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title by spiritus
月からバロンへ帰還したセシル一行は、そこで思わぬ者の出迎えを受けた。
「君は、確か……」
「レイシだ」
昏い闇を纏った男は名乗る。
その名を聞いてはっと思い出したカインは思わず背中の槍を掴む。
しかしセシルがカインの前に立ち、優しく男に尋ねた。
「ゴルベーザの部下だね」
「そうだ。ゴルベーザ様はどこに居る」
「残念ながら、月に居るよ」
男は目に見えて動揺する。
「月? 何故!」
「可哀相に。君は何も教えてもらえなかったんだね?」
「!」
「セシル、それ以上は……」
荒く問い返した男にあくまで優しく返したセシルだったがローザが窘める。
だが、セシルは本当に彼のことを憐れんでいた。それは侮蔑ではない。
自分は漸くゴルベーザと兄弟だということを知り、弟として別れを言えたのに、自分より長くゴルベーザと共に居たであろう彼は、何も知らされないまま地上で待っていたのだ。
「お前たちがゴルベーザ様を置いてきたんだろう! 絶対に許すものか!」
「信じてもらえなくても構わないよ。君がゴルベーザの最後の言葉を聞けなかったのは事実だから」
「五月蠅い! 絶対に信じない!」
激しく取り乱すその様子に、単なる主従の想いだけではなかったことを知る。
セシルはローザと顔を見合わせた。彼を癒せるものが自分たちにあるかどうか。
「レイシ」
「……お前に呼ばれる名などない」
「ゴルベーザは最後に、君のことを置いていくような真似をして申し訳なかった、と言っていたよ」
「!」
男が怒りに目を見開く。
「嘘だ! ゴルベーザ様がそんなことを言うわけがない!」
「何故そう思うの?」
「ゴルベーザ様はいつも強く気高く、俺の助けなど、必要としない人だった……」
そこまで言い切ると、男は崩れ落ちてもう何も言わなかった。すすり泣いているようだった。
セシルは後ろに居た3人を見ると、男をその場に置いてバロン城へ戻っていく。
もう彼に掛けられる言葉など何もなかった。本当は何を言ったのか、どういう様子だったかを教えても、多分彼には何も届かないだろう。
「……可哀相だね」
「何が?」
「もうあの人には何もないんだね」
セシルは窓から外を見ながら言った。ローザは口をかたく結んだ。
月からバロンへ帰還したセシル一行は、そこで思わぬ者の出迎えを受けた。
「君は、確か……」
「レイシだ」
昏い闇を纏った男は名乗る。
その名を聞いてはっと思い出したカインは思わず背中の槍を掴む。
しかしセシルがカインの前に立ち、優しく男に尋ねた。
「ゴルベーザの部下だね」
「そうだ。ゴルベーザ様はどこに居る」
「残念ながら、月に居るよ」
男は目に見えて動揺する。
「月? 何故!」
「可哀相に。君は何も教えてもらえなかったんだね?」
「!」
「セシル、それ以上は……」
荒く問い返した男にあくまで優しく返したセシルだったがローザが窘める。
だが、セシルは本当に彼のことを憐れんでいた。それは侮蔑ではない。
自分は漸くゴルベーザと兄弟だということを知り、弟として別れを言えたのに、自分より長くゴルベーザと共に居たであろう彼は、何も知らされないまま地上で待っていたのだ。
「お前たちがゴルベーザ様を置いてきたんだろう! 絶対に許すものか!」
「信じてもらえなくても構わないよ。君がゴルベーザの最後の言葉を聞けなかったのは事実だから」
「五月蠅い! 絶対に信じない!」
激しく取り乱すその様子に、単なる主従の想いだけではなかったことを知る。
セシルはローザと顔を見合わせた。彼を癒せるものが自分たちにあるかどうか。
「レイシ」
「……お前に呼ばれる名などない」
「ゴルベーザは最後に、君のことを置いていくような真似をして申し訳なかった、と言っていたよ」
「!」
男が怒りに目を見開く。
「嘘だ! ゴルベーザ様がそんなことを言うわけがない!」
「何故そう思うの?」
「ゴルベーザ様はいつも強く気高く、俺の助けなど、必要としない人だった……」
そこまで言い切ると、男は崩れ落ちてもう何も言わなかった。すすり泣いているようだった。
セシルは後ろに居た3人を見ると、男をその場に置いてバロン城へ戻っていく。
もう彼に掛けられる言葉など何もなかった。本当は何を言ったのか、どういう様子だったかを教えても、多分彼には何も届かないだろう。
「……可哀相だね」
「何が?」
「もうあの人には何もないんだね」
セシルは窓から外を見ながら言った。ローザは口をかたく結んだ。