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800字ssシリーズ



「んんぅ~~~…!終わったッ!」

ギシリ、と音を立てて椅子の背にもたれ掛かると、太一はぐぐっ、と腕を伸ばして唸った。ここ最近溜まっていた大学の課題をやっとまとめることが出来て、太一は肩の荷を下ろす。ちらりと時計を見れば、二本の針はどちらも12を過ぎた頃だった。晩御飯食べてなかったな、なんて思いながら静かにリビングへの扉を開ける。明かりはついているのにテレビの音はない。

(ヤマト、さすがに拗ねて寝たかな…?)

太一はぽりぽりと頭を掻きながら静かにリビングへと足を踏み入れた。
毎週土曜日の夜は一緒に映画や録り溜めたドラマを見る、それが二人の同棲生活の一つの約束だった。どうやらヤマトは太一が思っていた以上にそれが楽しみだったようで、今日も今日とてそのお誘いをしに来た。しかし太一は早めに終わらせておきたい課題があって今日は無理だと断ったのだ。それにショックを受けたヤマトはあーだこーだと作業をする太一の後ろで嘆くものだから「集中できねぇからちょっと出てろ!」とリビングへ追い出されたのだった。

(あ、寝てる……)

リビングのソファで体を丸めながら寝ているヤマトを見つけて太一はため息をついた。こいつまじでへこんでんじゃん…と涙の跡が残る目元を撫でながら小さな声で「ごめんなヤマト…」と呟いた。

「……なんだ、もう終わったのか?」

「へっ?…ぎゃッ!」

途端、ぐいっと腕を引っ張られて太一は勢い余ってヤマトの胸へ倒れ込んだ。混乱する太一の頬を掴んでくすくすと笑うとそのまま触れるだけのキスを落とした。

「ちょっ、狸寝入り…!」

「ちゃんと寝てたよ。」

バタバタと暴れる太一にヤマトは笑いかけながら頬、額、瞼と順番に唇を触れさせる。時折混ざる「太一」という甘い声に太一が腕を振り上げた瞬間、ぐぅ~~、と太一の腹から空腹の合図がなった。はた、と二人は何度か瞬きをするがヤマトはぶはっ、と吹き出し、太一は顔を真っ赤にしてべしべしとヤマトの頭を叩く。

「うちの姫はキスより飯だな。シチュー食うか?」

「姫じゃねぇっての。シチューは食う!」

ばたばたと立ち上がって二人はキッチンへと向かう。絡まり繋がったその手は、太一が「離せよ」と笑うまで繋がれたままだった。

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