その他
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
title by spiritus
「かざはやー」
ある晴れた、涼やかな日の午前中。
互いの休日を合わせ、僕はいつものように窓を見上げながら、声を上げる。
「澪士か」
でもそこで窓がガラガラと開く時は、十中八九かざはやではない。
その同居人の陸王だ。
「陸王、おはよう。かざはやは?」
「まだ起きてきてない」
「じゃあ起こしに行くね」
そうしてこれも大体いつものことだ。陸王が玄関の鍵を開けてくれるので、僕は隙間からするりと滑り込む。
ありがとうと言いながらかざはやの部屋に忍び込んだ。
「かざはや、おはよう」
僕がそう声を掛けると、ベッドの上で顰め面をしていたかざはやが漸く目を覚ます。
ふふふと笑うと彼は飛び起きた。
「うわ、澪士!? ごめん、おはよう!」
「おはよう」
「すぐ支度するから、」
「陸王がご飯作ってくれてるみたいだから、食べてから出かけようか」
恐らく陸王は仕事だ。みどり薬局のバイト。
ダイニングへ行くと皿が3枚用意されており、陸王は先に食べ始めていた。
「……陸王はさ」
「何だ」
「一緒に出かけないの?」
嫌だと即はっきり断られる。
それもそうか、と1人で納得して、僕は自分の分のご飯、鮭、目玉焼きを皿によそう。
「楽しいよ」
かざはやがバタバタと音を立てて部屋から出てくる。
「五月蝿い」
「ごめん、おはよう! 俺の分の飯は?」
「あるよ」
3人で食卓を囲む。決して珍しい光景ではないが久しぶりだ。
「陸王、今日は朝から晩までバイト?」
「ああ」
「変なゲームしちゃダメだよ」
「陸王は花蛍さんたちに乗せられて、バイト代全部なくしちゃえばいんだよ」
「お前と一緒にするな」
「何を!」
この2人は相変わらず喧嘩ばかりだ。それも何だか楽しく思えるのは、僕がちょっとおかしいのかもしれない。
先に食べ始めた陸王はさっさと食べ終わり、必ず鍵を掛けてから出かけろよと言い残してバイトに出て行った。
残されたのは僕とかざはや。
「かざはや」
「んー」
「今日はどこ行く?」
僕とかざはやが仲良くなったのは何でだったか? 出会ったのはあの日だったってはっきり覚えてるんだけど。
かざはやは気がつけばどこかに行ってしまいそうだから――その名の通りだ――僕はどうしても捕まえておきたいって思ってる。
だからこうしてこの部屋に通うのかもしれない。
「澪士の好きな所でいいよ」
「僕はかざはやの行きたい所に行きたい」
「あっずるい」
ご飯を食べながら言うかざはやに僕は笑う。
「かざはやと一緒ならどこでも楽しいよ。かざはやのこと好きだから」
「なっ」
いつもは大体広くて静かな公園を選んで出かけている。遠くに子供の声が聞こえるような。
僕とかざはやが一緒に出掛ける時は、大体かざはやが僕を癒やしてくれる。かざはやにそういうつもりはないのかもしれないけど、僕はそう思ってる。
いつも僕の色々な記憶を探り出しては教えてくれるから。
「澪士、そういうことあんまり言うなよ」
「何で」
「……俺にはいいけど」
何故か頬を真っ赤にしながらかざはやは言う。
何で? 変なひと、と僕は笑う。
これが僕たちの普通だ。僕たちはこれで後悔していない。
そう言いながら、どこへ行こうか、と外へ出た。
「かざはやー」
ある晴れた、涼やかな日の午前中。
互いの休日を合わせ、僕はいつものように窓を見上げながら、声を上げる。
「澪士か」
でもそこで窓がガラガラと開く時は、十中八九かざはやではない。
その同居人の陸王だ。
「陸王、おはよう。かざはやは?」
「まだ起きてきてない」
「じゃあ起こしに行くね」
そうしてこれも大体いつものことだ。陸王が玄関の鍵を開けてくれるので、僕は隙間からするりと滑り込む。
ありがとうと言いながらかざはやの部屋に忍び込んだ。
「かざはや、おはよう」
僕がそう声を掛けると、ベッドの上で顰め面をしていたかざはやが漸く目を覚ます。
ふふふと笑うと彼は飛び起きた。
「うわ、澪士!? ごめん、おはよう!」
「おはよう」
「すぐ支度するから、」
「陸王がご飯作ってくれてるみたいだから、食べてから出かけようか」
恐らく陸王は仕事だ。みどり薬局のバイト。
ダイニングへ行くと皿が3枚用意されており、陸王は先に食べ始めていた。
「……陸王はさ」
「何だ」
「一緒に出かけないの?」
嫌だと即はっきり断られる。
それもそうか、と1人で納得して、僕は自分の分のご飯、鮭、目玉焼きを皿によそう。
「楽しいよ」
かざはやがバタバタと音を立てて部屋から出てくる。
「五月蝿い」
「ごめん、おはよう! 俺の分の飯は?」
「あるよ」
3人で食卓を囲む。決して珍しい光景ではないが久しぶりだ。
「陸王、今日は朝から晩までバイト?」
「ああ」
「変なゲームしちゃダメだよ」
「陸王は花蛍さんたちに乗せられて、バイト代全部なくしちゃえばいんだよ」
「お前と一緒にするな」
「何を!」
この2人は相変わらず喧嘩ばかりだ。それも何だか楽しく思えるのは、僕がちょっとおかしいのかもしれない。
先に食べ始めた陸王はさっさと食べ終わり、必ず鍵を掛けてから出かけろよと言い残してバイトに出て行った。
残されたのは僕とかざはや。
「かざはや」
「んー」
「今日はどこ行く?」
僕とかざはやが仲良くなったのは何でだったか? 出会ったのはあの日だったってはっきり覚えてるんだけど。
かざはやは気がつけばどこかに行ってしまいそうだから――その名の通りだ――僕はどうしても捕まえておきたいって思ってる。
だからこうしてこの部屋に通うのかもしれない。
「澪士の好きな所でいいよ」
「僕はかざはやの行きたい所に行きたい」
「あっずるい」
ご飯を食べながら言うかざはやに僕は笑う。
「かざはやと一緒ならどこでも楽しいよ。かざはやのこと好きだから」
「なっ」
いつもは大体広くて静かな公園を選んで出かけている。遠くに子供の声が聞こえるような。
僕とかざはやが一緒に出掛ける時は、大体かざはやが僕を癒やしてくれる。かざはやにそういうつもりはないのかもしれないけど、僕はそう思ってる。
いつも僕の色々な記憶を探り出しては教えてくれるから。
「澪士、そういうことあんまり言うなよ」
「何で」
「……俺にはいいけど」
何故か頬を真っ赤にしながらかざはやは言う。
何で? 変なひと、と僕は笑う。
これが僕たちの普通だ。僕たちはこれで後悔していない。
そう言いながら、どこへ行こうか、と外へ出た。