Stella Peluche
まだ日は沈み切っていないが、夜の帳がゆっくりと降りてきた頃。
ステージでは愛犯 がパフォーマンスをしている。
可愛らしい演出が多い彼らだが、今回は夜のステージということで、大人っぽい演出のようで、いつもと違う雰囲気に会場の観客たちは大いに沸いていた。
その頃、ステラペルーシェの三人は、ステージ裏に控えていた。
今日は衣装がノースリーブのせいか、ステージ裏でも伝わる会場の熱気と歓声に、三人は肌がビリビリと震えるのを感じていた。
「すごいね。みんなの熱気で実際の気温より暑い気がする」
「そうだね。この後でしょ。僕たちが飛び出して行ったらみんなどんな顔するかな……」
観客は、この後にTEXTURE FOXが出ると思っている。観客のリアクションを想像して、瑞貴がイタズラをしかけた子供のような笑みを浮かべた。
「ね、俺も楽しみ。短冊の子、会場にいるといいな」
安慈は、先程翔に見せてもらった短冊を書いたファンのことを思っていた。
たった一曲だけの出演。
でも、これは次の夏フェスという大きなステージへの布石でもある。一曲で、どれだけ観客の心を掴めるか、これで今の自分たちの力量を測れるのではないかと安慈は考えていた。
そうこうしていると、愛犯のステージが終わりの時間を迎えたようだ。
「次のステージも楽しんでねー!!」
そう言ったのが聞こえて、三人はステージの下へと向かう。
それと入れ替わるように、愛犯の三人がステージからの階段を降りてきていた。
「お疲れ様です!」
ステラペルーシェの三人がそう声を掛けると、シイショーこと、椎名将平がニコニコと三人に手を振る。
「みんな盛り上がってるよ♪派手に出てってよね」
「ステラぺが出てくるなんて思ってないから、驚くと思うぜ」
「安慈くんは、ステージ久しぶりだもんね。頑張ってね♡」
黒川勇翔 も 庄屋真聡 もそれぞれ三人に言葉をかけていくと、そのままステージ裏から出て行った。
それと入れ替わりに、TEXTURE FOXの二人がステージ裏に入ってきた。
「あ、先輩方すみません。直前に枠を入れさせてもらって」
安慈がそう言って二人に頭を下げる。
「構わないよ。公式では告知されていないから、みんなびっくりするだろうね」
TEXTURE FOXの桐ヶ谷 ルークが笑顔でそう返した。それに続き、東条 連治が 「しっかりやれよ」と声をかける。
「ありがとうございます!会場、もっと温めておきますね!」
翔が笑顔でそう二人に返すと、スタッフから声がかかり、その場から移動した。
「では、こちらから気をつけて入ってくださいね」
三人は、スタッフにステージ下に入るよう促される。
ステージと観客席のライトは落とされたまま。
次のユニットを待つ歓声が聞こえる中、瑞貴は上手、翔はセンター、安慈は下手に設置されたポップアップリフトに乗り、立て膝でしゃがんだ。
「昨日のステージリハでも言いましたが、瑞貴くんと安慈くんは、飛び出したと同時に火花が上がるので、前によろけないように気をつけてくださいね」
「はい」
「こっち準備オッケーでーす!」
ポップアップリフトの周りにスタッフが数人待機する。
「本番よろしくお願いしまーす!」
スタッフの掛け声に、三人は表情を引き締めた。
ステージは暗転したままだった。
ほどなくしてシンセサイザーの音が鳴り、揺らめくように細く青いレーザーが観客を照らしていく。
次のパフォーマンスが始まる、と観客たちがざわつき出した。
《ミルキーウェイスターフェスティバル、みんなここまで楽しかったかなー?》
TEXTURE FOXのどちらでもない声に会場からは『誰?』と声が上がり、ざわつきが更に大きくなる。
《最後のユニットが出るその前にー……行っくよー!!!》
その掛け声で一気にステージが明るくなると、パァンッとステージの前方から上がった火花と共に、ステラペルーシェの三人がステージ下から飛び出してきた。
観客はステージに上がったのが誰なのか? と、一瞬、間があったが、すぐに大きな歓声が上がった。
それと同時に、軽快なギターリフがハンドクラップと共に鳴り出した。
「こんばんはー!ステラペルーシェです!今日、会場に来てくれたみんな、本当にありがとー!!本来であれば、今日は出演しない予定でしたが、みんなが短冊にたくさんお願い事を書いてくれたので、ステージに来ちゃいました!」
翔がそう観客に向かって言うと、大きな歓声と拍手が起こる。
「曲の前にちょっと聞いてもいい?」
安慈が、翔のMCに口を挟む。
「会場の笹に『安慈くんに会いたい』とか『早く三人揃ったステラペのライブ見たい』とか『早く安慈くんのステージが見られますように』とか書いてくれた人、まだ会場にいますかー?」
片手を挙げながら安慈が会場にそう呼びかけると、ライブエリアの後方でちらほらと手を挙げたり、手を振っている人が見られた。
「あ、いたいた。良かったー。すっごい嬉しかったです!ありがとう♡早速、願い事叶ったね♡」
今日は手持ちマイクなので、安慈は、空いている左手でハートマークの半分だけ作ってウィンクを飛ばした。
すると、会場の後方のファンだけでなく、あちこちから悲鳴が上がった。
「ふふふ。みんな安慈出てきて嬉しい? そっか。良かった。でも、僕 も見てね♡あと、T-FOXどこ?って顔してるお姉さん。安心してね、僕たちすぐ終わるから。すぐにT-FOXに会えるよ」
自虐的に瑞貴がそう言うと、クスクスと笑いが起こる。
「いつまでも先輩を待たせるわけにはいかないからね!それでは来週リリースの新曲です!一緒に手を叩いてくださいね! Fluffy Melting Summer!」
翔がタイトルコールをすると、バックで鳴っていたギターリフにシンセピアノの煌びやかなメロディが乗り、思わず身体が浮かれてしまうようなポップロックチューンが流れ出した。
観客に向かって三人が手拍子をするように促すと、客席には手拍子を打つ波ができた。
ちらほらと、ステラペルーシェのユニットカラーであるレモンイエローの光も波に紛れていた。
三人揃ってのステージは、三月の花明かりフェスでのステージ以来だったが、今までライブ活動を休止していたとは思わせないような息の合ったダンスパフォーマンス、そしてそれぞれの歌唱力にも磨きがかかっていた。
花明かりフェスでの『約束』を、彼らなりにこのステージで表現していた。
何よりも、彼らがこのたった一曲を全力で愉しんでいるのが分かるくらい、キラキラと輝いていた。
曲が終わると、大きな歓声と拍手が辺りを包み込んだ。
「みんなありがとー!」
翔が笑顔でそう叫んだ。
安慈は、後方のファンの方に両手で大きく手を振っていた。
瑞貴はというと「瑞貴ー!」と呼ばれた声に応えて、いつものファンサービスである投げキスをしていた。
「えーっと、まだ詳しいことは言えないんですけど、ステラペルーシェ、夏フェスには参加決定です!!みんな、テストは無事に終わりました!!」
翔がそう言うと、会場からは笑い声混じりに拍手が起こった。
「翔、追試なくて良かったね」
「うん。安慈も大丈夫だったもんね」
「うん。時々、呪詛吐いてたけどね♡」
「じゅ?今、なんて言った?」
「ううん、気にしないで」
三人の仲睦まじいやりとりに会場が和やかな雰囲気に包まれたところで、ステージの終わりの時間が近づいてきた。
「それでは、次は、夏フェスでお会いしましょう!!」
安慈が、会場を見渡して手を振りながらそう言った。
「ミルキーウェイスターフェスティバル、最後まで楽しんでくださいね!」
続いて、瑞貴が両手を振りながらそう言った。
「ステラペルーシェでした!ありがとうございましたー!」
最後に、翔がそう大きな声で叫ぶと三人はステージの上手側へ退場していった……。
ステラペルーシェのゲリラライブに、会場の興奮は最高潮だった。拍手や歓声は、ステージのライトが落とされるまで続いていた。
「お疲れ様でしたー」
ステージが暗転している為、小さなライトを持ったスタッフの誘導について行きながら、三人は楽屋に向かって歩いていた。
「あぁやって、飛び出すの面白かったね」
翔が、先程のステージを思い出しながら言う。
「ゲリラっぽくしたいから、って社長が3つもアレ入れてくれたんだよね。派手なの好きなのかなぁ?」
スタッフから手渡されたタオルで顔を拭きながら安慈がそう言った。
マネージャーの高嶺曰く、三台も入れるような舞台装置ではないらしい。
「いつもつけてるスカーフの色柄見たら地味ではないと思うけどね」
瑞貴がそう言うと、翔と安慈はほぼ同時に社長の身につけているスカーフを思い出す。
瑞貴の言う通り、決して地味ではない。
そもそも、スカーフを常用している時点でかなりのハイセンスな人である。
「ふふふ。社長もステージ見てくれたかな……?」
「見てると思うよー。ねぇ、やっぱり、三人でステージ立つと楽しいね」
翔がニコニコしながら二人にそう言った。
「俺もそう思った。夏フェスもすごい楽しみ」
「次は持ち時間も長いもんね。今日、物足りなかった人達は夏フェスにも来て欲しいな……」
そうだね、と翔が返事をすると、ニッと笑って拳を突き出した。
一瞬、きょとんとした安慈と瑞貴だったが、すぐに意図が分かって翔の拳に自分たちの拳を当てた。
「お疲れ様!次のライブも頑張ろうね!」
改めて、3人でステージに立てたことに感謝して、次の大舞台に向けての誓いを立てたのだった……。
ステージでは
可愛らしい演出が多い彼らだが、今回は夜のステージということで、大人っぽい演出のようで、いつもと違う雰囲気に会場の観客たちは大いに沸いていた。
その頃、ステラペルーシェの三人は、ステージ裏に控えていた。
今日は衣装がノースリーブのせいか、ステージ裏でも伝わる会場の熱気と歓声に、三人は肌がビリビリと震えるのを感じていた。
「すごいね。みんなの熱気で実際の気温より暑い気がする」
「そうだね。この後でしょ。僕たちが飛び出して行ったらみんなどんな顔するかな……」
観客は、この後にTEXTURE FOXが出ると思っている。観客のリアクションを想像して、瑞貴がイタズラをしかけた子供のような笑みを浮かべた。
「ね、俺も楽しみ。短冊の子、会場にいるといいな」
安慈は、先程翔に見せてもらった短冊を書いたファンのことを思っていた。
たった一曲だけの出演。
でも、これは次の夏フェスという大きなステージへの布石でもある。一曲で、どれだけ観客の心を掴めるか、これで今の自分たちの力量を測れるのではないかと安慈は考えていた。
そうこうしていると、愛犯のステージが終わりの時間を迎えたようだ。
「次のステージも楽しんでねー!!」
そう言ったのが聞こえて、三人はステージの下へと向かう。
それと入れ替わるように、愛犯の三人がステージからの階段を降りてきていた。
「お疲れ様です!」
ステラペルーシェの三人がそう声を掛けると、シイショーこと、椎名将平がニコニコと三人に手を振る。
「みんな盛り上がってるよ♪派手に出てってよね」
「ステラぺが出てくるなんて思ってないから、驚くと思うぜ」
「安慈くんは、ステージ久しぶりだもんね。頑張ってね♡」
それと入れ替わりに、TEXTURE FOXの二人がステージ裏に入ってきた。
「あ、先輩方すみません。直前に枠を入れさせてもらって」
安慈がそう言って二人に頭を下げる。
「構わないよ。公式では告知されていないから、みんなびっくりするだろうね」
TEXTURE FOXの桐ヶ谷 ルークが笑顔でそう返した。それに続き、東条 連治が 「しっかりやれよ」と声をかける。
「ありがとうございます!会場、もっと温めておきますね!」
翔が笑顔でそう二人に返すと、スタッフから声がかかり、その場から移動した。
「では、こちらから気をつけて入ってくださいね」
三人は、スタッフにステージ下に入るよう促される。
ステージと観客席のライトは落とされたまま。
次のユニットを待つ歓声が聞こえる中、瑞貴は上手、翔はセンター、安慈は下手に設置されたポップアップリフトに乗り、立て膝でしゃがんだ。
「昨日のステージリハでも言いましたが、瑞貴くんと安慈くんは、飛び出したと同時に火花が上がるので、前によろけないように気をつけてくださいね」
「はい」
「こっち準備オッケーでーす!」
ポップアップリフトの周りにスタッフが数人待機する。
「本番よろしくお願いしまーす!」
スタッフの掛け声に、三人は表情を引き締めた。
ステージは暗転したままだった。
ほどなくしてシンセサイザーの音が鳴り、揺らめくように細く青いレーザーが観客を照らしていく。
次のパフォーマンスが始まる、と観客たちがざわつき出した。
《ミルキーウェイスターフェスティバル、みんなここまで楽しかったかなー?》
TEXTURE FOXのどちらでもない声に会場からは『誰?』と声が上がり、ざわつきが更に大きくなる。
《最後のユニットが出るその前にー……行っくよー!!!》
その掛け声で一気にステージが明るくなると、パァンッとステージの前方から上がった火花と共に、ステラペルーシェの三人がステージ下から飛び出してきた。
観客はステージに上がったのが誰なのか? と、一瞬、間があったが、すぐに大きな歓声が上がった。
それと同時に、軽快なギターリフがハンドクラップと共に鳴り出した。
「こんばんはー!ステラペルーシェです!今日、会場に来てくれたみんな、本当にありがとー!!本来であれば、今日は出演しない予定でしたが、みんなが短冊にたくさんお願い事を書いてくれたので、ステージに来ちゃいました!」
翔がそう観客に向かって言うと、大きな歓声と拍手が起こる。
「曲の前にちょっと聞いてもいい?」
安慈が、翔のMCに口を挟む。
「会場の笹に『安慈くんに会いたい』とか『早く三人揃ったステラペのライブ見たい』とか『早く安慈くんのステージが見られますように』とか書いてくれた人、まだ会場にいますかー?」
片手を挙げながら安慈が会場にそう呼びかけると、ライブエリアの後方でちらほらと手を挙げたり、手を振っている人が見られた。
「あ、いたいた。良かったー。すっごい嬉しかったです!ありがとう♡早速、願い事叶ったね♡」
今日は手持ちマイクなので、安慈は、空いている左手でハートマークの半分だけ作ってウィンクを飛ばした。
すると、会場の後方のファンだけでなく、あちこちから悲鳴が上がった。
「ふふふ。みんな安慈出てきて嬉しい? そっか。良かった。でも、
自虐的に瑞貴がそう言うと、クスクスと笑いが起こる。
「いつまでも先輩を待たせるわけにはいかないからね!それでは来週リリースの新曲です!一緒に手を叩いてくださいね! Fluffy Melting Summer!」
翔がタイトルコールをすると、バックで鳴っていたギターリフにシンセピアノの煌びやかなメロディが乗り、思わず身体が浮かれてしまうようなポップロックチューンが流れ出した。
観客に向かって三人が手拍子をするように促すと、客席には手拍子を打つ波ができた。
ちらほらと、ステラペルーシェのユニットカラーであるレモンイエローの光も波に紛れていた。
三人揃ってのステージは、三月の花明かりフェスでのステージ以来だったが、今までライブ活動を休止していたとは思わせないような息の合ったダンスパフォーマンス、そしてそれぞれの歌唱力にも磨きがかかっていた。
花明かりフェスでの『約束』を、彼らなりにこのステージで表現していた。
何よりも、彼らがこのたった一曲を全力で愉しんでいるのが分かるくらい、キラキラと輝いていた。
曲が終わると、大きな歓声と拍手が辺りを包み込んだ。
「みんなありがとー!」
翔が笑顔でそう叫んだ。
安慈は、後方のファンの方に両手で大きく手を振っていた。
瑞貴はというと「瑞貴ー!」と呼ばれた声に応えて、いつものファンサービスである投げキスをしていた。
「えーっと、まだ詳しいことは言えないんですけど、ステラペルーシェ、夏フェスには参加決定です!!みんな、テストは無事に終わりました!!」
翔がそう言うと、会場からは笑い声混じりに拍手が起こった。
「翔、追試なくて良かったね」
「うん。安慈も大丈夫だったもんね」
「うん。時々、呪詛吐いてたけどね♡」
「じゅ?今、なんて言った?」
「ううん、気にしないで」
三人の仲睦まじいやりとりに会場が和やかな雰囲気に包まれたところで、ステージの終わりの時間が近づいてきた。
「それでは、次は、夏フェスでお会いしましょう!!」
安慈が、会場を見渡して手を振りながらそう言った。
「ミルキーウェイスターフェスティバル、最後まで楽しんでくださいね!」
続いて、瑞貴が両手を振りながらそう言った。
「ステラペルーシェでした!ありがとうございましたー!」
最後に、翔がそう大きな声で叫ぶと三人はステージの上手側へ退場していった……。
ステラペルーシェのゲリラライブに、会場の興奮は最高潮だった。拍手や歓声は、ステージのライトが落とされるまで続いていた。
「お疲れ様でしたー」
ステージが暗転している為、小さなライトを持ったスタッフの誘導について行きながら、三人は楽屋に向かって歩いていた。
「あぁやって、飛び出すの面白かったね」
翔が、先程のステージを思い出しながら言う。
「ゲリラっぽくしたいから、って社長が3つもアレ入れてくれたんだよね。派手なの好きなのかなぁ?」
スタッフから手渡されたタオルで顔を拭きながら安慈がそう言った。
マネージャーの高嶺曰く、三台も入れるような舞台装置ではないらしい。
「いつもつけてるスカーフの色柄見たら地味ではないと思うけどね」
瑞貴がそう言うと、翔と安慈はほぼ同時に社長の身につけているスカーフを思い出す。
瑞貴の言う通り、決して地味ではない。
そもそも、スカーフを常用している時点でかなりのハイセンスな人である。
「ふふふ。社長もステージ見てくれたかな……?」
「見てると思うよー。ねぇ、やっぱり、三人でステージ立つと楽しいね」
翔がニコニコしながら二人にそう言った。
「俺もそう思った。夏フェスもすごい楽しみ」
「次は持ち時間も長いもんね。今日、物足りなかった人達は夏フェスにも来て欲しいな……」
そうだね、と翔が返事をすると、ニッと笑って拳を突き出した。
一瞬、きょとんとした安慈と瑞貴だったが、すぐに意図が分かって翔の拳に自分たちの拳を当てた。
「お疲れ様!次のライブも頑張ろうね!」
改めて、3人でステージに立てたことに感謝して、次の大舞台に向けての誓いを立てたのだった……。