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夕焼けを見て一番はじめに思い出すのは、あいつだ。
「おい、はなむらー、サボってんじゃねーぞー」
「……う、ん、澪士……?」
「寝てたのかよちくしょー」
言葉は汚いがやる気は感じられない。ふっと目を覚ませば、そこにはちょっと怒ったような表情のクラスメイトが居た。
――嗚呼そういえば、文化祭の準備があったような。
ごめん、と言いかけて身体を起こすと、首に刺すような痛みが走った。
「痛っ!」
「うわー、寝すぎで寝違えたってやつ?」
怒ってるような、からかっているような表情で澪士は言う。
「……いま何時?」
「18時ですけど」
「やばっ」
慌ててガタッと席から立ち上がる。そういえばホームルームの後、動いた記憶がない。
しかし再び首を捻ってしまい、「痛っ」と声が出てまた笑われる。
「悪い、澪士」
「え?」
「文化祭の準備だよな? なんも手伝ってなくて悪い」
うちのクラスは大した出し物をするわけではないが、それでも文化祭の一週間前だ。実は文化祭委員を引き受けていたし、もう1人の委員である澪士に沢山迷惑を掛けてしまっただろう。
教室の窓から見えるのは夕焼けで、澪士の身体半分を赤く染めていた。
「……はっはっは」
「?」
「まさか騙されるなんてな」
「は?」
くつくつと楽しそうに笑う澪士。
「ばかだなー花村くん。いくらお寝坊さんでもそんなに寝ないだろ。まだ16時半ですよ」
「なっ」
ばっと教室の時計を見上げると、確かにそれは16時半になろうとしていた。
……騙された。
「騙したなー!」
「あははは! 悔しいなら捕まえてみろー!」
澪士は笑いながら逃げ出す。それを追いかけていく。
校舎中を走り回って、色んな人に注目されて。
回りまわって屋上にたどり着く。
「はあ、はあ」
「俺の勝ちだな、花村。ジュースおごれ」
「えっ!? 何で俺負けたんだよ」
「だって俺を捕まえる前に座ったじゃん」
「ここまで来たらもう勝ち負けとかないだろーが! てかそんなルール聞いてねー!」
「今きめた」
「小学生かよ!」
いや小学生でも鬼ごっこのルールは最初から決まってるだろ、と言い。
一しきり言い合い、2人で寝転がって笑った。
――こんなやり取りができるのも、後どれくらいだろうか。
「仕方ねーな。ジュース奢ってやるよ」
「えっマジ?」
「だから一緒に帰ろうぜ」
そう言って澪士の方を見ると、澪士もこっちを見ていた。
その瞳に映っていることを知ってどきりとする、と同時にその中に居るのがたった1人で、安堵する。
「ああ、いいよ」
笑うこいつを、独り占めできたらいいのに。
(やっべ! 文化祭の準備忘れてた!)
(また騙されたな花村くん。今日は準備ないぜ)
(はっ?)
(他のクラスはやってるけど、うちは皆やる気ないからな!)
(……いいのか、それで……)
2016.05.12
「おい、はなむらー、サボってんじゃねーぞー」
「……う、ん、澪士……?」
「寝てたのかよちくしょー」
言葉は汚いがやる気は感じられない。ふっと目を覚ませば、そこにはちょっと怒ったような表情のクラスメイトが居た。
――嗚呼そういえば、文化祭の準備があったような。
ごめん、と言いかけて身体を起こすと、首に刺すような痛みが走った。
「痛っ!」
「うわー、寝すぎで寝違えたってやつ?」
怒ってるような、からかっているような表情で澪士は言う。
「……いま何時?」
「18時ですけど」
「やばっ」
慌ててガタッと席から立ち上がる。そういえばホームルームの後、動いた記憶がない。
しかし再び首を捻ってしまい、「痛っ」と声が出てまた笑われる。
「悪い、澪士」
「え?」
「文化祭の準備だよな? なんも手伝ってなくて悪い」
うちのクラスは大した出し物をするわけではないが、それでも文化祭の一週間前だ。実は文化祭委員を引き受けていたし、もう1人の委員である澪士に沢山迷惑を掛けてしまっただろう。
教室の窓から見えるのは夕焼けで、澪士の身体半分を赤く染めていた。
「……はっはっは」
「?」
「まさか騙されるなんてな」
「は?」
くつくつと楽しそうに笑う澪士。
「ばかだなー花村くん。いくらお寝坊さんでもそんなに寝ないだろ。まだ16時半ですよ」
「なっ」
ばっと教室の時計を見上げると、確かにそれは16時半になろうとしていた。
……騙された。
「騙したなー!」
「あははは! 悔しいなら捕まえてみろー!」
澪士は笑いながら逃げ出す。それを追いかけていく。
校舎中を走り回って、色んな人に注目されて。
回りまわって屋上にたどり着く。
「はあ、はあ」
「俺の勝ちだな、花村。ジュースおごれ」
「えっ!? 何で俺負けたんだよ」
「だって俺を捕まえる前に座ったじゃん」
「ここまで来たらもう勝ち負けとかないだろーが! てかそんなルール聞いてねー!」
「今きめた」
「小学生かよ!」
いや小学生でも鬼ごっこのルールは最初から決まってるだろ、と言い。
一しきり言い合い、2人で寝転がって笑った。
――こんなやり取りができるのも、後どれくらいだろうか。
「仕方ねーな。ジュース奢ってやるよ」
「えっマジ?」
「だから一緒に帰ろうぜ」
そう言って澪士の方を見ると、澪士もこっちを見ていた。
その瞳に映っていることを知ってどきりとする、と同時にその中に居るのがたった1人で、安堵する。
「ああ、いいよ」
笑うこいつを、独り占めできたらいいのに。
(やっべ! 文化祭の準備忘れてた!)
(また騙されたな花村くん。今日は準備ないぜ)
(はっ?)
(他のクラスはやってるけど、うちは皆やる気ないからな!)
(……いいのか、それで……)
2016.05.12