背中
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
薄暗い部屋の中、月明かりが二人の影を映す。
ベッドで横たわる人の上に覆いかぶさるようにもう一人。
私を見上げるベニマルは部屋に私が入ってきたのに気付いていたのか驚いた様子はなかった。
「名前?」
しかし理由までは分からなかったらしい。
なんの躊躇も無く私を布団の中へ招き入れると「なんかあったのか?」と優しく問いかけてくる。
しばらく言葉を発さずに暖かな布団に身を任せて心の準備を整えようと思ったのだけど準備なんてできるはずもない。
うつ伏せに顔を枕に埋める私は意を決して言葉を紡いだ。
「痺れを切らして夜這いに来ました。」
こういった関係になってどのくらい経ったのだろう。
少なくとも意地になってたらいつまでも進展しないのは明白で。
何時まで待たせるのか。早く手を出せ。
伝えたいのはそれだけである。
行為というものには指して執着はないのだけど
好きな人に自分を求めて欲しいと思うのは当然の気持ちであって然るべきだ。
「……夜這いって意味わかってるのか?」
そんなこちらの気持ちなんて露知らず、笑い混じりに彼から出た言葉に
馬鹿にしたつもりなんて微塵もないのは分かっている。
その目に少しだけ動揺の色が現れたのが何よりの証拠だ。
しかしきっとそれも、いつも通り理性で押し切るのだろう。
ただ、今まではそれに甘えていた自分もいたが
残念ながら今日はそうはさせないつもりでここにきているのだ。
「奥手な侍大将殿にはここまでしないとだめみたいだから。」
真面目な顔をベニマルに向けると私の本気が伝わったのか真っ直ぐな目で見返される。
吸い込まれるような緋色の目が綺麗だなんて、そんな事を思った。
「俺が、」
「ベニマル。
据え膳食わぬはなんとやらだよ。」
ベニマルの言葉を遮って名前を呼ぶ。
続けて故郷の諺を伝えるとなんとなく意味を察したのか
観念したかの様に盛大なため息が溢れた。
一人で寝るには大きすぎるベッドに私を沈めると
「俺の気も知らないで……」と覆いかぶさるように影を作る。
「後悔、するなよ」
それは最後の確認なのか、警告なのか。
たくし上げられた衣服の感触と
撫ぜるように背中に触れる唇を感じて目を閉じた。
1/1ページ