【キヨヒロ】Ideal image
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
自室のベッドに身を預けながら、何も無い天井を見上げる。先ほどまで晩御飯を頬張っていたガンマモンは隣で可愛らしい寝息を立てながら夢の中を漂っているようだ。時間は夜の十時過ぎだが、ガンマモンはいつも八時を越えた頃には眠りについてしまう。そんな時間から寝て朝まで起きないのだから、本当に幼い子どものようだと思う。いつも騒がしいガンマモンが寝てしまえば、この小さな一室は静かになってしまう。起動したままのデスクトップパソコンからは重々しい可動音が響き、時折廊下からは誰かの足音が聞こえる。
(暇だな。)
何の変化もない天井を見つめて、どれほど時間が立っただろう。きっと、たかが数分か。宙は体を起こし、スマートフォンを取り出す。特に通知はなし。提出予定の課題も全て終わっている。本当にやることがない。こういう時、普通の男子中学生なら何をして時間を潰すのだろうか。自分の周りの人は皆ゲームやテレビで時間を潰しているのだろうか。
実家で過ごしていた時は、朝起きてから寝るまでずっと何かをしていた。母は海外へ仕事に出かけ、父はいつも自室に閉じこもって訳のわからない研究ばかりをしていた。こちらから声をかけなければ父は顔すら出さない。物心ついた時から一人暮らしをしているようなものだ。母は父のそんな性格を知ってか、幼い頃からたくさんのことを教えてくれた。料理、洗濯、掃除——いつの間にかそれは自分の生活の一部になり、全てをマスターした頃に、母はほとんど帰ってこなくなってしまった。けれど、そんな母に何か思うこともない。こまめに連絡はくれるし、母は母のやりたいことをしている。それは父も同じようなもので、宙にとっては当たり前の世界だ。だから、朝起きて学校にいく準備をしながら家事を片付け、帰ってからも買い出し、料理、洗濯、課題、としていればいつの間にか寝る時間だった。
寮生活が始まってからは、寮内の食堂で食事をとるようになり、料理をすることは格段に減った。そのせいで買い出しの時間も消え、二人分の洗濯が一人になれば回数も減る。今まで当たり前に流れていた時間がなくなって、宙はこの夜をどう過ごせばいいかいまだによく分からなかった。入学したての頃はこの生活に慣れるのにいっぱいいっぱいで、そんなことを考えることもなかったが、この生活にだいぶ慣れてきて、時間を確保するというのができるようになれば、次はこの時間をどう使おうかという悩みに発展してしまった。
(ガンマモンが起きててくれればなぁ〜。)
そう期待を込めて隣を見るけれど、んみゃ、と幼い声を立てて夢の中だ。しばらくもそもそとベッドの上で身動きした後、ゆったりと体を起こした。喉が渇いたような気がする。どうせ時間もあるし、食堂まで降りてみようか。
寝ていてもよく動くせいで落ちてしまった布団をガンマモンにかけてやり、部屋着の上から簡単にパーカーを着込む。冬が到来し始めた今は、夜になれば外の気温は十度を切る。小さな個室に比べ、広い廊下は少し冷えていて、自然と体が震えた。
食堂に入るが、すでに配膳時間は終了したそこには人一人いない。食堂の職員ももう帰ったようだ。備え付けられたウォーターサーバーに小さな水筒を置き、とぽとぽと透明な水が流れ落ちるのを見つめる。ここ数ヶ月で色々なことがあった。時の流れといえば、今あいつはどうしてるんだろうか。ちゃんと自分で実体化をコントロールできるようになっていればいいけど。あの時のことを思い出そうとすると、自然と頭痛と眩暈まで思い起こしてしまう。
(あぁ、だめだ……わかっているのに……)
ずきっ、と鈍い痛みが脳を駆ける。キーンと甲高い音が聴覚を埋め尽くし、他のことが考えられなくなる。今日はもうダメかもしれない。時間が余るとロクなことを考えなくなる。今日はもう部屋に戻って、未だ覚醒している意識を無理やりにでも落としてしまった方がいいだろう。そろそろかと水筒に手を伸ばした瞬間、ぐらっ、と視界が横に傾いた。脳が理解するよりも早く、本能によって縮こまった体が衝撃に耐える。
「おっと、……大丈夫かい、天ノ河くん?」
「……せん、ぱい……?」
「意識はあるね、僕のことはわかるかい?」
「……先輩」
「まぁ、わかってるようだね。」
体全体が清司郎にもたれかかっているようだ。何とか立っていたけれど、清司郎がゆっくりと誘導してくれて、そのまま体の力を抜いてその場に座り込む。歪んだ視界がゆっくりと元に戻って、声だけで判断していた彼の姿が見えてくる。その距離感を確かめたくて、ゆったりと腕を持ち上げ、清司郎の頬を撫でる。くすぐったそうに身を捩った清司郎だが、そのまま優しく宙の手を握った。
「目は? 見えてるかい?」
「……見えます。もう、大丈夫です……」
視界も開けて、頭痛も治った。身を預けるのが申し訳なくて、早々に体を起こす。まだ不安げにこちらを見つめる清司郎にもう一度大丈夫だと伝え、たっぷりと入った水筒を手に取る。清司郎もこれ以上の干渉はできないと察したのか、近くの席に腰掛けた。宙を受け止めるために投げ出したのであろう鞄からはノートパソコンが取り出される。
「……すみません、パソコン、大丈夫ですか?」
「ん、正常に作動するし大丈夫だよ。元々古いパソコンだから今更壊れようとどうってことない。」
そう言ってしばらくキーボードを叩いていた清司郎だったが、特に内部の異常も見当たらなかったようだ。すぐにパソコンを閉じて、宙に向き直る。
「体調、優れないのかい? もしかしてこの前の……」
「いえ、もう影響はないですよ。ただ、体がまだ覚えてしまってるみたいで……。先輩が気にする必要はないです。」
宙の中では当然のことを言ったつもりだったのだが、何処が気に食わなかったのだろう。清司郎は不服そうにむっ、と口を瞑る。宙はその様子にたじろぐが、どうして清司郎がそのような反応をするのか分からない。困惑を見せる宙の表情に、清司郎はさらに眉をひそめた。
「君ねぇ、僕だって関係者なんだから、気にするぐらいはするだろう。それに、それを除いたって体調の悪い人がいれば気にする。」
ふん、とわざとらしく腕を組みながら、清司郎はその瞳をこちらに向ける。助けてもらったとはいえ、この絡みようを『ウザい』と思ってしまうのは、自分の性格が少しひねくれているからだろうか。
「はぁ……迷惑かけたのなら謝ります。もう部屋に戻りますから大丈夫ですよ。」
「そういうことじゃない。」
「……えーっと、」
だめだ、話が通じない。デジモンと出会った時はあれだけへにょへにょになって自分の後ろに隠れるというのに、そうでなければこんなにも威張って偉そうだ。実際立場的には偉いのかもしれないが、普段の彼を見てしまっているのでその威厳はほとんど感じられない。そうだと言うのに、自分はとてつもなく甘いものだから、彼の話を切る事も出来ず、ここから去ることも出来ず。
「今までずっと思っていたが、どうして君はそう1人で抱え込もうとする?」
目が点になる。どういう脈略でその言葉が出てきたのか意味がわからない。
「……えっと、おれ別に抱え込んだりなんか……」
「しているだろう。今のだって、僕が来なかったらどうしていた? どうせ1人で何とかなると思って誰にも相談しなかっただろう。」
「…………。」
恐らく図星だ。この部屋で倒れようと、自分しか知らないのならきっと誰にも話さない。原因が分かっているのだから尚更だ。
でもそんなの、当たり前じゃなかろうか。だって、自分の事なのだ。誰かに相談してどうなる?もちろん、重い病気などにかかれば、医者にでも頼るかもしれないが、この程度の頭痛ならみんなだってやり過ごしているんじゃないのか。
だって、今までだって1人でこなせたのだ。
「誰かに言わなければ、その誰かに迷惑かけることも、変に不安を煽ることもないじゃないですか。このくらい1人でだって、」
「倒れるほどの症状が出てるというのに、1人で抱えるレベルの話ではないだろう。デジモン関係なのだし、一層のこと僕たちに、」
「もういいんです、終わったことなんです。先輩に迷惑かけたことは謝ります。でも、もう大丈夫ですから……!」
自分は何にこうも必死になってるのだろう。どうしてこんなにも彼を拒絶してしまっているのだろう。あぁ、また頭が痛くなってきた。酷くなる前に、もう横になって眠ってしまった方がいい。
「君はッ……! ……天ノ河君、君はどうして1人で、」
「……先輩、すみません。この話はまた今度にしましょう。……すみません、おやすみなさい……ッ!」
水筒を握りしめ、背後からの制止の声も無視して走り出す。廊下を走ってはダメ。耳にタコが出来るほど聞かされたルールも、今は守る気になれなかった。恐らく、背後から追われる気配はない。そうだと言うのに、宙の中ではずっと彼の言葉が再生され、それが頭痛と合わさり、何度も頭を殴られるような、そんな気分だった。
(暇だな。)
何の変化もない天井を見つめて、どれほど時間が立っただろう。きっと、たかが数分か。宙は体を起こし、スマートフォンを取り出す。特に通知はなし。提出予定の課題も全て終わっている。本当にやることがない。こういう時、普通の男子中学生なら何をして時間を潰すのだろうか。自分の周りの人は皆ゲームやテレビで時間を潰しているのだろうか。
実家で過ごしていた時は、朝起きてから寝るまでずっと何かをしていた。母は海外へ仕事に出かけ、父はいつも自室に閉じこもって訳のわからない研究ばかりをしていた。こちらから声をかけなければ父は顔すら出さない。物心ついた時から一人暮らしをしているようなものだ。母は父のそんな性格を知ってか、幼い頃からたくさんのことを教えてくれた。料理、洗濯、掃除——いつの間にかそれは自分の生活の一部になり、全てをマスターした頃に、母はほとんど帰ってこなくなってしまった。けれど、そんな母に何か思うこともない。こまめに連絡はくれるし、母は母のやりたいことをしている。それは父も同じようなもので、宙にとっては当たり前の世界だ。だから、朝起きて学校にいく準備をしながら家事を片付け、帰ってからも買い出し、料理、洗濯、課題、としていればいつの間にか寝る時間だった。
寮生活が始まってからは、寮内の食堂で食事をとるようになり、料理をすることは格段に減った。そのせいで買い出しの時間も消え、二人分の洗濯が一人になれば回数も減る。今まで当たり前に流れていた時間がなくなって、宙はこの夜をどう過ごせばいいかいまだによく分からなかった。入学したての頃はこの生活に慣れるのにいっぱいいっぱいで、そんなことを考えることもなかったが、この生活にだいぶ慣れてきて、時間を確保するというのができるようになれば、次はこの時間をどう使おうかという悩みに発展してしまった。
(ガンマモンが起きててくれればなぁ〜。)
そう期待を込めて隣を見るけれど、んみゃ、と幼い声を立てて夢の中だ。しばらくもそもそとベッドの上で身動きした後、ゆったりと体を起こした。喉が渇いたような気がする。どうせ時間もあるし、食堂まで降りてみようか。
寝ていてもよく動くせいで落ちてしまった布団をガンマモンにかけてやり、部屋着の上から簡単にパーカーを着込む。冬が到来し始めた今は、夜になれば外の気温は十度を切る。小さな個室に比べ、広い廊下は少し冷えていて、自然と体が震えた。
食堂に入るが、すでに配膳時間は終了したそこには人一人いない。食堂の職員ももう帰ったようだ。備え付けられたウォーターサーバーに小さな水筒を置き、とぽとぽと透明な水が流れ落ちるのを見つめる。ここ数ヶ月で色々なことがあった。時の流れといえば、今あいつはどうしてるんだろうか。ちゃんと自分で実体化をコントロールできるようになっていればいいけど。あの時のことを思い出そうとすると、自然と頭痛と眩暈まで思い起こしてしまう。
(あぁ、だめだ……わかっているのに……)
ずきっ、と鈍い痛みが脳を駆ける。キーンと甲高い音が聴覚を埋め尽くし、他のことが考えられなくなる。今日はもうダメかもしれない。時間が余るとロクなことを考えなくなる。今日はもう部屋に戻って、未だ覚醒している意識を無理やりにでも落としてしまった方がいいだろう。そろそろかと水筒に手を伸ばした瞬間、ぐらっ、と視界が横に傾いた。脳が理解するよりも早く、本能によって縮こまった体が衝撃に耐える。
「おっと、……大丈夫かい、天ノ河くん?」
「……せん、ぱい……?」
「意識はあるね、僕のことはわかるかい?」
「……先輩」
「まぁ、わかってるようだね。」
体全体が清司郎にもたれかかっているようだ。何とか立っていたけれど、清司郎がゆっくりと誘導してくれて、そのまま体の力を抜いてその場に座り込む。歪んだ視界がゆっくりと元に戻って、声だけで判断していた彼の姿が見えてくる。その距離感を確かめたくて、ゆったりと腕を持ち上げ、清司郎の頬を撫でる。くすぐったそうに身を捩った清司郎だが、そのまま優しく宙の手を握った。
「目は? 見えてるかい?」
「……見えます。もう、大丈夫です……」
視界も開けて、頭痛も治った。身を預けるのが申し訳なくて、早々に体を起こす。まだ不安げにこちらを見つめる清司郎にもう一度大丈夫だと伝え、たっぷりと入った水筒を手に取る。清司郎もこれ以上の干渉はできないと察したのか、近くの席に腰掛けた。宙を受け止めるために投げ出したのであろう鞄からはノートパソコンが取り出される。
「……すみません、パソコン、大丈夫ですか?」
「ん、正常に作動するし大丈夫だよ。元々古いパソコンだから今更壊れようとどうってことない。」
そう言ってしばらくキーボードを叩いていた清司郎だったが、特に内部の異常も見当たらなかったようだ。すぐにパソコンを閉じて、宙に向き直る。
「体調、優れないのかい? もしかしてこの前の……」
「いえ、もう影響はないですよ。ただ、体がまだ覚えてしまってるみたいで……。先輩が気にする必要はないです。」
宙の中では当然のことを言ったつもりだったのだが、何処が気に食わなかったのだろう。清司郎は不服そうにむっ、と口を瞑る。宙はその様子にたじろぐが、どうして清司郎がそのような反応をするのか分からない。困惑を見せる宙の表情に、清司郎はさらに眉をひそめた。
「君ねぇ、僕だって関係者なんだから、気にするぐらいはするだろう。それに、それを除いたって体調の悪い人がいれば気にする。」
ふん、とわざとらしく腕を組みながら、清司郎はその瞳をこちらに向ける。助けてもらったとはいえ、この絡みようを『ウザい』と思ってしまうのは、自分の性格が少しひねくれているからだろうか。
「はぁ……迷惑かけたのなら謝ります。もう部屋に戻りますから大丈夫ですよ。」
「そういうことじゃない。」
「……えーっと、」
だめだ、話が通じない。デジモンと出会った時はあれだけへにょへにょになって自分の後ろに隠れるというのに、そうでなければこんなにも威張って偉そうだ。実際立場的には偉いのかもしれないが、普段の彼を見てしまっているのでその威厳はほとんど感じられない。そうだと言うのに、自分はとてつもなく甘いものだから、彼の話を切る事も出来ず、ここから去ることも出来ず。
「今までずっと思っていたが、どうして君はそう1人で抱え込もうとする?」
目が点になる。どういう脈略でその言葉が出てきたのか意味がわからない。
「……えっと、おれ別に抱え込んだりなんか……」
「しているだろう。今のだって、僕が来なかったらどうしていた? どうせ1人で何とかなると思って誰にも相談しなかっただろう。」
「…………。」
恐らく図星だ。この部屋で倒れようと、自分しか知らないのならきっと誰にも話さない。原因が分かっているのだから尚更だ。
でもそんなの、当たり前じゃなかろうか。だって、自分の事なのだ。誰かに相談してどうなる?もちろん、重い病気などにかかれば、医者にでも頼るかもしれないが、この程度の頭痛ならみんなだってやり過ごしているんじゃないのか。
だって、今までだって1人でこなせたのだ。
「誰かに言わなければ、その誰かに迷惑かけることも、変に不安を煽ることもないじゃないですか。このくらい1人でだって、」
「倒れるほどの症状が出てるというのに、1人で抱えるレベルの話ではないだろう。デジモン関係なのだし、一層のこと僕たちに、」
「もういいんです、終わったことなんです。先輩に迷惑かけたことは謝ります。でも、もう大丈夫ですから……!」
自分は何にこうも必死になってるのだろう。どうしてこんなにも彼を拒絶してしまっているのだろう。あぁ、また頭が痛くなってきた。酷くなる前に、もう横になって眠ってしまった方がいい。
「君はッ……! ……天ノ河君、君はどうして1人で、」
「……先輩、すみません。この話はまた今度にしましょう。……すみません、おやすみなさい……ッ!」
水筒を握りしめ、背後からの制止の声も無視して走り出す。廊下を走ってはダメ。耳にタコが出来るほど聞かされたルールも、今は守る気になれなかった。恐らく、背後から追われる気配はない。そうだと言うのに、宙の中ではずっと彼の言葉が再生され、それが頭痛と合わさり、何度も頭を殴られるような、そんな気分だった。
1/3ページ