Tryst
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「名前様。こんな夜更けにあまり勝手に出歩くのはお止めください。」
後ろから聞こえた凛とした声に平然を装って振り向いた。
昼間の装束より幾分ラフな格好をしているベニマルが小走りでやってきて近くまで来ると歩を緩めた。
「……」
「俺は貴女の護衛を任された身です。何かあってはリムル様に申し訳が立ちません。」
夜の散歩は唯一心が休まる時間だった。
知らない世界に転生してみると周りは魔物だらけ。
元々日本から転生した人間であるリムルに出会わなかったらと思うとぞっとしない。
おまけに今度は鬼だなんて。
出会いからして最悪だったのに護衛とか言って近くにいられたら気が休まらない。
やっとのこと村のゴブリン達に慣れてきたばかりで、
それでもそんな非日常から1人開放される貴重な時間だというのに。
「あまり、近づかないでください。」
そう言うとベニマルは足を止める。
少し口調が強くなってしまったかもしれない。
誤解してほしくないのだが
けして魔物たちと過ごすのが嫌なわけではない。
誰もが良くしてくれるし、慕ってくれる。
それでも、本能に刻まれた一線は越えられない。
ベニマルはそれに気付いたのか遠慮なく問いかけた。
「俺達が、怖いんですか?」
大鬼族は戦闘に特化した部族だという。
恐怖を抱かれていることくらいわかるのだろう。
というか戦闘に特化ってなんだ。意味が分からない。
怖いに決まっている。
「怖いですが、怖いというより
得体が知れない……?」
思わず本音がこぼれた。
人間ではない、と言うだけでこんなにも不安になる。
だから時間を掛けて受け入れていきたいのに環境がそれを許さない。
かなり酷いことを言ったにも関わらず、ぽかんと虚をつかれたような顔をしたベニマルの顔が少しだけ面白くて救われた。
「そんな見も蓋もない。
……分かりました。
なら、たまにでいいので夜は俺と話をしましょう。
ゆっくりでいいので俺達のことを知ってください。」
何でそんな提案をしたのかベニマル自身も分からない。
出会ったときに与えた恐怖に罪の意識があった事は否めないが、
それだけでは無い気がした。
「あの時の事は、謝っても謝りきれません。
怖い思いをさせて申し訳無かった。
だが、俺達大鬼族はリムル様に忠誠を誓った。
きっとすぐに信用はできないかもしれないが…」
取ってつけたような敬語もなくなって、伏し目がちに語るベニマルからはあの時の恐怖は感じなかった。
すぐに意識を変えるのは無理かもしれない。
でもリムルが許して、仲間に加えたことはきっと間違いではないと信じたいのも本当だ。
「リムルが何を言ったか知らないけど。
ベニマルさんがそう言うのならまずそちらから歩み寄って欲しいです。
なかなか踏ん切りが付かなくて……。
あと、出来れば今のままの口調で話してください。」
少し悪戯な笑顔を向けると
ベニマルはバツが悪そうに目線を反らして
取り繕うのを諦めたのか小さく溜め息をついた。
「わかった。あとベニマルでいい。
そっちこそ敬語なんかいならいだろ。」
「そうだね。じゃぁベニマルも私のことは名前と呼んで。」
「いや、それは………。
じゃぁ誰もいない時だけだ。これ以上は譲れない。」
そちらから歩み寄れという言葉を思い出したのか慌てたように訂正した。
小声で「リムル様、すみません。」と聞こえたのは気のせいにしてあげよう。
「よろしくね。ベニマル」
「あぁよろしく、名前。」
Tryst
気を許すまできっと時間は掛からない
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出会い編書き始めました。
書きたいところから書いているのでしばらくお話が繋がらないと思いますが、
補足等も今後別で追加していきたいです。
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