このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

【:ヤマ太(♀)】小話

「どうしたんだやまと、そんな難しい顔して。」

「………。」

大人二人分と、まだ離乳食を始めて間もない子ども二人分の小さな皿を洗い終え、太一は手を拭いながらリビングへと戻った。この時間はいつも役割分担をして子の世話や家事を行う。やまとはちょうど子ども二人の風呂を済ませたところだった。
そんな中、子を自由にさせながら難しい顔をして座り込むやまとに、太一は不思議そうに声をかけた。やまとはそれに気付いて顔を上げると、珍しく困ったように眉を下げた。

「……いや、実は、…あ、痛い……」

「ん? あ、こら! またパパの髪引っ張ったの? 痛い痛いしちゃうだろ〜。」

「あ〜、ぅ、」

「あぁ〜〜!」

容赦なく髪を引っ張る二人の子の手を優しく包み込み、やんわりと離してやる。イタズラができないように二人揃って太一の膝に座らせると、腕で固定した。まだ遊び足りなかった二人は不満そうに声を上げている。

「……結構子どもって力強いよな。」

「見かけによらずというか、手加減がないからなぁ。」

引っ張られたところを優しく撫でながら、やまとは何とも言えぬ顔をする。自分の子だから何しても可愛くて仕方ないのだが、痛いものは痛い。

「だが、何故こうも俺の髪ばかり狙うんだろうか。」

前からやまとの姿を見てはその小さな瞳で追いかけたり、あぅあぅ声を上げることがあったが、最近はつかまり立ちを習得して活動範囲を広げた途端、執拗にやまとの髪を狙うようになった。しかも二人とも、だ。

「それはね、やまとの髪がきらきらしてるからだよ。」

やまとの金糸を指で優しくときながら、太一は愛おしそうに目を細めた。

「太陽の光とか、部屋の電気とかでね、きらきら輝いてるのが綺麗なの。きっと子どもたちもそれが気になっちゃうんだろうね。」

太一の手を、やまとは気持ちよさそうに微笑んで受け入れる。やまとよりもうんと小さいその手は、やまとよりも温かい。

「子だって金髪だろう。」

「この子も確かにそうだけど、やっぱりおれの遺伝子も入ってるから若干茶色が混ざってる。綺麗だけど、やまととは違うんだ。」

子どもの一人はやまとと同じ金糸の髪を持っているが、若干色が違った。瞳の色も、青がかっているものの少し暗めだ。

「あぅ〜、あぶ、ぶー」

「あきゃ、ぁ〜、ぶぶぶ」

太一が触っているのに、自分たちが触れないのは不満なのか、二人の方に手を伸ばして不満げに声を上げている。口から溢れた涎をティッシュで拭ってやる。

「……次は髪を食われそうだ。」

「金糸の食べ物かぁ〜」

「こら、たいち。」

やまとに怒られて、太一はくすぐったそうに笑う。頭を撫でる太一の手を優しく下ろすと、次はやまとが太一の鳶色の髪を撫で始めた。甘えるように太一もその大きな手に擦り寄る。その手は髪を堪能すると耳を擽り、頬へと流れ落ちる。そのまま顎を少し上げさせられ、親指で唇を撫でれば、太一は目を瞑った。ちゅっ、とわざとらしく音を立てて唇を食まれる。そのまま何度も角度を変えて唇を押し付けられたあと、ぢゅう、と喉を吸われた。

「っ、あ、」

思わず喉が鳴る。太一はそっとやまとの唇に人差し指を当てる。

「もう、……まだ子がいるからだめだよ。」

「……すまない。」

「んーん、……二人が寝たら、やまとの好きにしていいからね。」

その誘いに、やまとは頷く。もう一度名残惜しそうに唇を食むと、子を抱いて立ち上がった。

「もう八時だしな。寝かしつけるか。」

「うん、そうだな。」

太一もそれに合わせて立ち上がると、二人揃って寝室へと向かった。
3/6ページ
スキ