Stella Peluche
「はい!いいよぉ!3人で合わせて!」
ここは、事務所のダンスレッスン室。
先生が、曲に合わせて踊るステラペルーシェの3人にそう声を掛けていた。
大きな鏡の前で、3人はお互いの動きも見て、歌も口ずさみながらダンスをしている。
曲が終わりに差し掛かると、くるりとターンをして、翔をセンターにするように3人が集まりポーズを決めた。
「はぁーい! オッケーぃ! だいぶ通しのクオリティ上がってきたね! お疲れ様ー!」
先生のその一言で、3人は集中を解いて、レッスン室の床にへたりこんだ。
「お疲れ様でしたぁ……」
「本番はめちゃくちゃ暑い中でやるからね! 通し3回できるくらい体力つけておかないとステージで倒れちゃうからね! じゃあ、今日はおしまい! また明後日ね! 明日はゆっくり休むのよー♡」
先生はニコニコしながら、自分の荷物をまとめてレッスン室を出ていた。
「あー、超ハードだった……先生追い込みキツい……」
翔が息も絶え絶えにそう言って、へたりこんだまま動けないでいた。
「昨日早めに寝てて、良かった……倒れてたわ……」
うぇぇ……と、謎の呻き声を発しながら安慈が床に寝そべる。
「アンジー、倒れてるじゃん……」
「だって……今日はさすがにキツかったよ……」
ははは、と力なく笑う安慈の様子から今日の通しレッスンがかなりハードだったのだろう。
ステラペルーシェは、ライブの回数はこなしていたものの、一回のライブはだいたい3〜4曲。30分枠での出演が多かった。
次のサマーフェスティバルは1時間の枠で2日出演する。
『しばらくお休みをしたんだから、これもファンサービスよ♡』
と、ニコニコしながらハードなことを言う社長の無茶振りにもだいぶ慣れてきたと思っていたが、今度は真夏の野外ステージ。ステージの広さも今までで一番大きいので振り付けも大きく見せないといけなかったりなど、今までと勝手が違う。
慣れた振り付けでも見せ方が違えば身体の動かし方も変わるし、今回は10曲のパフォーマンス。
半分以上は、新曲なのだ。
だいぶ前から練習しているとはいえ、歌も含めた通し10曲の練習だった今日は、三人にとってはかなりハードだった。
「……僕、ちょっと寝る……20分経ったら起こして……」
ずっと黙って座っていた瑞貴が突然そう言ったので、翔が慌てて側に寄っていった。
「瑞貴ー⁉︎ 寝るなー‼︎ 死ぬぞー!」
翔がそう言いながら床に横になった瑞貴を抱き上げて、彼の頬をぺちぺちと叩く。
「ちょっと、やめて。汗でペタペタするから触らないで」
「介抱してあげようとしたのに、ひどい」
「だから、ペタペタするから触ってほしくないの。雪山じゃないんだから寝ても死なないよ」
そう言って、瑞貴は翔から逃げるように四つん這いで安慈の隣に移動していった。
「みんなお疲れ様」
そう言って、スマホを片手に部屋に入ってきたのは高嶺だった。
「あ、高嶺さんお疲れ様です」
「ぐだぐだに疲れてるあなた達が可愛いかったから写真撮っちゃった♡」
「えー!これが可愛いってどういうことですか⁉︎」
「公式に上げないでくださいね!」
床に寝そべっていた安慈が慌てて起き上がってそう言った。
公式、と言うのはステラペルーシェの公式SNSアカウントのことである。
「さぁて、どうしようかしら?」
うふふ と笑う高嶺に、子供たちが抗議の声を上げる。
「はーいはい。君達、今日はハードだったでしょ。夏フェスは体力勝負だからね!着替えたら行くわよ!」
「行くってどこにですか?」
レッスン室を出て行こうとした高嶺に、翔がそう問いかける。
「肉、食べに行くわよ!私の奢りでね♡」
高嶺の言葉に、疲れでぐったりしていた3人の目が、一瞬でキラキラと輝いた。
「あ、こら!まだ焼けてないから!野菜食べてて!」
「やだー。にくー。オレ、こんがりした玉ねぎはいらないよぉ。にくー」
「だめ、野菜も食べるの!」
高嶺に連れられたのは、ファミリー向けの焼肉店だった。
高嶺の「好きなもの頼んでいいわよ」の言葉をそのまま受け取って、3人は好きなものを注文していた。
さっきからずっと、安慈が肉焼き係をして、翔は生焼けの肉に手を出そうとして怒られ、瑞貴は配られた肉をひたすらサンチュに巻いて大人しく食べている、という光景が高嶺の前で繰り広げられているのだが、彼女はそれをニコニコと眺めていた。
「高嶺さん、食べてます?」
「うん。大丈夫よ。安慈くん、変わるね」
「あ、ありがとうございます」
高嶺は、安慈からトングを受け取ると、皿に残っていた肉を網に乗せていく。
「3人が楽しそうで、思い切って連れてきて良かったわ」
「え?」
「殆ど新曲で夏フェスに出るから、本当に大変なのに、それぞれがしっかり考えながら練習もトレーニングもしてくれるじゃない。絶対、いいステージになる。そうなるように、私もサポートしていくけどね」
「それは、逆ですよ」
高嶺の言葉に安慈がそう返す。
「高嶺さんが、俺たちがやりやすいように動いてくれているから、それを受け取って動いてるだけです。次のフェスは、ファンと約束したステージですから、中途半端なものは見せられない。その一心で動いてるところもありますけどね……って、翔!こっちはまだ焼けてないから!」
「ちょっとレアな方が美味しそうじゃん」
「だめ!お腹壊すよ!」
また生焼けの肉に手を出した翔に話を切られてしまったが、高嶺は安慈の言葉に驚いたのと同時に喜びも感じていた。
「……それなら良かったわ」
「高嶺さん。あの……僕たちが、活動していく上で、心から信頼して頼れる大人は高嶺さんだけなんです」
翔と安慈が騒いでる横で、そっと瑞貴が高嶺にそう言った。
「瑞貴くん……」
「だから、マネージャー変わる、なんて言わないでくださいね。少なくとも、TKドーム公演やるまでは……」
そう言って、瑞貴は皿に残っていた最後の一枚のサンチュを取って、
「翔は葉っぱ食べないのー?食べちゃうよー?」と、二人の会話に入っていった。
「あら……3人に元気になってもらおうと思って連れてきたのに、私が元気貰っちゃったわね……」
愉しげに騒ぐ3人を見て、高嶺はスマホを手にする。シャッター音が鳴ると、3人が一斉に高嶺の方を見た。
「あ、また撮った!」
「公式はやめてくださいね!」
「高嶺さん、デザートも頼んでいいですか?」
口々に話す子供たちに、高嶺はニッコリ笑って
「良いわよ。ただし、明後日からの練習もハードだけどしっかりやるのよ」
「はーい!」
高嶺は、ニコニコと笑いながらメニューを見たり食事をする3人を見て
「あなたたちのマネージャーは私以外にはやらせないわ……最後までちゃんと見てるからね」
と、小さく呟いた。
ここは、事務所のダンスレッスン室。
先生が、曲に合わせて踊るステラペルーシェの3人にそう声を掛けていた。
大きな鏡の前で、3人はお互いの動きも見て、歌も口ずさみながらダンスをしている。
曲が終わりに差し掛かると、くるりとターンをして、翔をセンターにするように3人が集まりポーズを決めた。
「はぁーい! オッケーぃ! だいぶ通しのクオリティ上がってきたね! お疲れ様ー!」
先生のその一言で、3人は集中を解いて、レッスン室の床にへたりこんだ。
「お疲れ様でしたぁ……」
「本番はめちゃくちゃ暑い中でやるからね! 通し3回できるくらい体力つけておかないとステージで倒れちゃうからね! じゃあ、今日はおしまい! また明後日ね! 明日はゆっくり休むのよー♡」
先生はニコニコしながら、自分の荷物をまとめてレッスン室を出ていた。
「あー、超ハードだった……先生追い込みキツい……」
翔が息も絶え絶えにそう言って、へたりこんだまま動けないでいた。
「昨日早めに寝てて、良かった……倒れてたわ……」
うぇぇ……と、謎の呻き声を発しながら安慈が床に寝そべる。
「アンジー、倒れてるじゃん……」
「だって……今日はさすがにキツかったよ……」
ははは、と力なく笑う安慈の様子から今日の通しレッスンがかなりハードだったのだろう。
ステラペルーシェは、ライブの回数はこなしていたものの、一回のライブはだいたい3〜4曲。30分枠での出演が多かった。
次のサマーフェスティバルは1時間の枠で2日出演する。
『しばらくお休みをしたんだから、これもファンサービスよ♡』
と、ニコニコしながらハードなことを言う社長の無茶振りにもだいぶ慣れてきたと思っていたが、今度は真夏の野外ステージ。ステージの広さも今までで一番大きいので振り付けも大きく見せないといけなかったりなど、今までと勝手が違う。
慣れた振り付けでも見せ方が違えば身体の動かし方も変わるし、今回は10曲のパフォーマンス。
半分以上は、新曲なのだ。
だいぶ前から練習しているとはいえ、歌も含めた通し10曲の練習だった今日は、三人にとってはかなりハードだった。
「……僕、ちょっと寝る……20分経ったら起こして……」
ずっと黙って座っていた瑞貴が突然そう言ったので、翔が慌てて側に寄っていった。
「瑞貴ー⁉︎ 寝るなー‼︎ 死ぬぞー!」
翔がそう言いながら床に横になった瑞貴を抱き上げて、彼の頬をぺちぺちと叩く。
「ちょっと、やめて。汗でペタペタするから触らないで」
「介抱してあげようとしたのに、ひどい」
「だから、ペタペタするから触ってほしくないの。雪山じゃないんだから寝ても死なないよ」
そう言って、瑞貴は翔から逃げるように四つん這いで安慈の隣に移動していった。
「みんなお疲れ様」
そう言って、スマホを片手に部屋に入ってきたのは高嶺だった。
「あ、高嶺さんお疲れ様です」
「ぐだぐだに疲れてるあなた達が可愛いかったから写真撮っちゃった♡」
「えー!これが可愛いってどういうことですか⁉︎」
「公式に上げないでくださいね!」
床に寝そべっていた安慈が慌てて起き上がってそう言った。
公式、と言うのはステラペルーシェの公式SNSアカウントのことである。
「さぁて、どうしようかしら?」
うふふ と笑う高嶺に、子供たちが抗議の声を上げる。
「はーいはい。君達、今日はハードだったでしょ。夏フェスは体力勝負だからね!着替えたら行くわよ!」
「行くってどこにですか?」
レッスン室を出て行こうとした高嶺に、翔がそう問いかける。
「肉、食べに行くわよ!私の奢りでね♡」
高嶺の言葉に、疲れでぐったりしていた3人の目が、一瞬でキラキラと輝いた。
「あ、こら!まだ焼けてないから!野菜食べてて!」
「やだー。にくー。オレ、こんがりした玉ねぎはいらないよぉ。にくー」
「だめ、野菜も食べるの!」
高嶺に連れられたのは、ファミリー向けの焼肉店だった。
高嶺の「好きなもの頼んでいいわよ」の言葉をそのまま受け取って、3人は好きなものを注文していた。
さっきからずっと、安慈が肉焼き係をして、翔は生焼けの肉に手を出そうとして怒られ、瑞貴は配られた肉をひたすらサンチュに巻いて大人しく食べている、という光景が高嶺の前で繰り広げられているのだが、彼女はそれをニコニコと眺めていた。
「高嶺さん、食べてます?」
「うん。大丈夫よ。安慈くん、変わるね」
「あ、ありがとうございます」
高嶺は、安慈からトングを受け取ると、皿に残っていた肉を網に乗せていく。
「3人が楽しそうで、思い切って連れてきて良かったわ」
「え?」
「殆ど新曲で夏フェスに出るから、本当に大変なのに、それぞれがしっかり考えながら練習もトレーニングもしてくれるじゃない。絶対、いいステージになる。そうなるように、私もサポートしていくけどね」
「それは、逆ですよ」
高嶺の言葉に安慈がそう返す。
「高嶺さんが、俺たちがやりやすいように動いてくれているから、それを受け取って動いてるだけです。次のフェスは、ファンと約束したステージですから、中途半端なものは見せられない。その一心で動いてるところもありますけどね……って、翔!こっちはまだ焼けてないから!」
「ちょっとレアな方が美味しそうじゃん」
「だめ!お腹壊すよ!」
また生焼けの肉に手を出した翔に話を切られてしまったが、高嶺は安慈の言葉に驚いたのと同時に喜びも感じていた。
「……それなら良かったわ」
「高嶺さん。あの……僕たちが、活動していく上で、心から信頼して頼れる大人は高嶺さんだけなんです」
翔と安慈が騒いでる横で、そっと瑞貴が高嶺にそう言った。
「瑞貴くん……」
「だから、マネージャー変わる、なんて言わないでくださいね。少なくとも、TKドーム公演やるまでは……」
そう言って、瑞貴は皿に残っていた最後の一枚のサンチュを取って、
「翔は葉っぱ食べないのー?食べちゃうよー?」と、二人の会話に入っていった。
「あら……3人に元気になってもらおうと思って連れてきたのに、私が元気貰っちゃったわね……」
愉しげに騒ぐ3人を見て、高嶺はスマホを手にする。シャッター音が鳴ると、3人が一斉に高嶺の方を見た。
「あ、また撮った!」
「公式はやめてくださいね!」
「高嶺さん、デザートも頼んでいいですか?」
口々に話す子供たちに、高嶺はニッコリ笑って
「良いわよ。ただし、明後日からの練習もハードだけどしっかりやるのよ」
「はーい!」
高嶺は、ニコニコと笑いながらメニューを見たり食事をする3人を見て
「あなたたちのマネージャーは私以外にはやらせないわ……最後までちゃんと見てるからね」
と、小さく呟いた。