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【大太】従順な飼い犬へ



「太一せんぱーーーい……」

「ん~…?」

「構ってくださいよぉ~……」

「ん~…」

ベッドをソファ代わりにし、ぺらぺらと雑誌を捲りながら太一は曖昧な返事をする。自分のすぐ隣で唸っている大輔には目もくれず、雑誌の内容に軽く目を通していた。
大輔は太一のお腹に両腕を回し抱きしめてくる。人懐っこい猫のように頬にすりすりと擦り寄ってくるので、軽くかわすように空いた手で頭をくしゃくしゃと撫でてやれば、まるでやんちゃな犬のように見えないしっぽを振り、嬉しそうに頬をゆるめる。こいつは猫というより犬だな。そんなことを思いながら頭を撫でてやるその手を下ろせば、また撫でてくれと言わんばかりに頭を肩に擦り付けて来た。

ほんとに犬みたいだなぁ。

太一は緩む口角に力を入れて、雑誌をぱたんと閉じた。大輔はやっと構ってくれるのかと期待するようにバッと勢いよく顔を上げる。それに合わせて大輔の胸ぐらを軽く掴んでこちらへ引き寄せた。

「ん。」

「んぶ、」

ちゅ、と軽く音を立ててお互いの唇が触れ合った。ゆっくり離せばぽかんとした顔の大輔が視界に入り、太一は思わずぶはっ、と吹き出してしまった。


「え、は、な、何で笑うんすか!!!」

「はは、いんや、間抜けな顔してんなーって。」

悔しそうにぐぬぬと唸る大輔が何だかおかしくて、わははと声を出して笑った。俺だってー!と声を上げる大輔を見つめれば、大輔はなんすか、とちょっと拗ねたように返してきた。

「………これで満足したか?」

まるで悪戯に成功した子供のように、太一はニヤリと不敵に笑う。その瞬間心の中で揺らいだ本能に身を任せて、大輔は太一の両手首をつかみ押し倒した。ぼすっ、と軽く音を立てて太一はベッドに身を預ける。突然の事に少し驚きながらも大輔を見れば、ふーっ、と熱が籠った息を吐き出してこちらを見つめてくる。赤く染まった頬と、瞳の中にちらつく欲情に気がついて、太一は困ったなぁと肩をすくめる。

ちょっと甘やかしすぎただろうか。

この飼い犬は従順だけれど気を抜くとすぐにご褒美を欲しがる。そんなところも可愛いのだけれど、そんなことを思いながら太一が優しく右腕を動かせば、大輔は渋々といったように拘束をゆるめるがそれでも逃がさないとばかりに左手首を押さえる力は強めてきた。太一はゆっくりと右手をあげれば、つぅ、と親指で大輔の唇を掠める。ゆらりと、大輔の瞳が欲で揺れるのがわかった。

「……いいぜ、ご褒美くれてやるよ。」

その言葉が合図だと、大輔はすぐに太一の唇へと貪りつこうとしたが、それは太一の右手に口元を押さえつけられ「んぶ、」とまたくぐもった声を上げた。

「………たいひしゃぁん………」

「くすぐってぇだろ。もごもごすんなよ。」

「………う~~………」

「ほら、先に風呂だろ。ご褒美やるんだからお前が風呂ためろよ、一番風呂は俺だからな。」

そんな太一の言葉を聞けば、やっぱり逆らえない大輔は渋々と言ったように風呂場へと駆けていく。顔は拗ねているがその足取りは軽く明らかに見えないしっぽはぶんぶんしていた。
分かりやすいやつ、と苦笑すると風呂から出たら次起きるのは朝方だななんて思いながら晩御飯の食器を洗うために太一も重たい腰を上げた。


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