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「……おめでとう、クロム。」
噛みしめるように口にする言葉は、鉛のように心を重くする。
「ありがとう、レイシ」
クロムと寄り添う伴侶、その幸せそうな素振りに耐えきれず、僕は足早にパーティのメイン会場を後にした。
誰も追ってきていないのを確認し、城の廊下で崩れ落ちる。
「ううっ……クロム……!」
終わらない恋などない。その夢は破れるか、愛に変わり、永久の誓いへと昇華される。
僕の場合は、初めから「終わること」が分かっていた想いだったのだ。
「どれだけ僕が、君のことを想っていたか……君のために生きてきたか……!」
戦場へ繰り出すクロムを身を挺して守っていたのは、彼が王子だからということではなく、純粋に僕を突き動かす感情のためだ。
でも同時に、叶わないことも知っていた。僕は男で、クロムも男。そんなことは初めて会った時から分かっていたことで、でも僕が惹かれてしまったことも、変えられない運命だった。
「僕のものになってほしいなんて、」
いつからそんな、分不相応な気持ちを抱いていたのだろう。
いくら悔やんでも仕方ない、座り込んだまま壁に背を預け、呼吸を整える。
ああなんと酷い顔をしているだろう、誰にも会わない内に自室へと帰り着きたい。
「――せめて彼らの間に産まれるであろう子供は、クロムに似ていますように」
そうすればきっと僕は、その子のこともまた、憎むことなく愛せる。
頬を伝う涙をそのままにしていると、やがて、遠くから走ってくる足音が聞こえた。
「レイシ! こんな所に居たのか!」
「……クロム」
「こんな所に居たら風邪引くぞ。それとも具合でも悪いのか?」
「……ううん、違う。そういうんじゃない」
僕を捜しに来たのは、あろうことか、クロム本人だった。
今はその優しさが僕の心を突き刺す、もう何事もなかったかのように、忘れてしまっていいのに。
そう思いながらも、立ち上がる気力もなく、泣き腫らした目で見つめ返す。
「ぼくは、ほんとうは、」
言葉は涙と共に流れ、消えていった。
2016.06.22
噛みしめるように口にする言葉は、鉛のように心を重くする。
「ありがとう、レイシ」
クロムと寄り添う伴侶、その幸せそうな素振りに耐えきれず、僕は足早にパーティのメイン会場を後にした。
誰も追ってきていないのを確認し、城の廊下で崩れ落ちる。
「ううっ……クロム……!」
終わらない恋などない。その夢は破れるか、愛に変わり、永久の誓いへと昇華される。
僕の場合は、初めから「終わること」が分かっていた想いだったのだ。
「どれだけ僕が、君のことを想っていたか……君のために生きてきたか……!」
戦場へ繰り出すクロムを身を挺して守っていたのは、彼が王子だからということではなく、純粋に僕を突き動かす感情のためだ。
でも同時に、叶わないことも知っていた。僕は男で、クロムも男。そんなことは初めて会った時から分かっていたことで、でも僕が惹かれてしまったことも、変えられない運命だった。
「僕のものになってほしいなんて、」
いつからそんな、分不相応な気持ちを抱いていたのだろう。
いくら悔やんでも仕方ない、座り込んだまま壁に背を預け、呼吸を整える。
ああなんと酷い顔をしているだろう、誰にも会わない内に自室へと帰り着きたい。
「――せめて彼らの間に産まれるであろう子供は、クロムに似ていますように」
そうすればきっと僕は、その子のこともまた、憎むことなく愛せる。
頬を伝う涙をそのままにしていると、やがて、遠くから走ってくる足音が聞こえた。
「レイシ! こんな所に居たのか!」
「……クロム」
「こんな所に居たら風邪引くぞ。それとも具合でも悪いのか?」
「……ううん、違う。そういうんじゃない」
僕を捜しに来たのは、あろうことか、クロム本人だった。
今はその優しさが僕の心を突き刺す、もう何事もなかったかのように、忘れてしまっていいのに。
そう思いながらも、立ち上がる気力もなく、泣き腫らした目で見つめ返す。
「ぼくは、ほんとうは、」
言葉は涙と共に流れ、消えていった。
2016.06.22