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「ねえ、どこに行くつもり?」
俺は男の後ろ姿に声を掛ける。
その先は崖。一面銀世界で、生命が全て息絶えてしまったと思しき世界。
「……クロノがいないから、後を追うつもり?」
そう言うと、ようやく男は振り返った。
その冥い色の瞳は、俺を映してなんかいないのだろうと、分かっていても。
「やめなよ、そんな馬鹿なこと。あんたなら分かってるんでしょ。そんな所にいないって」
クロノは俺たちを残して死んでしまった、……のかもしれない。
彼が身体を張って守ったものは、この世界にあるのだろうか。
行方知れずなだけかもしれない、と言って、マールはクロノを捜すことは諦めてはいない。
「私の何を知っているつもりだ?」
「さあね。でも、クロノに尋常じゃない執着心を抱いてたことなら知ってるよ」
魔王は初めて会った時からそうだった。
クロノや俺だけじゃなく、カエルやマールたちだって居たのに、その目に映しているのはクロノだけだった。
どうしてそんなに想っているのか、胸が少し痛むこともあったけれど。
「とりあえず、早くこっちに戻ってきなよ、魔王」
俺は手を伸ばす。
「クロノはそんな所にはいない。少なくとも、そこであんたを待ってるような人じゃない」
「私が死ぬとでも?」
「俺が背中を押せば、すぐにでも落ちちゃいそうだけど?」
ふん、と鼻で笑って魔王はこちらに戻ってきた。
「何故そんなに私に干渉する?」
「いやあ、だって魔王が死ぬと、クロノが悲しむ」
か、どうかは分からないが。
そんな相思相愛だったら、どれだけ嫉妬しようと、俺の入り込む余地はない。
「……かも?」
「死んで困るのはクロノではなく、お前だろう?」
「……バレてた?」
あ、俺が映った。
魔王の闇色の瞳に、俺の姿を見出す。
「ようやく見たね、俺のこと」
「馬鹿なことを言うな。――クロノは、生きている」
「えっ?」
「あんなもので死ぬ奴ではない」
そう言うと、魔王は俺の横を通り過ぎていった。
「ちょっと待ってよ、」
「ついてくるか? レイシ」
「!」
今。
今、俺の、名前。
思わず息が詰まりそうになる。
「……名前」
「知っていると不満か?」
「いや、そういうわけじゃないけど」
何だ、俺のこと、ちゃんと知っていたのか。もしかしたら俺が知らないだけで、その瞳の奥には、ちゃんといたのか?
少し嬉しくなって――クロノが生きている、と断言されたのもあって――俺は飛び跳ねるようにして、魔王の後をついていった。
2016.05.04
俺は男の後ろ姿に声を掛ける。
その先は崖。一面銀世界で、生命が全て息絶えてしまったと思しき世界。
「……クロノがいないから、後を追うつもり?」
そう言うと、ようやく男は振り返った。
その冥い色の瞳は、俺を映してなんかいないのだろうと、分かっていても。
「やめなよ、そんな馬鹿なこと。あんたなら分かってるんでしょ。そんな所にいないって」
クロノは俺たちを残して死んでしまった、……のかもしれない。
彼が身体を張って守ったものは、この世界にあるのだろうか。
行方知れずなだけかもしれない、と言って、マールはクロノを捜すことは諦めてはいない。
「私の何を知っているつもりだ?」
「さあね。でも、クロノに尋常じゃない執着心を抱いてたことなら知ってるよ」
魔王は初めて会った時からそうだった。
クロノや俺だけじゃなく、カエルやマールたちだって居たのに、その目に映しているのはクロノだけだった。
どうしてそんなに想っているのか、胸が少し痛むこともあったけれど。
「とりあえず、早くこっちに戻ってきなよ、魔王」
俺は手を伸ばす。
「クロノはそんな所にはいない。少なくとも、そこであんたを待ってるような人じゃない」
「私が死ぬとでも?」
「俺が背中を押せば、すぐにでも落ちちゃいそうだけど?」
ふん、と鼻で笑って魔王はこちらに戻ってきた。
「何故そんなに私に干渉する?」
「いやあ、だって魔王が死ぬと、クロノが悲しむ」
か、どうかは分からないが。
そんな相思相愛だったら、どれだけ嫉妬しようと、俺の入り込む余地はない。
「……かも?」
「死んで困るのはクロノではなく、お前だろう?」
「……バレてた?」
あ、俺が映った。
魔王の闇色の瞳に、俺の姿を見出す。
「ようやく見たね、俺のこと」
「馬鹿なことを言うな。――クロノは、生きている」
「えっ?」
「あんなもので死ぬ奴ではない」
そう言うと、魔王は俺の横を通り過ぎていった。
「ちょっと待ってよ、」
「ついてくるか? レイシ」
「!」
今。
今、俺の、名前。
思わず息が詰まりそうになる。
「……名前」
「知っていると不満か?」
「いや、そういうわけじゃないけど」
何だ、俺のこと、ちゃんと知っていたのか。もしかしたら俺が知らないだけで、その瞳の奥には、ちゃんといたのか?
少し嬉しくなって――クロノが生きている、と断言されたのもあって――俺は飛び跳ねるようにして、魔王の後をついていった。
2016.05.04