが本当に自分の名前だったのではないかと思えるほどしっくりきた。
「すごい、いい感じ。ありがとうクロム」
俺は笑う。つられてクロムも笑ってくれたのがたまらなく嬉しかった。