庭球
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「ねえ光、これ見てー」
「何してんすか」
放課後、一番乗りでテニスコートに来ていた俺は、いつかと同じ様に花を手に取っていた。
色々な野花が咲いているので、占いには事欠きそうもない。そんなことを考えていたところ、程なくして光がやってきた。
「よう飽きずに花占いやりますね」
「ううん、タンポポ占い」
「タンポポ占い? 綿毛占いの間違いじゃ」
「うるさいな。綿毛だとなんかロマンチックじゃないじゃん」
確かに俺が手に取っているのはタンポポがすっかり姿を変えてしまった状態だ。
小学生の頃はよく綿毛を吹いて遊んだものだ。先生が、タンポポの綿毛が耳に入ったら病気になるからあんまり綿毛で遊ぶなとか怒っていたっけ。まあ気にせず遊んでいたけど。
「綿毛一本ずつ千切ってんの?」
「まさか。息をね、吹くんだよ」
そう言って俺は光に向かって綿毛を掲げ、息を吹いた。
が、風下に居たのは俺だった。吹かれた綿毛が顔に直撃して俺はぐわっと呻く。
「……アホちゃいます?」
「アホって言うな!」
で、と言って光も俺の隣にしゃがんだ。
「息を吹いて、どう占ってんすか」
「一息で全ての綿毛が飛べば情熱的に愛されている、少し残れば心離れの気配がある、沢山残れば相手があなたに無関心……」
「ぎょうさん残ってますね」
「光のばか!」
確かに俺の綿毛はほぼそこに残っていた。多分角度が原因だ。
隣の光も綿毛を手に取る。
「でも綿毛占いなんてアホらしいこと考えますね」
「タンポポ占いだってば」
「どっちでもええですわそんなん。大体、息をよう吹けばそりゃあ全部飛んでくに決まってますわ」
「つまんないこと言うなよ」
そう言って光は綿毛を吹く、それらは俺の頬をかすめ、1つ残らず遠くへ飛び立っていった。
俺は思わず、おお、と言う。
「ほら」
「まあ当然じゃん? 俺は光のこと情熱的に愛してるもんね」
「はいはい」
光は適当にあしらった後、俺の綿毛を持っている方の手を掴み、引き寄せた。
「え、何?」
「残ってたら縁起悪いんでしょ?」
「いや別に、縁起とかは大丈夫だと思うけど」
ふっと光の息に吹かれた綿毛は残らず飛んでいった。2人の手には萼が残されている。
夕焼けの空に舞う綿毛を見ながら、俺はぽつりと呟いた。
「……俺も綿毛になりたいな」
「はあ?」
「光の息に吹かれたい」
もう、アホか、とも言われない。これはもう救いようがないと思われたんだろう。いつものことだが。
ぼーっと綿毛の飛んで行った方を見ていると、いきなり顎を掴まれる。
「な、光?」
「もう訳分からんこと言えんように、黙らせてやりますわ」
存外に強いその力からは逃れられる筈もなく、ましてや逃れようとも思っていない俺にしてみれば、好都合。
軽く目を閉じて、綿毛になってしまえばもう触れられないその温もりを味わった。
「何してんすか」
放課後、一番乗りでテニスコートに来ていた俺は、いつかと同じ様に花を手に取っていた。
色々な野花が咲いているので、占いには事欠きそうもない。そんなことを考えていたところ、程なくして光がやってきた。
「よう飽きずに花占いやりますね」
「ううん、タンポポ占い」
「タンポポ占い? 綿毛占いの間違いじゃ」
「うるさいな。綿毛だとなんかロマンチックじゃないじゃん」
確かに俺が手に取っているのはタンポポがすっかり姿を変えてしまった状態だ。
小学生の頃はよく綿毛を吹いて遊んだものだ。先生が、タンポポの綿毛が耳に入ったら病気になるからあんまり綿毛で遊ぶなとか怒っていたっけ。まあ気にせず遊んでいたけど。
「綿毛一本ずつ千切ってんの?」
「まさか。息をね、吹くんだよ」
そう言って俺は光に向かって綿毛を掲げ、息を吹いた。
が、風下に居たのは俺だった。吹かれた綿毛が顔に直撃して俺はぐわっと呻く。
「……アホちゃいます?」
「アホって言うな!」
で、と言って光も俺の隣にしゃがんだ。
「息を吹いて、どう占ってんすか」
「一息で全ての綿毛が飛べば情熱的に愛されている、少し残れば心離れの気配がある、沢山残れば相手があなたに無関心……」
「ぎょうさん残ってますね」
「光のばか!」
確かに俺の綿毛はほぼそこに残っていた。多分角度が原因だ。
隣の光も綿毛を手に取る。
「でも綿毛占いなんてアホらしいこと考えますね」
「タンポポ占いだってば」
「どっちでもええですわそんなん。大体、息をよう吹けばそりゃあ全部飛んでくに決まってますわ」
「つまんないこと言うなよ」
そう言って光は綿毛を吹く、それらは俺の頬をかすめ、1つ残らず遠くへ飛び立っていった。
俺は思わず、おお、と言う。
「ほら」
「まあ当然じゃん? 俺は光のこと情熱的に愛してるもんね」
「はいはい」
光は適当にあしらった後、俺の綿毛を持っている方の手を掴み、引き寄せた。
「え、何?」
「残ってたら縁起悪いんでしょ?」
「いや別に、縁起とかは大丈夫だと思うけど」
ふっと光の息に吹かれた綿毛は残らず飛んでいった。2人の手には萼が残されている。
夕焼けの空に舞う綿毛を見ながら、俺はぽつりと呟いた。
「……俺も綿毛になりたいな」
「はあ?」
「光の息に吹かれたい」
もう、アホか、とも言われない。これはもう救いようがないと思われたんだろう。いつものことだが。
ぼーっと綿毛の飛んで行った方を見ていると、いきなり顎を掴まれる。
「な、光?」
「もう訳分からんこと言えんように、黙らせてやりますわ」
存外に強いその力からは逃れられる筈もなく、ましてや逃れようとも思っていない俺にしてみれば、好都合。
軽く目を閉じて、綿毛になってしまえばもう触れられないその温もりを味わった。