Stella Peluche

「はー、ちょっと遊びすぎたかなぁ? まぁ、いっか。 だって、みーくん見たかったんだもーんって言い訳しよ」

現在の時刻は15時半を過ぎた頃……。
翔は、昼食を済ませた後、ミルフェスの会場へ遊びに出かけていた。
出店エリアでは、ヴァンドラファールの出店でヨーヨー釣りをしたり、朱雀と 士葵しきの出店で『型抜き』を全力で楽しんだ。型抜きに全力投球したが、一枚も綺麗に抜けなかったのはここだけの話である。
その後は、ライブエリアの後方からクラスメイトがいるハヤブサランカースのステージをこっそり見ていたのだが、そろそろ自分たちの準備をしないといけない時間が迫っていることに気づき、慌てて事務所のビルへと向かっているところだ。

「うわー! 短冊いっぱいだねぇ」
戻る途中に設置されていた、笹ならぬ竹に飾られたたくさんの短冊。
来場者が願いを込めて書いていったものだ。
短冊の配布は終わってしまったようで、周りにはもう誰もいなかったが、ふわりと風が吹くたびにサラサラと音を立てていた。
ステージの所にも飾られていたから、これも会場にたくさん設置されているものの一つだろう。

「……『5000兆円ください。あと仕事でずっと可愛い子たちを愛でてたいです』あはは、これうちのプロデューサーだ。面白いこと書くなぁ」
翔は、急いでいたことを忘れて、短冊を見るのに夢中になっていた。
家族の安全や健康、恋人とのこと、学業や部活の大会の結果を願うものなど、たくさんの願い事が飾られていた。
「あ……」
ふと、目に留まった黄色の短冊を見ると、翔はニッコリと笑ってジーンズのポケットからスマホを取り出し、その短冊を撮影した。
その後も、竹の周りをぐるぐると歩いて、短冊を見つけては撮影していた。
「これ、見せてあげよ♪ って、うわっヤバい!時間!」
翔は、画面に表示された時間を見ると、スマホを手に持ったまま、慌てて事務所のビルへと走っていった。


「あぁ、良かった。翔どこ行ってたの?」
「もう! 翔が1番ウォーミングアップに時間かかるんだからいつまでも遊んでちゃだめだよ」
用意された楽屋に翔が入ると、安慈と瑞貴が練習着姿で待っていた。
翔が集合時間をすぎているというのになかなか姿を見せないものだから、瑞貴の機嫌がだんだん斜めになってきていたところだった。
「ごめんごめん! ハヤラス少し見てから戻ろうって思ったら……みーくんが遅れてステージ出てきてね! みーくん、かっこいいなーって見てたらぁ……もうすぐ3時半じゃん!って慌てて走ってきたんだけど……ちょっと寄り道しちゃって……」
翔は、息も絶え絶えにそう言うと、手荷物をテーブルに置き、手に持っていたスマホのロック画面を解除した。
「ねぇねぇ! 見て! これ撮ってたら遅くなっちゃったの!」
翔がニコニコしながら画面を向けてくるので、安慈と瑞貴が画面を覗き込む。
「わ……」
「ふふふ。よくあの量の短冊の中から見つけてきたね」
「でしょー? 他にもあるんだよ! はい、オレ着替えるから見てていいよ!」
翔は、安慈にスマホを手渡すと、楽屋に置いてあった自分の荷物から練習着を引っ張り出して着替え始めた。
その間、安慈はスマホの画面に釘付けになり、瑞貴はその隣で安慈の様子を見ながらニヤニヤしていた……。

そんな彼らのステージまであと3時間半……。

「よーし!頑張ろうね!!」

着替えを終えた翔がそう言うと、二人はニッコリと笑った。


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