アルファの受難(FEif/ゼロ)
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「……何でだ?」
ところが横になってから1時間、一向に眠れるような気がしていなかった。
外はもう太陽が殆ど沈んでいる。僅かにその姿を残すばかり。
別に空腹というわけでもないし、眠ろうと思えば眠れる筈だ。こんなに疲れているのだから。
そう思って寝返りを打ってみてもあまり効果はなかった。
「仕方ない。外の空気でも吸うか」
僕は観念した。本来なら30分でも寝られないならばもういっそベッドからは出てしまった方がいいらしい。
少し滅入った気分を変えようと思い、軽く身支度をして部屋を出た。
「さて、どこに行こうかな……」
暗夜王国を恨む人々は多い。だからあまり1人で外をうろつくなと教えられていた。けれど王城のすぐ側にある小さな森なら平気だろう。
僕はそんな風に安直に考え、森へ向かった。
森なら暗く、適度な湿気がある。交感神経を鎮めるにはうってつけだろう。まだ夕方だから周りが全く見えないわけでもないし。
そう心の中で言い訳を繰り返した。
(見つかったらまずいだろうけどな……)
特にマクベスなんかに見つかったら、父上に何と告げ口されるか分からない。僕は足早に森に入り、一周したらすぐに城へ戻ろうと思った。この時点で大分交感神経が優位になっているかもしれない。
「いつもより……木がざわついている?」
一歩、かさり、と葉が音を立てる。
僕は注意深く辺りを見回しながらもう一歩進む。
しかしすぐに、こんなにも周囲に気を遣わなければ歩けないようなら、もうここを出てしまおう。そう思った。
(気持ちは落ち着いていないけれど……)
これなら、まだフェリシアにホットミルクを持ってきてもらうよう頼んだ方がマシだったかもしれない。そういえば彼女も共に遠征に来ていたけれど、メイドや執事の体力は本当に恐れ入る。
そんなことを考えながら踵を返した、その時だった。
「プギィッ」
「っ!?」
獣が鼻を鳴らす音が聞こえた。僕は驚いて振り返る。
そこに居たのは大きな猪だった。仮に奴が二足歩行したとしたら僕と同じくらいの身長になるだろうか? そう思える程の。
その猪が僕の方へ向かってきた。僕は避ける間もなく、かといって剣を抜くほどの間もなかった。
さて城に戻った時にジョーカーに何て言われるだろうか、そもそもまず僕は無事に城へ戻れるのだろうか、と考える。
「フゴッ」
その瞬間、猪は呻いた。そしてよろめく。よく見ればその身体には矢が刺さっており、どこからか矢を射った者が居るらしかった。
猪はふらりと向きを変え、矢が飛んできた方へ向きを変えた。
その隙を見逃さず、僕は鞘から素早く剣を抜く。そして屈み、喉元から心臓に向かって剣を突き立てた。
断末魔を上げる猪。僕はすぐにその猪から距離を取り、絶命するまでの数分間、じっと見ていた。
「助かりました」
その時、横の木陰から人が出てきて僕に声を掛ける。
ふっとそちらを見ると、目が合った。
「!」
その瞬間、ぎゅっと胸が掴まれる。息が出来なくなって崩れ落ちそうになった。
「ハヤミ様、大丈夫ですか!?」
「っ、触るなっ」
だがその男に支えられ、僕は漸く立てるくらいだった。振り払うほどの力もない。
けれどその触れられたところから僕の肌は燃えるように熱くなって、ますますそこから逃げたがった。
「ハヤミ様」
「僕の名を呼ぶな。……大体、お前は何者だ」
「申し遅れました」
僕から離れた男は跪く。こちらから尋ねたこともあり流石に無碍に出来ず、渋々向き直る。
「私は、ゼロと申します。レオン様の従者を務めております」
「ゼロ……」
「失礼ですが、ハヤミ様、なぜこのような時間にここにお一人で?」
僕はその言葉には答えかねた。大体彼は僕の身分を知っているのだ。今更何を言ったところで無駄だろうが。
ある意味では気分転換になったし、僕はさっさと立ち去ることにした。聞きたいことは聞けたのだ、これ以上ここに居る必要もない。
「ハヤミ様?」
「僕は一人で戻れる。その猪は好きなようにするといい。ただし、僕が一人でここに居たことは誰にも言ってくれるな」
「はい、勿論です」
ふらつく足を叱咤しながら僕は城へ戻ろうとする。
しかし、その瞬間、後ろから抱き着かれた。
「っ、何っ」
「ハヤミ様」
「放せっ」
「どうかこちらを」
そう乞われ、思わず振り向く。嫌だ、僕の肩を、腰を抱くこの腕を、今すぐ振り払いたい筈なのに。
振り向いた瞬間、唇に柔らかい感触が触れた。
驚いて抵抗も出来ない僕に、それ以上の侵入を舌で試みる。あっさり口内に招き入れてしまったその柔らかさは僕を蹂躙した。
「は……っ」
少ししてその拘束がふっと緩まった時、僕は男を押して逃げ出す。
「ハヤミ様!」
後ろから声が聞こえるが、もう振り向かない。立ち止まらない。城に向かって走るのみだ。
やがて石畳にたどり着き、それでも速度を緩めぬままようやく自室に着いた時、僕は鍵を掛けてベッドに倒れこんだ。
そうして少し考えた。僕はどうしてあの時怒らなかったのだろうと。
「……まさかね」
やめだ。もう何も考えたくない。
今はまだ心臓がバクバクなっているし、猪に襲われたこともあって副交感神経はすっかりなりを潜めてしまった。けれどここに居ればいずれ眠れるだろう。
そう考えながら、つい先程起きたその事は、もう考えないように努めた。
ところが横になってから1時間、一向に眠れるような気がしていなかった。
外はもう太陽が殆ど沈んでいる。僅かにその姿を残すばかり。
別に空腹というわけでもないし、眠ろうと思えば眠れる筈だ。こんなに疲れているのだから。
そう思って寝返りを打ってみてもあまり効果はなかった。
「仕方ない。外の空気でも吸うか」
僕は観念した。本来なら30分でも寝られないならばもういっそベッドからは出てしまった方がいいらしい。
少し滅入った気分を変えようと思い、軽く身支度をして部屋を出た。
「さて、どこに行こうかな……」
暗夜王国を恨む人々は多い。だからあまり1人で外をうろつくなと教えられていた。けれど王城のすぐ側にある小さな森なら平気だろう。
僕はそんな風に安直に考え、森へ向かった。
森なら暗く、適度な湿気がある。交感神経を鎮めるにはうってつけだろう。まだ夕方だから周りが全く見えないわけでもないし。
そう心の中で言い訳を繰り返した。
(見つかったらまずいだろうけどな……)
特にマクベスなんかに見つかったら、父上に何と告げ口されるか分からない。僕は足早に森に入り、一周したらすぐに城へ戻ろうと思った。この時点で大分交感神経が優位になっているかもしれない。
「いつもより……木がざわついている?」
一歩、かさり、と葉が音を立てる。
僕は注意深く辺りを見回しながらもう一歩進む。
しかしすぐに、こんなにも周囲に気を遣わなければ歩けないようなら、もうここを出てしまおう。そう思った。
(気持ちは落ち着いていないけれど……)
これなら、まだフェリシアにホットミルクを持ってきてもらうよう頼んだ方がマシだったかもしれない。そういえば彼女も共に遠征に来ていたけれど、メイドや執事の体力は本当に恐れ入る。
そんなことを考えながら踵を返した、その時だった。
「プギィッ」
「っ!?」
獣が鼻を鳴らす音が聞こえた。僕は驚いて振り返る。
そこに居たのは大きな猪だった。仮に奴が二足歩行したとしたら僕と同じくらいの身長になるだろうか? そう思える程の。
その猪が僕の方へ向かってきた。僕は避ける間もなく、かといって剣を抜くほどの間もなかった。
さて城に戻った時にジョーカーに何て言われるだろうか、そもそもまず僕は無事に城へ戻れるのだろうか、と考える。
「フゴッ」
その瞬間、猪は呻いた。そしてよろめく。よく見ればその身体には矢が刺さっており、どこからか矢を射った者が居るらしかった。
猪はふらりと向きを変え、矢が飛んできた方へ向きを変えた。
その隙を見逃さず、僕は鞘から素早く剣を抜く。そして屈み、喉元から心臓に向かって剣を突き立てた。
断末魔を上げる猪。僕はすぐにその猪から距離を取り、絶命するまでの数分間、じっと見ていた。
「助かりました」
その時、横の木陰から人が出てきて僕に声を掛ける。
ふっとそちらを見ると、目が合った。
「!」
その瞬間、ぎゅっと胸が掴まれる。息が出来なくなって崩れ落ちそうになった。
「ハヤミ様、大丈夫ですか!?」
「っ、触るなっ」
だがその男に支えられ、僕は漸く立てるくらいだった。振り払うほどの力もない。
けれどその触れられたところから僕の肌は燃えるように熱くなって、ますますそこから逃げたがった。
「ハヤミ様」
「僕の名を呼ぶな。……大体、お前は何者だ」
「申し遅れました」
僕から離れた男は跪く。こちらから尋ねたこともあり流石に無碍に出来ず、渋々向き直る。
「私は、ゼロと申します。レオン様の従者を務めております」
「ゼロ……」
「失礼ですが、ハヤミ様、なぜこのような時間にここにお一人で?」
僕はその言葉には答えかねた。大体彼は僕の身分を知っているのだ。今更何を言ったところで無駄だろうが。
ある意味では気分転換になったし、僕はさっさと立ち去ることにした。聞きたいことは聞けたのだ、これ以上ここに居る必要もない。
「ハヤミ様?」
「僕は一人で戻れる。その猪は好きなようにするといい。ただし、僕が一人でここに居たことは誰にも言ってくれるな」
「はい、勿論です」
ふらつく足を叱咤しながら僕は城へ戻ろうとする。
しかし、その瞬間、後ろから抱き着かれた。
「っ、何っ」
「ハヤミ様」
「放せっ」
「どうかこちらを」
そう乞われ、思わず振り向く。嫌だ、僕の肩を、腰を抱くこの腕を、今すぐ振り払いたい筈なのに。
振り向いた瞬間、唇に柔らかい感触が触れた。
驚いて抵抗も出来ない僕に、それ以上の侵入を舌で試みる。あっさり口内に招き入れてしまったその柔らかさは僕を蹂躙した。
「は……っ」
少ししてその拘束がふっと緩まった時、僕は男を押して逃げ出す。
「ハヤミ様!」
後ろから声が聞こえるが、もう振り向かない。立ち止まらない。城に向かって走るのみだ。
やがて石畳にたどり着き、それでも速度を緩めぬままようやく自室に着いた時、僕は鍵を掛けてベッドに倒れこんだ。
そうして少し考えた。僕はどうしてあの時怒らなかったのだろうと。
「……まさかね」
やめだ。もう何も考えたくない。
今はまだ心臓がバクバクなっているし、猪に襲われたこともあって副交感神経はすっかりなりを潜めてしまった。けれどここに居ればいずれ眠れるだろう。
そう考えながら、つい先程起きたその事は、もう考えないように努めた。