────嗚呼（ああ）神様､私が何をしたって言うんですか。



眼下に広がるは瓦礫やガラス片、木片などなど…。


即ち、私の家“だった”ものである。


つまり、私の家は跡形もなく崩れ去ったのであった。



原因は恐らく近界民（ネイバー）であろう。


本来ならボーダー本部と呼ばれる建物の周辺に集められている近界民が出てくる門（ゲート）。それが最近は何故か市街地にも発生しているらしい。


そして今日もつい四半刻（30分）程前にも市街地に発生した。


しかし、場所は私の家からだいぶ離れた市街地を中心に更に離れた川の方面。


私の家の周辺には絶対と言っていいほど来るはずがないのだ。


実際に、私の家以外にはこの辺りには壊れた建物は見当たらない。


そこそこ大きい家なのだが、それを差し引いても被害が出ていないのは明らかに可笑しい。



まあ、そんなことを言っていてもなくなってしまったものは仕方がない。


今は今日寝泊まりするところを探さなくては。




────私が住む此処（ここ）、三門市。人口は28万人とそこそこの都市である。4年半前の大規模侵攻で街の大部分が破壊されたが、警戒区域を除けば、それを感じさせないほどに栄えている。


ところが此処、ボーダー本部と呼ばれる建物を除くと、他に何もないのである。

そしてそのボーダー本部も関係者以外の立ち入りは禁止されている。企業もボーダー関係のものが多く、外部との交流も少ない。従って、殆どの人が三門市に住んでいるのである。


…何が言いたいのかというと、三門市（ここ）にビジネスホテルなるものはない。


治安の悪い歓楽街にホテルはあるが、それは所詮ラブホテルと呼ばれるもので、高校生が制服を着たまま訪れるのは憚られる。


因みに、今から家に泊めて貰えるような友人はいない。浅く広くの交流はあるが、お泊まりするほど深い付き合いはしていないのだ。


先程も言ったが、今日寝泊まりする所を早急に探さなくてはならない。


嗚呼、此の儘では野宿だ。