Stella Peluche
6月末日、事務所の会議室にて……。
「……というわけで……事務所としては、出て欲しいのだけれど、私は安慈くんに無理させたくないのよね……。三人はどう思う?」
練習の前に高嶺に呼ばれた三人は、会議室のテーブルについて資料を見ている。
『ミルキーウェイ スター フェスティバル』
自分たちが所属する事務所が主催の七夕モチーフイベントである。
高嶺としては、花明かりフェスでの約束通り、夏の一番規模が大きいイベントまでステラペのライブは休みにしたい。それに合わせてこちらも様々なスケジュールを調整しているのだから、いくら上司とはいえ思い付きでライブに出ろなんて、言って欲しくはない。
まだ子供である彼らなら事務所命令だとライブに出すことは可能ではあるが、学生でもある彼らの本分を蔑ろにはしてはいけないと思い、彼女は三人に問いかけたのだった。
「うーん……でも22日から夏休みだもんね。せっかく事務所主催だし、ユニット名に星が入ってるから出た方がいいのは、なんとなく分かる……」
「問題はその前のテストでしょ? 学校違うけど大体同じ期間でやるでしょ。影響がゼロだとは言えなくない?」
瑞貴の淡々と放たれた言葉に、顔を強張らせる翔。そうでした……と小さく呟いて項垂れた。
「安慈くんはどう? 社長やプロデューサーの気まぐれだから、無理なら無理ってハッキリ言っていいんだからね?」
高嶺がそう言うと、安慈は自分のバッグから手帳を出してスケジュールを確認した。
「そうですね……1枠ステージをやるのは難しいと思います。テスト自体は本番までには終わるのでそこは良いんですけど、通しで6曲練習する時間を考えるとちょっとタイトですね……でも」
安慈は手帳を閉じるとテーブルに置いて、翔や瑞貴の方を見てから、高嶺の顔を見る。
「学生であるのは、翔や瑞貴も、他の学生がいるユニットも条件は一緒です。テスト期間も同じくらいのはず。だから、俺だけ特別待遇なのはなんだか居心地悪いです」
「けど……アンジー難しいこと勉強してるんでしょ?」
翔が不安そうに口を挟んだ。
「大学は持ち込みでテスト受けられたりするし、効率よく勉強する方法は、お陰様で去年の忙しい時に身につけたから大丈夫。そこは置いておいて、翔も瑞貴もテストがあるんだから、練習時間も今までと同じくらい取れるかと言ったらちょっと厳しいでしょ?」
安慈がそう言うと、瑞貴が小さくため息を吐いた。
「まぁね。普段からちゃんと授業受けていれば、わざわざテスト勉強で追い込まなくても良いから僕は大して変わらないけど」
そう言いながら、瑞貴は翔の方を見る。
「わ……坊ちゃんがさりげなく攻撃してきた……」
「数学だけ寝てるのは誰だっけ?」
「3年になってからは寝てないよ! ちゃんと頑張ってるよ! 寝ると横からハリセン飛んでくるんだもん!」
「はいはい、で、どうしたいのかしら?」
『ハリセン』に思わず吹き出してしまった3人だったが、この調子では話が進まないと高嶺が仕切り直す。
「おそらく、1枠を埋めるのは現状厳しいと思います。俺たちも夏のイベントに向けてのセットリストで練習やレッスンをやっているで、そのままこっちに流しても良いですけど、まだ納得のいく仕上がりではないので……。なので『出ない』ということにしたいんですけど……」
安慈の言葉に、そうよね、と高嶺が相槌を打つ。
「出ないと言っていたユニットが、突然、ステージに出てきたら面白そうじゃないですか?」
安慈が、ニィっと笑ってそう言うと、高嶺は目を丸くし、翔と瑞貴も同じようにニィッと笑った。
「なるほどね……ホント、安慈くんて頭良いのね」
「それなら、1曲だけでもいいですよね? やり慣れた曲か、今一番練習している新曲かどちらかで」
「それなら、ミルフェスに向けて一曲だけ集中して練習できるし、そのまま夏フェスにもっていける」
「テスト勉強にも負担がないってことだね」
ニコニコ笑う三人を見て、高嶺がホッとしたようにため息をついた。
「オッケー。本当に安慈くんには驚かされてばっかりだわ。そしたら、公式での告知無しで出演すると言うことで、話を通しておくわ。練習前にありがとうね」
「はい! よろしくお願いします」
高嶺は荷物一式持って会議室を出ていった。
「じゃあ、オレたちも行こうか」
「そうだね」
「安慈、もっとハッキリ出ないって言うかと思ったけど、面白い事言ったね」
荷物をまとめながら瑞貴がそう言った。
「出ないって、言うのは簡単だけどね。でも、事務所に所属している以上、やらなければいけないこともあるし、ジュノフェスでの二人のグリーティングを見てたら、三人揃ったステラぺを待ってる人がいるって分かったから、少しでも表に出たら喜んでくれる人もいるんじゃないかな? と思って」
「アンジー頭いいなぁ。知ってたけど」
「ふふっ。じゃあ、練習始めようか」
「うん!」
そうして、三人はレッスン室へと向かっていった……。
「……というわけで……事務所としては、出て欲しいのだけれど、私は安慈くんに無理させたくないのよね……。三人はどう思う?」
練習の前に高嶺に呼ばれた三人は、会議室のテーブルについて資料を見ている。
『ミルキーウェイ スター フェスティバル』
自分たちが所属する事務所が主催の七夕モチーフイベントである。
高嶺としては、花明かりフェスでの約束通り、夏の一番規模が大きいイベントまでステラペのライブは休みにしたい。それに合わせてこちらも様々なスケジュールを調整しているのだから、いくら上司とはいえ思い付きでライブに出ろなんて、言って欲しくはない。
まだ子供である彼らなら事務所命令だとライブに出すことは可能ではあるが、学生でもある彼らの本分を蔑ろにはしてはいけないと思い、彼女は三人に問いかけたのだった。
「うーん……でも22日から夏休みだもんね。せっかく事務所主催だし、ユニット名に星が入ってるから出た方がいいのは、なんとなく分かる……」
「問題はその前のテストでしょ? 学校違うけど大体同じ期間でやるでしょ。影響がゼロだとは言えなくない?」
瑞貴の淡々と放たれた言葉に、顔を強張らせる翔。そうでした……と小さく呟いて項垂れた。
「安慈くんはどう? 社長やプロデューサーの気まぐれだから、無理なら無理ってハッキリ言っていいんだからね?」
高嶺がそう言うと、安慈は自分のバッグから手帳を出してスケジュールを確認した。
「そうですね……1枠ステージをやるのは難しいと思います。テスト自体は本番までには終わるのでそこは良いんですけど、通しで6曲練習する時間を考えるとちょっとタイトですね……でも」
安慈は手帳を閉じるとテーブルに置いて、翔や瑞貴の方を見てから、高嶺の顔を見る。
「学生であるのは、翔や瑞貴も、他の学生がいるユニットも条件は一緒です。テスト期間も同じくらいのはず。だから、俺だけ特別待遇なのはなんだか居心地悪いです」
「けど……アンジー難しいこと勉強してるんでしょ?」
翔が不安そうに口を挟んだ。
「大学は持ち込みでテスト受けられたりするし、効率よく勉強する方法は、お陰様で去年の忙しい時に身につけたから大丈夫。そこは置いておいて、翔も瑞貴もテストがあるんだから、練習時間も今までと同じくらい取れるかと言ったらちょっと厳しいでしょ?」
安慈がそう言うと、瑞貴が小さくため息を吐いた。
「まぁね。普段からちゃんと授業受けていれば、わざわざテスト勉強で追い込まなくても良いから僕は大して変わらないけど」
そう言いながら、瑞貴は翔の方を見る。
「わ……坊ちゃんがさりげなく攻撃してきた……」
「数学だけ寝てるのは誰だっけ?」
「3年になってからは寝てないよ! ちゃんと頑張ってるよ! 寝ると横からハリセン飛んでくるんだもん!」
「はいはい、で、どうしたいのかしら?」
『ハリセン』に思わず吹き出してしまった3人だったが、この調子では話が進まないと高嶺が仕切り直す。
「おそらく、1枠を埋めるのは現状厳しいと思います。俺たちも夏のイベントに向けてのセットリストで練習やレッスンをやっているで、そのままこっちに流しても良いですけど、まだ納得のいく仕上がりではないので……。なので『出ない』ということにしたいんですけど……」
安慈の言葉に、そうよね、と高嶺が相槌を打つ。
「出ないと言っていたユニットが、突然、ステージに出てきたら面白そうじゃないですか?」
安慈が、ニィっと笑ってそう言うと、高嶺は目を丸くし、翔と瑞貴も同じようにニィッと笑った。
「なるほどね……ホント、安慈くんて頭良いのね」
「それなら、1曲だけでもいいですよね? やり慣れた曲か、今一番練習している新曲かどちらかで」
「それなら、ミルフェスに向けて一曲だけ集中して練習できるし、そのまま夏フェスにもっていける」
「テスト勉強にも負担がないってことだね」
ニコニコ笑う三人を見て、高嶺がホッとしたようにため息をついた。
「オッケー。本当に安慈くんには驚かされてばっかりだわ。そしたら、公式での告知無しで出演すると言うことで、話を通しておくわ。練習前にありがとうね」
「はい! よろしくお願いします」
高嶺は荷物一式持って会議室を出ていった。
「じゃあ、オレたちも行こうか」
「そうだね」
「安慈、もっとハッキリ出ないって言うかと思ったけど、面白い事言ったね」
荷物をまとめながら瑞貴がそう言った。
「出ないって、言うのは簡単だけどね。でも、事務所に所属している以上、やらなければいけないこともあるし、ジュノフェスでの二人のグリーティングを見てたら、三人揃ったステラぺを待ってる人がいるって分かったから、少しでも表に出たら喜んでくれる人もいるんじゃないかな? と思って」
「アンジー頭いいなぁ。知ってたけど」
「ふふっ。じゃあ、練習始めようか」
「うん!」
そうして、三人はレッスン室へと向かっていった……。