Stella Peluche
満開の桜に若葉色が混ざる頃、ステラペルーシェの三人はヴィアラクテアの会議室にいた。以前、楽曲提供の会議で来たあの部屋だ。
この春から、ヴィア ラクテアへ移籍した彼ら。
今日は今後のスケジュールや、活動予定を話すとのことだった。
「アンジーは高嶺さんとよく遣り取りしてたけど、もう詳細は聞いてるの?」
翔がチルドカップのいちごミルクを飲みながら安慈にそう訊いた。
「だいたいの方針は聞いてるよ。細かい所まではまだだけど、とりあえず今決まってる仕事はアー写の撮影」
「そう言えば、ユニット衣装が変わるんだっけ?」
安慈の言葉に、瑞貴が口を挟んだ。
「変わる、というか固定しないって方向らしいよ。霞鳥さんが、どうせならリリースやイベントでどんどんユニット衣装も変えた方が面白いってことで」
「僕はそういうの楽しみだけど、グッズのぬいぐるみの着せ替え衣装、すごい増えそうだね……」
「多分、そこも狙ってるんじゃないかな?」
「それ、なんだっけ?商魂逞しいって言うんだよね?」
「そうそう」
三人がケラケラと笑っていると、会議室のドアがノックされた。
「お待たせ!ごめんねステラペちゃん!」
そう言って会議室に入ってきたのはプロデューサーの霞鳥だった。その後に続いて、マネージャーの高嶺も入ってくる。
「霞鳥さん、お疲れ様です。改めて、よろしくお願いします」
安慈がそう挨拶をすると、霞鳥は少し驚いた顔をしたがすぐに笑った。
「そうね。改めて、ステラペルーシェの皆。よろしくね」
翔と瑞貴もニコニコしながら『よろしくお願いします』と返した。
霞鳥と高嶺が資料と思われる紙の束を机に置いてから椅子に掛ける。
「えっと、トキさんも来るんだけど役員会議が長引いてるみたいだから、先にスケジュール関係を私と玲香さんで話すね」
「はい。高嶺さんも、改めてよろしくお願いします」
「えぇ。これからも、しっかりあなた達をサポートさせてもらいますね。早速ですが、今月のスケジュールを伝えますね」
高嶺が大きなスケジュール帳を開いて話し始める。
三人も自身の学校の予定と併せながら今後の予定を聞きながらメモを取っていた。
その後は、霞鳥が宣材写真の撮影について話す。
ステラペルーシェのコンセプトは活かしながらも、ヴィアラクテアの要素も入れた衣装やヘアメイクにしていく方針だ。
「可愛らしさはもちろん入れるけれど、やっぱり結成当時よりも貴方たちも大人になってるし、大人っぽく魅せるのも良いと思っててね。それで、撮影の衣装案だけど……」
霞鳥が衣装の絵が描かれている紙を数枚並べて三人に見せる。
「あ、これ夏フェスの衣装と同じパンツだ」
翔が、ラップスカートのついたチェック柄のパンツの衣装を指してそう言った。
「そうそう。あれ、私の好みもあるけど結構評判良かったのよー。色は統一するか、それぞれのカラーにするかは合わせてみてからだけど。腰のもふもふもそのまま付けても可愛いしね」
機嫌良さそうに霞鳥が笑うと、ドアをノックする音が聞こえた。
「遅れてすまない」
ドアを開けて入ってきたのはトキだった。
手には先ほどの会議の資料もあるのか、かなりの量の紙の束を持っていた。
「お疲れ様です」
その場にいた全員がそう言うと、トキは空いている椅子に掛けた。
「お疲れ様。さて、どこまで話は進んでいるかな?」
「今月のスケジュールは伝えてあります。今は宣材写真の衣装案を見せていたところですね。後程、衣装合わせをします」
高嶺が簡潔にトキに伝えると、彼は頷いた。
「ありがとう。それじゃあ、俺からは君達の今後の活動予定を伝えようか。霞鳥さん、アレ渡してくれる?」
「はい」
トキの言葉に、霞鳥が紙が数枚セットになったものを三人に手渡す。
一年を簡潔に表した線と、そこに付随するように文字が並べられている資料だ。
「これが今年度一年分の活動予定。今年は、夏と冬にシングルを一枚ずつ出す。それに伴い、リリースイベントとしてミニライブを行う。
それから、ファンクラブ限定ライブというのもやってみてもいいと思う。これは、一日で良いと思うから君達の学業の妨げにならないシーズンにやろう。
そして、来年の2〜3月にかけて三都市を二日ずつ回るアリーナツアーを組んでいる。
アリーナだから、去年の夏フェスよりも規模は小さいけれど、プロモーションと演出は派手にしたいとは思っているよ」
トキが淡々と、しかしどこか愉しげにそう話す。
新曲のリリースに、三都市回るアリーナツアー。
今までにない活動予定に三人は緊張をしながら聞いていた。
「楽曲については、夏は君達の曲を今まで書いていたところに。冬は何かタイアップをつけようかと思っていてね、詳細はまだだけれど曲は俺が書く予定でいるからよろしくね」
トキがニコリと微笑むと、三人も笑顔で返す。
「年内の予定は、そんな感じ。君達の学校……安慈君は特に大変そうだから、スケジュール的に厳しそうなら高嶺さんに早めに伝えてくれると助かる」
「分かりました。ありがとうございます」
「翔君も瑞貴君もね。学生のうちは学業優先で」
「はい」
「それから……」
トキはそう言って資料をめくる。
「君達のドーム公演は、三年後にしようと思ってる」
「三年後……」
トキに合わせて三人も資料をめくると、大まかな今後の活動計画が記されていた。
「それまでに、アルバムも二枚出したいなと思っている。
三年後は、ちょうど君達が結成して5年になる年だから、ドーム公演の前にベストアルバムを出してもいいんじゃないかな?」
トキは淡々と話しているが、あまりの情報量の多さに翔は目を瞬かせていた。
「……アルバム二枚……ベストアルバム……? で、何枚アルバム出すの?」
「翔、大丈夫?」
「トキさん、すみません。翔の処理能力を上回ったので一旦ストップで」
三人の様子に、大人達がクスクスと笑う。
「まぁ、来年以降のことは頭の片隅に入れておいてくれたらいいよ。まだ細かいことは決まっていないけれど、今後これくらいシングルやアルバムをリリースするよっていうのは契約上必要になるからね」
「あ、そうですよね」
ホッとしたように翔は息を吐いてそう言った。
「それで、翔君は作曲を勉強する、とのことだから、今後、自分で書いた曲を歌うのも良いと思う。ステラペルーシェとして歌いたい曲が書けたらぜひ、霞鳥さんや俺に聞かせてほしい」
トキの言葉に翔は目を輝かせて『はい!』と元気良く返事をした。
「俺を含め君達に関わるスタッフは皆、君達のやりたいことを尊重したい。だから、こういうパフォーマンスがしたい、こんな演出がしたい、こんな曲を歌ってみたいなど、思ったことはすぐに相談してほしい。出来る限りの協力をして、望む活動ができるようサポートするから」
トキはそう言ってニコリと微笑んだ。
「ありがとうございます」
三人は目を輝かせてそう返事をすると、霞鳥が「さてと!」と声を上げる。
「それじゃあ、早速衣装合わせするわよー!ヘアメイクもちょっと試してみたいのあるのよね。部屋用意してあるから、みんな荷物まとめてちょうだい」
霞鳥の一言に、三人は慌てて荷物をまとめ、大人達は悠然と席を立った。
こうして、ステラペルーシェの新しいステージへの道が拓けた。
この道も、色を変えながら、彼ららしく歩んでいくだろう。
彼らの活躍は、まだまだ止まらない。
この春から、ヴィア ラクテアへ移籍した彼ら。
今日は今後のスケジュールや、活動予定を話すとのことだった。
「アンジーは高嶺さんとよく遣り取りしてたけど、もう詳細は聞いてるの?」
翔がチルドカップのいちごミルクを飲みながら安慈にそう訊いた。
「だいたいの方針は聞いてるよ。細かい所まではまだだけど、とりあえず今決まってる仕事はアー写の撮影」
「そう言えば、ユニット衣装が変わるんだっけ?」
安慈の言葉に、瑞貴が口を挟んだ。
「変わる、というか固定しないって方向らしいよ。霞鳥さんが、どうせならリリースやイベントでどんどんユニット衣装も変えた方が面白いってことで」
「僕はそういうの楽しみだけど、グッズのぬいぐるみの着せ替え衣装、すごい増えそうだね……」
「多分、そこも狙ってるんじゃないかな?」
「それ、なんだっけ?商魂逞しいって言うんだよね?」
「そうそう」
三人がケラケラと笑っていると、会議室のドアがノックされた。
「お待たせ!ごめんねステラペちゃん!」
そう言って会議室に入ってきたのはプロデューサーの霞鳥だった。その後に続いて、マネージャーの高嶺も入ってくる。
「霞鳥さん、お疲れ様です。改めて、よろしくお願いします」
安慈がそう挨拶をすると、霞鳥は少し驚いた顔をしたがすぐに笑った。
「そうね。改めて、ステラペルーシェの皆。よろしくね」
翔と瑞貴もニコニコしながら『よろしくお願いします』と返した。
霞鳥と高嶺が資料と思われる紙の束を机に置いてから椅子に掛ける。
「えっと、トキさんも来るんだけど役員会議が長引いてるみたいだから、先にスケジュール関係を私と玲香さんで話すね」
「はい。高嶺さんも、改めてよろしくお願いします」
「えぇ。これからも、しっかりあなた達をサポートさせてもらいますね。早速ですが、今月のスケジュールを伝えますね」
高嶺が大きなスケジュール帳を開いて話し始める。
三人も自身の学校の予定と併せながら今後の予定を聞きながらメモを取っていた。
その後は、霞鳥が宣材写真の撮影について話す。
ステラペルーシェのコンセプトは活かしながらも、ヴィアラクテアの要素も入れた衣装やヘアメイクにしていく方針だ。
「可愛らしさはもちろん入れるけれど、やっぱり結成当時よりも貴方たちも大人になってるし、大人っぽく魅せるのも良いと思っててね。それで、撮影の衣装案だけど……」
霞鳥が衣装の絵が描かれている紙を数枚並べて三人に見せる。
「あ、これ夏フェスの衣装と同じパンツだ」
翔が、ラップスカートのついたチェック柄のパンツの衣装を指してそう言った。
「そうそう。あれ、私の好みもあるけど結構評判良かったのよー。色は統一するか、それぞれのカラーにするかは合わせてみてからだけど。腰のもふもふもそのまま付けても可愛いしね」
機嫌良さそうに霞鳥が笑うと、ドアをノックする音が聞こえた。
「遅れてすまない」
ドアを開けて入ってきたのはトキだった。
手には先ほどの会議の資料もあるのか、かなりの量の紙の束を持っていた。
「お疲れ様です」
その場にいた全員がそう言うと、トキは空いている椅子に掛けた。
「お疲れ様。さて、どこまで話は進んでいるかな?」
「今月のスケジュールは伝えてあります。今は宣材写真の衣装案を見せていたところですね。後程、衣装合わせをします」
高嶺が簡潔にトキに伝えると、彼は頷いた。
「ありがとう。それじゃあ、俺からは君達の今後の活動予定を伝えようか。霞鳥さん、アレ渡してくれる?」
「はい」
トキの言葉に、霞鳥が紙が数枚セットになったものを三人に手渡す。
一年を簡潔に表した線と、そこに付随するように文字が並べられている資料だ。
「これが今年度一年分の活動予定。今年は、夏と冬にシングルを一枚ずつ出す。それに伴い、リリースイベントとしてミニライブを行う。
それから、ファンクラブ限定ライブというのもやってみてもいいと思う。これは、一日で良いと思うから君達の学業の妨げにならないシーズンにやろう。
そして、来年の2〜3月にかけて三都市を二日ずつ回るアリーナツアーを組んでいる。
アリーナだから、去年の夏フェスよりも規模は小さいけれど、プロモーションと演出は派手にしたいとは思っているよ」
トキが淡々と、しかしどこか愉しげにそう話す。
新曲のリリースに、三都市回るアリーナツアー。
今までにない活動予定に三人は緊張をしながら聞いていた。
「楽曲については、夏は君達の曲を今まで書いていたところに。冬は何かタイアップをつけようかと思っていてね、詳細はまだだけれど曲は俺が書く予定でいるからよろしくね」
トキがニコリと微笑むと、三人も笑顔で返す。
「年内の予定は、そんな感じ。君達の学校……安慈君は特に大変そうだから、スケジュール的に厳しそうなら高嶺さんに早めに伝えてくれると助かる」
「分かりました。ありがとうございます」
「翔君も瑞貴君もね。学生のうちは学業優先で」
「はい」
「それから……」
トキはそう言って資料をめくる。
「君達のドーム公演は、三年後にしようと思ってる」
「三年後……」
トキに合わせて三人も資料をめくると、大まかな今後の活動計画が記されていた。
「それまでに、アルバムも二枚出したいなと思っている。
三年後は、ちょうど君達が結成して5年になる年だから、ドーム公演の前にベストアルバムを出してもいいんじゃないかな?」
トキは淡々と話しているが、あまりの情報量の多さに翔は目を瞬かせていた。
「……アルバム二枚……ベストアルバム……? で、何枚アルバム出すの?」
「翔、大丈夫?」
「トキさん、すみません。翔の処理能力を上回ったので一旦ストップで」
三人の様子に、大人達がクスクスと笑う。
「まぁ、来年以降のことは頭の片隅に入れておいてくれたらいいよ。まだ細かいことは決まっていないけれど、今後これくらいシングルやアルバムをリリースするよっていうのは契約上必要になるからね」
「あ、そうですよね」
ホッとしたように翔は息を吐いてそう言った。
「それで、翔君は作曲を勉強する、とのことだから、今後、自分で書いた曲を歌うのも良いと思う。ステラペルーシェとして歌いたい曲が書けたらぜひ、霞鳥さんや俺に聞かせてほしい」
トキの言葉に翔は目を輝かせて『はい!』と元気良く返事をした。
「俺を含め君達に関わるスタッフは皆、君達のやりたいことを尊重したい。だから、こういうパフォーマンスがしたい、こんな演出がしたい、こんな曲を歌ってみたいなど、思ったことはすぐに相談してほしい。出来る限りの協力をして、望む活動ができるようサポートするから」
トキはそう言ってニコリと微笑んだ。
「ありがとうございます」
三人は目を輝かせてそう返事をすると、霞鳥が「さてと!」と声を上げる。
「それじゃあ、早速衣装合わせするわよー!ヘアメイクもちょっと試してみたいのあるのよね。部屋用意してあるから、みんな荷物まとめてちょうだい」
霞鳥の一言に、三人は慌てて荷物をまとめ、大人達は悠然と席を立った。
こうして、ステラペルーシェの新しいステージへの道が拓けた。
この道も、色を変えながら、彼ららしく歩んでいくだろう。
彼らの活躍は、まだまだ止まらない。
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