FE
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
title by spiritus
(FEH)
「ねえミシェイル、君は凄いね」
僕が唐突にそう話しかけると、ミシェイルはこちらを怪訝そうな顔で振り向いたものの、特に何も返答はしない。
「元の世界では軍を率いていたのでしょう? そのカリスマ性も勿論だし、戦いの才能もある。全く非の打ち所のない人だ」
「……召喚士、おまえ、馬鹿にしているのか?」
「馬鹿に? まさか!」
漸く口を開いてくれたと思ったら、そこから発せられたのはあまりに辛辣な言葉で。
僕は慌てて否定し、ただ純粋に素晴らしいと思った点を言い述べただけなのだ、と弁明する。
「俺が必要なら責務は果たす。それ以外のことで面倒は掛けるな」
「……はい。すみません」
ミシェイルはそれだけ言い置くとさっさと自室へ立ち去ってしまう。
何か悪いことを言っただろうか? と考えてみてもよく分からない。
それでも人の性格も色々なので、きっと彼に今の誉め言葉は合わなかったのだ、と納得する。
「次はどういう風に褒めようかな」
そんなことを考えながら、僕は次に褒めるべき人を探し始めた。
ある時、戦闘の経験を積むことを目的にして、ミシェイルらと塔へ出かけた。
相変わらず無茶苦茶な強さだったのだが、だんだんとその強さにも慣れてくる。
「この辺りは大分楽になってきたね」
笑顔を見せながらミシェイルにそう言うと、またもや無視される。
「次はもう少し強い所に行ってみようか」
その判断は妥当だっただろう。彼らの経験からして決して無理な数値ではない。他のパーティでもこういった段階の踏み方は実践済みだったし。
そう思って次のフロアに足を踏み入れた、しかし何故か、そこの空気は今までとは全く異なっていた。
「……これは、少し苦戦しそうかも」
最近、塔のフロアに足を踏み入れる前にフロアの敵たちの武器種が分かるという能力を身に付けたのだが、僕は今回は完全にそれを怠ってしまっていた。
鑑みればこちらと敵との相性は、こちらが全体的に悪めだ。メンバー同士は相性を補完できるようパーティを組んできていたのだが。
「何も考えず、俺たちが勝てるように指示しろ。お前がやることはそれだけだ」
「ミシェイル……」
「倒せと言うのなら、俺たちはそれに従う」
背中を見せて言うミシェイル。僕は少し驚いたが、彼の言うことはあまりに当然だ。頷いて答えた。
「任せて。皆のこと、必ず勝利に導いてみせる」
戦うことのできない僕は、戦略を考え、皆に指示することしかできない。けれど大所帯である彼らには誰かが指示をしなければならないのだ。
それは今のところ僕にしかできないことだ。そう、何としてもやり遂げなければならない。
苦しい戦いながらも光明が見えてきた。僕はほっと安堵する。
皆もまだ当然緊張感は持っていたが、これは勝てそうだ、と思えてきたらしい。
そんな瞬間だった。
「!」
ランスペガサスがこちらに向かってくる。明らかに僕を狙っている。
僕とペガサスの間に仲間はいない。
「レイシ!」
ミシェイルが僕の名を呼んだ。けれど僕はもう駄目だと思った。既に槍は振りかざされている。
頭を手で覆い目を閉じる。抗う術のない子供みたいだな、と思った。
「っ、何をしている!」
「! ミシェイル……」
「早くそこから避けろ!」
ミシェイルのオートクレールがペガサスの振り下ろした槍を受け止める。
大きな声で言われ、僕は慌てて遠くへ逃げた。
「次の指示を!」
「え! あ……」
いつの間にか敵の行動できるターンは終わっていたようだった。それでも僕の脈拍は上がったまま落ち着かない。
皆不安そうな顔でこちらを見ていた。
――そうだ、今は勝つことだけ考えなくては。反省や弁明なんて、後からいくらでも出来る。
僕は何度か深呼吸を繰り返し、無理やり、自分は平静を保っていると言い聞かせる。
「――皆、ごめん。もう少しだけ力を貸して」
そう言葉にし、次の指示を出した。
戦いが無事に終わった後、僕はあまりに疲れ切ってその場に座り込んだ。皆が集まってくるが、先に戻っていて、と答える。
しかしミシェイルだけは帰らずに僕を見下ろしていた。
「ミシェイル……ごめんなさい」
沈黙に耐えかね、小さく言う。
「何を謝ることがある?」
「だって、その……迷惑を、掛けた」
「迷惑、か」
先日、「責務は果たすがそれ以外のことで迷惑を掛けるな」と言われたばかりだ。
それを念頭にそう言ったのだが、ミシェイルはふん、と鼻を鳴らす。
「確かに、武器を持たないお前が戦場に共に出てくることにはリスクがあるな。先程のようなことがこれから先、また起こらないとも限らない」
「……そうだよね」
「しかし、俺たちにはない先を見通す力、戦略を立てる力がお前にはある。それならお前が指示し、俺が戦えばいいだろう」
「え……」
ミシェイルが口にした言葉は僕が想定した内容とあまりに違いすぎて、思わず顔を上げた。
「だがまたあのようなことが起これば、俺がまた守れるとは限らない。だからお前にはもう少し安全な所にいろ」
「……はい」
分かったなら帰るぞ、と。
ミシェイルのドラゴンの背に乗せてもらう。僕は後ろからミシェイルにしがみつく。
「……ありがとう、ミシェイル」
「何だ、いきなり」
「ミシェイルが助けてくれなかったら、僕、」
そこまで言って恐ろしくなって口を噤んだ。死んでいたかも、なんて。
折角助かったのに縁起でもない。
「心配するな。可能な限り、俺が守る」
「ミシェイル……」
「だから的確な指示をしろ。レイシ、お前に望むのはそれだけだ」
その言葉はぶっきらぼうだが裏に潜むのは優しさだ。それくらい分かる。
僕は嬉しくて回した腕に力を込めた。ずっとこうしていられたらいいのに。
ミシェイルの一人称「俺」にやられた…
(FEH)
「ねえミシェイル、君は凄いね」
僕が唐突にそう話しかけると、ミシェイルはこちらを怪訝そうな顔で振り向いたものの、特に何も返答はしない。
「元の世界では軍を率いていたのでしょう? そのカリスマ性も勿論だし、戦いの才能もある。全く非の打ち所のない人だ」
「……召喚士、おまえ、馬鹿にしているのか?」
「馬鹿に? まさか!」
漸く口を開いてくれたと思ったら、そこから発せられたのはあまりに辛辣な言葉で。
僕は慌てて否定し、ただ純粋に素晴らしいと思った点を言い述べただけなのだ、と弁明する。
「俺が必要なら責務は果たす。それ以外のことで面倒は掛けるな」
「……はい。すみません」
ミシェイルはそれだけ言い置くとさっさと自室へ立ち去ってしまう。
何か悪いことを言っただろうか? と考えてみてもよく分からない。
それでも人の性格も色々なので、きっと彼に今の誉め言葉は合わなかったのだ、と納得する。
「次はどういう風に褒めようかな」
そんなことを考えながら、僕は次に褒めるべき人を探し始めた。
ある時、戦闘の経験を積むことを目的にして、ミシェイルらと塔へ出かけた。
相変わらず無茶苦茶な強さだったのだが、だんだんとその強さにも慣れてくる。
「この辺りは大分楽になってきたね」
笑顔を見せながらミシェイルにそう言うと、またもや無視される。
「次はもう少し強い所に行ってみようか」
その判断は妥当だっただろう。彼らの経験からして決して無理な数値ではない。他のパーティでもこういった段階の踏み方は実践済みだったし。
そう思って次のフロアに足を踏み入れた、しかし何故か、そこの空気は今までとは全く異なっていた。
「……これは、少し苦戦しそうかも」
最近、塔のフロアに足を踏み入れる前にフロアの敵たちの武器種が分かるという能力を身に付けたのだが、僕は今回は完全にそれを怠ってしまっていた。
鑑みればこちらと敵との相性は、こちらが全体的に悪めだ。メンバー同士は相性を補完できるようパーティを組んできていたのだが。
「何も考えず、俺たちが勝てるように指示しろ。お前がやることはそれだけだ」
「ミシェイル……」
「倒せと言うのなら、俺たちはそれに従う」
背中を見せて言うミシェイル。僕は少し驚いたが、彼の言うことはあまりに当然だ。頷いて答えた。
「任せて。皆のこと、必ず勝利に導いてみせる」
戦うことのできない僕は、戦略を考え、皆に指示することしかできない。けれど大所帯である彼らには誰かが指示をしなければならないのだ。
それは今のところ僕にしかできないことだ。そう、何としてもやり遂げなければならない。
苦しい戦いながらも光明が見えてきた。僕はほっと安堵する。
皆もまだ当然緊張感は持っていたが、これは勝てそうだ、と思えてきたらしい。
そんな瞬間だった。
「!」
ランスペガサスがこちらに向かってくる。明らかに僕を狙っている。
僕とペガサスの間に仲間はいない。
「レイシ!」
ミシェイルが僕の名を呼んだ。けれど僕はもう駄目だと思った。既に槍は振りかざされている。
頭を手で覆い目を閉じる。抗う術のない子供みたいだな、と思った。
「っ、何をしている!」
「! ミシェイル……」
「早くそこから避けろ!」
ミシェイルのオートクレールがペガサスの振り下ろした槍を受け止める。
大きな声で言われ、僕は慌てて遠くへ逃げた。
「次の指示を!」
「え! あ……」
いつの間にか敵の行動できるターンは終わっていたようだった。それでも僕の脈拍は上がったまま落ち着かない。
皆不安そうな顔でこちらを見ていた。
――そうだ、今は勝つことだけ考えなくては。反省や弁明なんて、後からいくらでも出来る。
僕は何度か深呼吸を繰り返し、無理やり、自分は平静を保っていると言い聞かせる。
「――皆、ごめん。もう少しだけ力を貸して」
そう言葉にし、次の指示を出した。
戦いが無事に終わった後、僕はあまりに疲れ切ってその場に座り込んだ。皆が集まってくるが、先に戻っていて、と答える。
しかしミシェイルだけは帰らずに僕を見下ろしていた。
「ミシェイル……ごめんなさい」
沈黙に耐えかね、小さく言う。
「何を謝ることがある?」
「だって、その……迷惑を、掛けた」
「迷惑、か」
先日、「責務は果たすがそれ以外のことで迷惑を掛けるな」と言われたばかりだ。
それを念頭にそう言ったのだが、ミシェイルはふん、と鼻を鳴らす。
「確かに、武器を持たないお前が戦場に共に出てくることにはリスクがあるな。先程のようなことがこれから先、また起こらないとも限らない」
「……そうだよね」
「しかし、俺たちにはない先を見通す力、戦略を立てる力がお前にはある。それならお前が指示し、俺が戦えばいいだろう」
「え……」
ミシェイルが口にした言葉は僕が想定した内容とあまりに違いすぎて、思わず顔を上げた。
「だがまたあのようなことが起これば、俺がまた守れるとは限らない。だからお前にはもう少し安全な所にいろ」
「……はい」
分かったなら帰るぞ、と。
ミシェイルのドラゴンの背に乗せてもらう。僕は後ろからミシェイルにしがみつく。
「……ありがとう、ミシェイル」
「何だ、いきなり」
「ミシェイルが助けてくれなかったら、僕、」
そこまで言って恐ろしくなって口を噤んだ。死んでいたかも、なんて。
折角助かったのに縁起でもない。
「心配するな。可能な限り、俺が守る」
「ミシェイル……」
「だから的確な指示をしろ。レイシ、お前に望むのはそれだけだ」
その言葉はぶっきらぼうだが裏に潜むのは優しさだ。それくらい分かる。
僕は嬉しくて回した腕に力を込めた。ずっとこうしていられたらいいのに。
ミシェイルの一人称「俺」にやられた…