Prologue
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ギシッ、ギシ……
アリシアは何がか軋む音で目を覚ました。
ゆっくりと、目を開けてみるが、あたりは暗闇である。
『━━この音は?』
「やべえ、そろそろ人がきちまうゾ。
早いところ制服を……」
焦ったような、聞き覚えのない声。
その間に徐々に頭が冴えていく。
そうだ、確か今日はナイトレイブンカレッジの入学式だった。
黒い馬車が迎えに来て、棺に入れられここまで辿り着くうちに、眠ってしまったのだろう。
「う〜ん、この蓋重たいんだゾ!
こうなったら、奥の手だ、ふな〜〜〜…
それっ!!!」
状況がはっきりしたのと同時に、突然の大きな声と共に視界が青い炎に包まれ、思わず悲鳴をあげる。
『ぎゃーーーーっ!!!?』
「さてさて、お目当ての…って、
ギャーーー!?
お前、なんでもう起きてるんだ!?」
驚いて起き上がると、眼前に現れたのは黒い小動物。耳からは青い炎が吹き出ている。初めて見る魔物の類の予想もしない登場に、頭がついていかず混乱する。
『し、喋るタヌキ…!?』
「誰がタヌキだ!
俺様はグリム様なんだゾ
まぁいい。そこの人間。
俺様にその服をよこすんだゾ
さもなくば…丸焼きだ!」
…こいつ、突然現れて、なんて偉そうな…、
周りの棺はまだどれも空いておらず、どうやら1番初めに目覚めたのは私のようだ。
魔法でこの狸をやっつけてもいいが、入学早々悪目立ちはしたくは無い。
とりあえず棺から出て、先生などが居ないか逃げながら探してみることにした。
『誰がいませんかー!』
「コイツ、待つんだゾ!」
ひたすら廊下や、中庭を走り回る。
生徒も先生も全く居ないようだ。
もういっそ自分で倒してしまおうか、、と考え出した矢先、たどり着いたのは薄暗い図書室。どうやらここで行き止まりのようだ。
「俺様の鼻から逃げられると思ったか?人間め!!」
『しつこいなぁ、狸ちゃん!!』
「だから、狸じゃねぇっつってんだゾ!!
さぁ、丸焼きにされたくなかったらその服を…
ふぎゃ!?痛えゾ!なんだこの紐!?」
突然、狸の後ろから紐が飛んできて、狸の体を打つ。コツコツと靴の音を鳴らしながら現れたのは、高いシルクハットに黒い仮面、床につきそうな長いマントを羽織った長身の男だった。
(ここの先生かな…?癖強っ)
「紐ではありません。愛のムチです。
ああ、やっと見つけ出した、君今年の新入生のアリシア君ですね?」
『は、はい…なんで私の名前を…?』
「そりゃ今年の新入生で女子は貴女1人だけですから、見りゃ分かります。
女子でありながら闇の鏡に選ばれるとは、優れた魔法士の素質を持つようですね。
しかし、ダメじゃありませんか。勝手にゲートから出るなんて!
それに、まだ手なずけられていない使い魔の同伴は校則違反ですよ。」
私のことを認知しているあたり、やはりここの先生のようだ。どうやらこの狸が私の使い魔だと勘違いしているようである。
『いや、こいつは私の使い魔じゃ…』
「離せ〜!
俺様はこんなやつの使い魔じゃねえんだゾ!!
…フガフガ!」
「はいはい、反抗的な使い魔はみんなそう言うんです。
少し静かにしていましょうね。」
私と狸の訂正をろくに聞かずに、狸の口を手で塞ぐ。こちらの言い訳は耳に入らないようだ。
「まったく。勝手に扉を開けて出てきた生徒など前代未聞です!」
『だって、その狸が扉を開けたんですもん…』
つい言い返すが、この先生の怒りは収まりそうになく、語尾が弱くなってしまう。
最初の数日は大人しくして様子を伺い、女だと思って油断している寮長からその座を奪ってやろうと思っていたが、当初のプランは最初から崩れ落ちてしまったようだ。
「はぁ、どれだけせっかちさんなんですか。
さぁさぁ、入学式はとっくに始まっていますよ。鏡の前に行きましょう。」
『えーっと、その前に、貴方はここの先生でしょうか…?』
「そういや、自己紹介かまだでしたね。向かいながらお話しましょう。私、優しいので。
わたしはディア・クロウリー。
ここナイトレイブンカレッジの学園長です。」
先生かと思っていたらなんと学園長だったようだ。最初から偉い人に目をつけられてしまった……。
「君は父も母も我が校の卒業生のようですね。
父上はつい最近魔法史に残る大発見をした魔法学者、母上はかつて5本の指に入るとまで言われた大魔法士だとか。
親御さんに恥じぬ活躍を期待してますよ、アリシア君。」
『はい…』
仮面の下の鋭い目で威圧され、弱々しく返事をする。
「さ、入学式に行きますよ。」
学園長に連れられ、鏡の間へ戻ってきのだった。
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