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title by spiritus
「どうか、僕を屋根裏部屋に迎え入れてほしい。」
物語を探しに出ていた筈の双子が、ある伝言を携え、屋根裏部屋に帰ってきた。
イヴェールは訝しむ。
「彼は一体?」
「あなたが産まれるには相応しくない物語ですわ、ムシュー」
ヴィオレットはにべもなく答えた。
「でも、面白くはないか」
「いいえ面白くありませんわ。彼はなぜここのことを知っているんですの?」
「それは僕も訊きたいところさ」
だから招き入れてやろうじゃないか、とウインクするイヴェール。
そう日が経たない内に、たった3人だけだった屋根裏部屋は、俄に騒がしくなった。
異邦の者の訪問だ。イヴェールは久方ぶりの訪問者に胸を踊らせる。
「こんにちわ、屋根裏の主と姫君」
「まあ、失礼な方ですのね」
「僕はイヴェール。こっちはヴィオレットとオルタンシアだ」
「よろしくお願いしますわ、ムシュー」
「こちらこそ。僕はレイシと言う」
さっそくだけど、とイヴェールは言う。
「なぜ君はここのことを?」
「それは簡単な話だ。昔ここにいたからさ」
「昔?」
双子は顔を見合わせた。
「幾度目かの生の末、僕は思い出したんだ、ここのことを。それで今はどうなっているのか知りたいと思ってね」
「ではあなたは、望む物語を見つけたのではないのですか?」
「その通りだよ、姫君」
招かれた男は流暢に語る。
「けれど再びここに招かれたからには、僕は容易には生まれ得ないということさ」
「暫くここで過ごすつもりかい?」
「勿論。君たちがいいなら」
だが一度屋根裏部屋に囚われてしまった魂は、簡単には出られない。3人はそれを知っている。
渋々ではあるがそれを認めると、彼はとても嬉しそうに笑った。
幾日もの間、彼は外の世界で得た知識をイヴェールに話した。時折イヴェールは口をはさみ、議論に花が咲く。
ヴィオレットとオルタンシアもいつの間にか彼のいる風景に慣れ始め、気がつけば、彼はその中に欠かせない存在となっていた。
そんな折。
「ムシュー、もう直時間となりますわ」
「……そうだね」
彼らが再び、この屋根裏部屋から旅立つ時が来た。
イヴェールはレイシに視線を向ける。
「お別れだね」
「寂しい?」
「勿論」
間髪入れずに答えるイヴェールに彼は笑った。いつものように。
「大丈夫。再び必ず会える」
「そんな確証などあるだろうか」
「僕たちの魂は繋がっている。そうだろう?」
双子は頷く。
「……寂しくないのか、レイシは?」
「勿論寂しいに決まってる」
そう言い、レイシはイヴェールを抱きしめた。
「でもこうでも言わなきゃ、君は安心して出かけては行けないだろう?」
その言葉はイヴェールの胸をきゅっと締め付ける。
「……必ず会おう、再び」
「ああ」
「それまで留守を頼むよ、ヴィオレット、オルタンシア」
「oui」
4人はこの屋根裏部屋からバラバラの道へ往く。それでもどこかでその道は繋がるだろう。
再び会える時を信じ、振り返らずに、部屋を出た。
「どうか、僕を屋根裏部屋に迎え入れてほしい。」
物語を探しに出ていた筈の双子が、ある伝言を携え、屋根裏部屋に帰ってきた。
イヴェールは訝しむ。
「彼は一体?」
「あなたが産まれるには相応しくない物語ですわ、ムシュー」
ヴィオレットはにべもなく答えた。
「でも、面白くはないか」
「いいえ面白くありませんわ。彼はなぜここのことを知っているんですの?」
「それは僕も訊きたいところさ」
だから招き入れてやろうじゃないか、とウインクするイヴェール。
そう日が経たない内に、たった3人だけだった屋根裏部屋は、俄に騒がしくなった。
異邦の者の訪問だ。イヴェールは久方ぶりの訪問者に胸を踊らせる。
「こんにちわ、屋根裏の主と姫君」
「まあ、失礼な方ですのね」
「僕はイヴェール。こっちはヴィオレットとオルタンシアだ」
「よろしくお願いしますわ、ムシュー」
「こちらこそ。僕はレイシと言う」
さっそくだけど、とイヴェールは言う。
「なぜ君はここのことを?」
「それは簡単な話だ。昔ここにいたからさ」
「昔?」
双子は顔を見合わせた。
「幾度目かの生の末、僕は思い出したんだ、ここのことを。それで今はどうなっているのか知りたいと思ってね」
「ではあなたは、望む物語を見つけたのではないのですか?」
「その通りだよ、姫君」
招かれた男は流暢に語る。
「けれど再びここに招かれたからには、僕は容易には生まれ得ないということさ」
「暫くここで過ごすつもりかい?」
「勿論。君たちがいいなら」
だが一度屋根裏部屋に囚われてしまった魂は、簡単には出られない。3人はそれを知っている。
渋々ではあるがそれを認めると、彼はとても嬉しそうに笑った。
幾日もの間、彼は外の世界で得た知識をイヴェールに話した。時折イヴェールは口をはさみ、議論に花が咲く。
ヴィオレットとオルタンシアもいつの間にか彼のいる風景に慣れ始め、気がつけば、彼はその中に欠かせない存在となっていた。
そんな折。
「ムシュー、もう直時間となりますわ」
「……そうだね」
彼らが再び、この屋根裏部屋から旅立つ時が来た。
イヴェールはレイシに視線を向ける。
「お別れだね」
「寂しい?」
「勿論」
間髪入れずに答えるイヴェールに彼は笑った。いつものように。
「大丈夫。再び必ず会える」
「そんな確証などあるだろうか」
「僕たちの魂は繋がっている。そうだろう?」
双子は頷く。
「……寂しくないのか、レイシは?」
「勿論寂しいに決まってる」
そう言い、レイシはイヴェールを抱きしめた。
「でもこうでも言わなきゃ、君は安心して出かけては行けないだろう?」
その言葉はイヴェールの胸をきゅっと締め付ける。
「……必ず会おう、再び」
「ああ」
「それまで留守を頼むよ、ヴィオレット、オルタンシア」
「oui」
4人はこの屋根裏部屋からバラバラの道へ往く。それでもどこかでその道は繋がるだろう。
再び会える時を信じ、振り返らずに、部屋を出た。