jojo
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「おい澪士、頼むよこの通り!」
「……そうは言ってもなー」
朝、俺は同じクラスの東方仗助に拝み倒されていた。
「俺にメリットがないだろ」
仗助とは席が前後で、積極的に話す様な間柄ではないものの、授業中に当たりそうになれば答え合わせを依頼されることもある。そんな普通の仲だ。
確かに俺はこのクラスでは「頭がいい」部類には入るが、それでも仗助だって悪くはないわけで。
「なんか奢るから! まじで!」
「……はあ……」
それにしても、何をこんなに拝み倒されているのかといえば、今日の宿題をまだやっていなかったのだそうだ。
国語の教師は当てるのがワンパターンだから、今日は仗助が当たる日だ。勿論その後ろに座る俺も当たるわけだけど。
とにかく、当たると分かっているのに宿題をやらないなんて、有り得ない話だ。
「でもさ仗助、お前普段宿題やってきてんじゃん。何で今日はやってないんだよ? 忙しかった?」
「ん? ああ、まあ……忙しかった、っていうのが正しいのかな」
「? 何だよそれ」
最近、仗助は常に気を張っているように見える。何かと戦っているかのように。
かといって一般人の俺には全く分からないが、時折疲弊している姿を見るのも確かだ。
少し可哀想になって、俺は溜息をつきながら答えた。
「……ハンバーガー」
「え?」
「ハンバーガーで、手を打ってやる」
そう言って俺は、鞄から国語のノートを出し、仗助に放り投げる。
「わ、サンキュー!」
仗助は答えて、慌てて写し出した。
放課後、仗助はいつも、虹村……ナントカという、不良っぽさで有名な奴の誘いを断り(実際不良だと思うけど)、俺と一緒に下校していた。
いや、仗助も見た目はどう見たって不良だ。普通高1でリーゼントにしたり、制服のボタンを留めずに登校する奴はいない。
「……でもさ仗助、お前って、意外とマジメだよなあ」
「あ? 何だよ急に」
「いやだって、踏み倒されたっておかしくないじゃん」
そう言いながら、俺たちは駅前のハンバーガーショップに入る。
俺は様子を伺うようにちら、と仗助を見た。
「何でも好きなモン頼んでいーぞ」
「ほんとに?」
「……常識の範囲内でな」
俺はチーズバーガーとポテトを頼む。仗助はそれより一回り大きいバーガーを注文していた。
席とっといて、と言われ、俺は店の2階に上がっていく。人はそれなりにいたが、運良く少し広めのテーブルが見つかった。
「――ノート見せただけなのにな」
別に写したかどうかなんて、教師には知りようのないことだ。国語なら勿論少しずつ答えが変わってくる問題だってあるかもしれないが、それでもたまたま同じ答えにだって成り得るから。
ていうかイマドキ、ノートを写したところで、お礼の言葉か菓子くらいが相場だろう。なんて律儀な奴なんだ。
「お待たせー」
そんなことを考えていると、俺を見つけた仗助がやってくる。
トレイの上にはバーガーとポテト、そしてジュースが。
「……俺ジュース頼んだっけ?」
「飲むだろ。ジンジャーエール」
「……何で知ってんの?」
「いっつも昼に飲んでんじゃん」
仗助はさらりと答え、俺の側にジンジャーエールを寄せてくる。
確かにジンジャーエールは俺の好きな飲み物だ。世界で一番好きだ。今の所。
でもそれを仗助が言うのは反則だろう。そう女子の気持ちになって考えたところで、ジンジャーエールに口を付ける。
「……だからモテんだよな、仗助は」
「あ? 何か言ったか?」
「いいや、何にも」
彼はよく女子に囲まれている。まあそもそもイケメンだし、それもあるけど。
そんな些細なことに気づくのも一因だろうな。
「俺は仗助さまに奢っていただけて幸せだよー」
「な、なんだよいきなり」
「安心しろって、別にこれ以上たかろうなんて思ってないから」
その興味がこちらに向くことは微塵もないだろうと思いながら、せめて席替えで、離れてしまわないように祈った。
2016.06.16
ぶどうヶ丘高校
「……そうは言ってもなー」
朝、俺は同じクラスの東方仗助に拝み倒されていた。
「俺にメリットがないだろ」
仗助とは席が前後で、積極的に話す様な間柄ではないものの、授業中に当たりそうになれば答え合わせを依頼されることもある。そんな普通の仲だ。
確かに俺はこのクラスでは「頭がいい」部類には入るが、それでも仗助だって悪くはないわけで。
「なんか奢るから! まじで!」
「……はあ……」
それにしても、何をこんなに拝み倒されているのかといえば、今日の宿題をまだやっていなかったのだそうだ。
国語の教師は当てるのがワンパターンだから、今日は仗助が当たる日だ。勿論その後ろに座る俺も当たるわけだけど。
とにかく、当たると分かっているのに宿題をやらないなんて、有り得ない話だ。
「でもさ仗助、お前普段宿題やってきてんじゃん。何で今日はやってないんだよ? 忙しかった?」
「ん? ああ、まあ……忙しかった、っていうのが正しいのかな」
「? 何だよそれ」
最近、仗助は常に気を張っているように見える。何かと戦っているかのように。
かといって一般人の俺には全く分からないが、時折疲弊している姿を見るのも確かだ。
少し可哀想になって、俺は溜息をつきながら答えた。
「……ハンバーガー」
「え?」
「ハンバーガーで、手を打ってやる」
そう言って俺は、鞄から国語のノートを出し、仗助に放り投げる。
「わ、サンキュー!」
仗助は答えて、慌てて写し出した。
放課後、仗助はいつも、虹村……ナントカという、不良っぽさで有名な奴の誘いを断り(実際不良だと思うけど)、俺と一緒に下校していた。
いや、仗助も見た目はどう見たって不良だ。普通高1でリーゼントにしたり、制服のボタンを留めずに登校する奴はいない。
「……でもさ仗助、お前って、意外とマジメだよなあ」
「あ? 何だよ急に」
「いやだって、踏み倒されたっておかしくないじゃん」
そう言いながら、俺たちは駅前のハンバーガーショップに入る。
俺は様子を伺うようにちら、と仗助を見た。
「何でも好きなモン頼んでいーぞ」
「ほんとに?」
「……常識の範囲内でな」
俺はチーズバーガーとポテトを頼む。仗助はそれより一回り大きいバーガーを注文していた。
席とっといて、と言われ、俺は店の2階に上がっていく。人はそれなりにいたが、運良く少し広めのテーブルが見つかった。
「――ノート見せただけなのにな」
別に写したかどうかなんて、教師には知りようのないことだ。国語なら勿論少しずつ答えが変わってくる問題だってあるかもしれないが、それでもたまたま同じ答えにだって成り得るから。
ていうかイマドキ、ノートを写したところで、お礼の言葉か菓子くらいが相場だろう。なんて律儀な奴なんだ。
「お待たせー」
そんなことを考えていると、俺を見つけた仗助がやってくる。
トレイの上にはバーガーとポテト、そしてジュースが。
「……俺ジュース頼んだっけ?」
「飲むだろ。ジンジャーエール」
「……何で知ってんの?」
「いっつも昼に飲んでんじゃん」
仗助はさらりと答え、俺の側にジンジャーエールを寄せてくる。
確かにジンジャーエールは俺の好きな飲み物だ。世界で一番好きだ。今の所。
でもそれを仗助が言うのは反則だろう。そう女子の気持ちになって考えたところで、ジンジャーエールに口を付ける。
「……だからモテんだよな、仗助は」
「あ? 何か言ったか?」
「いいや、何にも」
彼はよく女子に囲まれている。まあそもそもイケメンだし、それもあるけど。
そんな些細なことに気づくのも一因だろうな。
「俺は仗助さまに奢っていただけて幸せだよー」
「な、なんだよいきなり」
「安心しろって、別にこれ以上たかろうなんて思ってないから」
その興味がこちらに向くことは微塵もないだろうと思いながら、せめて席替えで、離れてしまわないように祈った。
2016.06.16
ぶどうヶ丘高校