800字ssシリーズ
ぱたぱたとスリッパの音を立てながらキッチンで忙しなく動く恋人の姿に、ヤマトはくすくすと笑いながら見つめていた。時折スマホで作り方を確認してあーだこーだと小言を呟く姿に、ヤマトは飽きないなぁと目を細める。
〇
「今日はおれが作るから!」
そう言って太一はヤマトをソファへと誘導すると、そこに座って待ってろと指さしてきた。ヤマトは上がる口角を隠すように口元を手で覆う。素直にヤマトが頷けば、太一は満足そうに胸を張ってキッチンへと向かった。ヤマトの部屋の冷蔵庫を漁りながら、ある食材で何が作れるだろうかとスマホを操作する。豚肉とオクラ、ミンチ肉、かぼちゃ、調味料を取り出してあたふたと料理を始めた。ヤマトはそれをじっと見ながら何となく頭の中で出来上がるであろう料理を連想する。もう何年もしてきた事だ。そんなことにも気が付かない彼は、こちらを見つめてくるヤマトに「何ができるかは内緒だから!」と叫んだ。「わかったよ。」とヤマトは苦笑して返すと、机の上に置いておいた雑誌へと手を伸ばした。
〇
もうそろそろだろうか、とヤマトは顔を上げた。時計を見ればあれから一時間は経とうとしている。ふとキッチンへ目を向けると、太一はまだ忙しなく動き回っていた。手慣れていない様子にヤマトは微笑むと、雑誌を机に置いて太一へと近づいた。後ろから見つめていても、真剣な顔をしている太一は気付いていないのか振り向きもしない。刃物を持っていないことを確認するとヤマトは太一のお腹へと手を回して後ろから優しく抱きしめた。「うぉっ…!」と驚いた声を上げる太一を無視して項へとキスを落とした。
「こら、ヤマト!」
顔を顰めて振り向いた太一の頬を優しく掴み、唇にちゅ、とキスを落とせば、太一は口をきゅ、とつむってヤマトの唇に指を立てた。
「全部終わってから、な?」
そう言って微笑みかけられれば、流石のヤマトも観念したように体を離した。手を挙げて降参のポーズをすれば、太一は満足したようにヤマトの頬にキスを落とす。
「ぜってー美味しいの作ってやるからなッ!」
そう言って笑う恋人の姿に、ヤマトもまた顔を綻ばせた。
(917字)
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「今日はおれが作るから!」
そう言って太一はヤマトをソファへと誘導すると、そこに座って待ってろと指さしてきた。ヤマトは上がる口角を隠すように口元を手で覆う。素直にヤマトが頷けば、太一は満足そうに胸を張ってキッチンへと向かった。ヤマトの部屋の冷蔵庫を漁りながら、ある食材で何が作れるだろうかとスマホを操作する。豚肉とオクラ、ミンチ肉、かぼちゃ、調味料を取り出してあたふたと料理を始めた。ヤマトはそれをじっと見ながら何となく頭の中で出来上がるであろう料理を連想する。もう何年もしてきた事だ。そんなことにも気が付かない彼は、こちらを見つめてくるヤマトに「何ができるかは内緒だから!」と叫んだ。「わかったよ。」とヤマトは苦笑して返すと、机の上に置いておいた雑誌へと手を伸ばした。
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もうそろそろだろうか、とヤマトは顔を上げた。時計を見ればあれから一時間は経とうとしている。ふとキッチンへ目を向けると、太一はまだ忙しなく動き回っていた。手慣れていない様子にヤマトは微笑むと、雑誌を机に置いて太一へと近づいた。後ろから見つめていても、真剣な顔をしている太一は気付いていないのか振り向きもしない。刃物を持っていないことを確認するとヤマトは太一のお腹へと手を回して後ろから優しく抱きしめた。「うぉっ…!」と驚いた声を上げる太一を無視して項へとキスを落とした。
「こら、ヤマト!」
顔を顰めて振り向いた太一の頬を優しく掴み、唇にちゅ、とキスを落とせば、太一は口をきゅ、とつむってヤマトの唇に指を立てた。
「全部終わってから、な?」
そう言って微笑みかけられれば、流石のヤマトも観念したように体を離した。手を挙げて降参のポーズをすれば、太一は満足したようにヤマトの頬にキスを落とす。
「ぜってー美味しいの作ってやるからなッ!」
そう言って笑う恋人の姿に、ヤマトもまた顔を綻ばせた。
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